2 / 21
2.魔王討伐(初めてのお使い)へ ②
しおりを挟む
いつぶりかわかんないけど勇者が誕生した、って聞いたから人間界にやってきてみた。街の中を見て回って人間は生きるために色々としなきゃ大変なのねとか、別に同情するわけじゃないけどなんとなくそう思いつつ飛び回る。精霊界はそこにあるマナを吸収するだけでいいんだから、精霊も精霊に仕える妖精もあんなに頑張る必要がない。
「ってそうそう忘れれた。勇者探してたんだった」
どういうやつか見てやろうとスイ~っと飛んでいたら、明らかに一人だけマナの量がおかしい人間がいた。あたしの妖精の目から見てもなんか光り輝いてるし。きっとあれだ、そう思って早速近付いてみる。
「ねぇ、アンタでしょ今回の勇者」
「あ。妖精」
「ちょっと、そんな可愛くない呼び方やめてくれない? あたしには『ミウィ』っていう可愛い名前があるんだから」
「ふーん」
勇者はその一言だけ言って、スタスタと歩いていった。
「ってちょっと待ちなさいよ!」
人間にとって妖精ってめずらしいもんなんでしょ?! だって妖精も精霊も滅多なことがない限り人間の前に姿を現さないんだから! それを何?! 「ふーん」ってそんな興味なさそうな返事して素通り?!
「アンタの目は節穴?! あたし妖精だって言ってるでしょ?!」
「うん? 聞いたけど」
「そしたら少しは興味を示しなさいよ! 妖精であるあたしが! 話しかけてんの!」
「え……別に喋ることないし今魔王城に向かってるから」
何この勇者?! クソほど無愛想すぎない?! しかも勇者が魔王城に行くだなんて、討伐以外の何物でもないんでしょ?! だっていうのになんで一人なのよ! ボッチ?! ボッチなの?!
「ま、待ちなさっ――」
「お、勇者じゃね?」
「あ。勇者っぽい」
ボッチのアンタが可哀想だから仕方なく妖精であるあたしがついていってあげようと思っていたら、だ。目の前に現れたのは明らかに人間とは違う種族。道中突然現れたそれに思わずびっくりして勇者の後ろに隠れてしまった。
「なっなっ……オーク?! こんな、最初の段階から出てくるの?!」
「お、しかも妖精もいる」
「めずらしいじゃん」
しかも普通に言葉が話せてる。っていうことはちゃんとした知能があるっていうことだ。オークといえば力任せに自分の欲望のまま暴れる魔物だっていうのに。そいつらに知能なんてついちゃったら……慌てて勇者が羽織っていたマントを引っ張りこの場から引かせようとする。
っていうのに、何この勇者の装備?! なんで鎧一つも着けてないの?! ほぼ布っきれじゃない! こんなのただの服! 防御力ゼロ! バカ! バカなのこの勇者!
「ちょ、ちょっと勇者! 何やってんのよ! そんな装備で戦えるとでも思ってるの?! 命が欲しかったら引いて――」
「なんで戦う必要があんの?」
「は?」
え、ちょ、きょとんとした勇者の視線があたしに向かう。ついでに二体のオークもきょとんとした顔でこっちを見てる。そんな、なんで魔物と人間が同じ表情をして妖精を見てんのよ。
わけわからなくてキョドってると、いきなり笑いだしたのはオークのほうだった。あたしはバカにされたんだと思って頭に一気に血が登ったんだけど、勇者は笑ってるオークに対し特に怒ることなくそのままスルーだ。やっぱりバカなのこの勇者。
「ダッハハハ! もしかしてそこの妖精ちゃん、生まれたばっかりかい?」
「ああ、それならあの反応も頷けるなぁ」
「なっ?! バッ、バカにしてるの?! あたしはアンタたちと違って気高い妖精っ――」
「人間と魔物が戦うなんて、もう数千年も前の話だよ」
勇者の口から出てきた言葉に、あたしの時間が確実に止まった。勇者がなんか変な魔法使った? と思うほど。
え、だって、人間と魔物はずっと長い間戦ってきたんでしょ? だって未だに魔王は健在だし、勇者も一定の周期で次の勇者が生まれてる。それって、魔王との対決が終わってないから、で。
「俺たちぁもう全然人を襲ってねぇよ。そんなひでぇことできねぇって」
「そうだそうだ。人間にはこっちも世話になってんだし。人間の作る飯なんてすっげぇうめぇしなぁ」
「は、え?」
「もしかして君って精霊界から出てくるの初めて?」
「ぬぐっ……!」
勇者から図星を突かれた。オークたちが言っていた言葉にも反論できない。いやでも実際この中で一番年下は勇者なんだから。人間と魔物、そして精霊とは時の流れが違う。確か勇者って十六歳になってから魔王討伐、なんてこと聞いたけど十六歳だなんて妖精から見てもまだまだ赤ちゃん並だ。だから、あたしはこの勇者よりもお姉さんなんだから。
……でも、正直に言うと人間界に出てきたのはこれが初めてだった。精霊界なんて別に人間界に興味を示す者なんてあんまりいないし。それこそマナが枯渇するとか一大事にならないと人間界とコンタクトを取らない。
っていうことは何? あたしが聞いた情報って、もう何千年も前のことだったってこと?
「あんの……ババァーッ!」
あたしに色々と教えてくれたのは集落をまとめているお婆だった。お婆はその集落で一番の長生きっていうこともあって知識も豊富だった。ってことは何、あのババァ情報のアップデートできてなかったってこと?
「初めての人間界ってわけかい。ようこそ~楽しんで行きな」
「私も初めての魔王城」
「おお! 勇者も初魔王城か! そしたら近場まで案内しようか? おいらたちも丁度帰るところだったんだ」
何この奇妙な光景。勇者とオークが普通に親しく喋ってるし、しかもそのオークは魔王城へ勇者を案内しようとしているし。普通だったらなんらかの罠だと思って警戒するはずなのに。
「そしたらお願いしよっかな」
この勇者はすんなりお願いするし。やっぱりこの勇者バカなの? 少しは相手を疑いなさいよ。
「それじゃあね、妖精さん」
「えっ?」
歩き出したオーク二体の後ろをついていこうとする勇者は然も当然のようにあたしに別れの挨拶をしてきた。こっちを振り返って呆然としているあたしにフリフリと手を振ってる。
「まっまっ……待ちなさいよ! あたしも行くわ!」
ここで勇者と別れて、その勇者が騙されて返り討ちに合ったりしたりしたらあたしの目覚めが悪すぎる。
急いでピューッと勇者のところまで飛んでいってその肩に止まってみる。前を歩いているオークは「いい散歩日和だ」なんて言いながら大量の荷物を抱えてのほほんとしていた。オークの厳つい顔で視界に入ってなかったけど、その大量の荷物は美味しそうな野菜やら果物やらが見え隠れしている。
「いやほんと人間には助かってんだよ。こんなうんめぇ飯作んのかって」
「人間たちから教わるまでおいらたちその辺の道草くったりすっぺぇ果実食ってたりしてたもんなぁ」
「オークは力持ちだよね。この間山から降ってきた巨大な岩動かしてくれて本当助かったってみんな言ってたよ」
「デヘヘ……あれくらいお安いご用さぁ」
……何この共存共栄。え、数千年も経てば人間も魔族もこうなっちゃうの? 末端である魔物でこれだから魔王なんてどんだけ変わったんだっての。魔王と言ったらお婆の話ではとてつもなく非道で血も涙もなくて、すべてを破壊するとか言ってたのに。
本当、なんかピクニック気分で歩いている勇者とオーク二体。道中人間と他の魔物とすれ違ったけどそれぞれ軽くお辞儀する程度で、寧ろこっちを微笑ましく見てた。中には「いい散歩日和ですねぇ」なんて腰を曲げたおばあちゃんがのんびり言う始末。
っていうか魔王城って歩いていけるもんなの?
とかなんとか思っていたら、目の前に現れたのは明らかに禍々しい雰囲気の森。この森の先に魔王城があるのだとまざまざと見せつけているような気がして、無意識にごくりと唾を飲み込んだ。
「あ、ここが入り口だ。こっちが一般人用の道」
と、一体のオークが指差した先は、真っ直ぐに伸びた道。「ウェルカム」なんて文字が書いた看板が堂々と立てられていた。
「ほんでこっちがおいらたちが暇つぶしで作ったトラップありのダンジョン風の道」
「それってもうダンジョンじゃない!」
今この場でまともな感性を持っているのがあたししかいないとかつらすぎない?
もう一体のオークが指差した先は、もう明らかに禍々しい雰囲気の道。っていうか禍々しすぎて先が見えない。絶対直線じゃないし暇つぶしでトラップ作ったとかもうバカ。おバカとしか思えない。
っていうのに、勇者は一度ウェルカムの立て看板を見たかと思うとすぐにもう一個の道へと視線を向けた。嫌な予感がする。
「どうせならトラップありのほうで行こうかな」
「このおバカーッ! アンタバカじゃないの?! なんでわざわざ危険な道を選ぶのよ‼」
やっぱり。やっぱりそっち選ぶと思ってた。一般通路のほうは無表情で見ていたくせにトラップありの道は目が輝いていたんだから! もう、好奇心旺盛です! と言わんばかりに‼
「普通の時間かかると思うけど、勇者なら楽勝だわな」
「いっぱい仕掛けておいたから楽しんでくれ」
「わかった。ここまで案内ありがとう。楽しんでくるよ」
「それじゃあな~」
「魔王様によろしく~」
「待て待て誰か止めなさいよ! あッ! ちょっと勇者?! 人の話を聞きなさいってば!」
「人……?」
「人じゃなかった! 妖精! 妖精の話!」
なんだか勇者にツッコまれたのがとてつもなく恥ずかしいし情けないような気がしてきた……!
そしてこうして喋っている間に勇者はどんどん森の中に足を踏み入れていく。視界も良好じゃないし道も複雑そうなのに、なんでその進む足に淀みがないの。とか思っていたら。
「きゃーっ?!」
丸太が飛んできたんですけど?! 妖精のあたしは一度ぶつかったらぺっちゃんこなんですけど?! っていうか人間でも確実に頭持ってかれるけど?! 暇つぶしでガチのトラップ作る奴ってどこにいんの?!
いたわ! あたしたちを案内したオークたちがそうだったわ! 何アイツら、もしかしてあたしたちを殺す目的で案内したんじゃないんでしょうね?!
とかあたしがてんやわんやしてるっていうのに、勇者はまさに勇者だったというべきか。数歩歩けばすぐに発動するトラップをヒョイヒョイと軽々しく避けていく。
「なにこれ。すっごい楽しい」
「やっぱりおバカなのね」
え。もしかしてあたしが知らないだけで、今までの勇者もこうだったっていうの?
「ってそうそう忘れれた。勇者探してたんだった」
どういうやつか見てやろうとスイ~っと飛んでいたら、明らかに一人だけマナの量がおかしい人間がいた。あたしの妖精の目から見てもなんか光り輝いてるし。きっとあれだ、そう思って早速近付いてみる。
「ねぇ、アンタでしょ今回の勇者」
「あ。妖精」
「ちょっと、そんな可愛くない呼び方やめてくれない? あたしには『ミウィ』っていう可愛い名前があるんだから」
「ふーん」
勇者はその一言だけ言って、スタスタと歩いていった。
「ってちょっと待ちなさいよ!」
人間にとって妖精ってめずらしいもんなんでしょ?! だって妖精も精霊も滅多なことがない限り人間の前に姿を現さないんだから! それを何?! 「ふーん」ってそんな興味なさそうな返事して素通り?!
「アンタの目は節穴?! あたし妖精だって言ってるでしょ?!」
「うん? 聞いたけど」
「そしたら少しは興味を示しなさいよ! 妖精であるあたしが! 話しかけてんの!」
「え……別に喋ることないし今魔王城に向かってるから」
何この勇者?! クソほど無愛想すぎない?! しかも勇者が魔王城に行くだなんて、討伐以外の何物でもないんでしょ?! だっていうのになんで一人なのよ! ボッチ?! ボッチなの?!
「ま、待ちなさっ――」
「お、勇者じゃね?」
「あ。勇者っぽい」
ボッチのアンタが可哀想だから仕方なく妖精であるあたしがついていってあげようと思っていたら、だ。目の前に現れたのは明らかに人間とは違う種族。道中突然現れたそれに思わずびっくりして勇者の後ろに隠れてしまった。
「なっなっ……オーク?! こんな、最初の段階から出てくるの?!」
「お、しかも妖精もいる」
「めずらしいじゃん」
しかも普通に言葉が話せてる。っていうことはちゃんとした知能があるっていうことだ。オークといえば力任せに自分の欲望のまま暴れる魔物だっていうのに。そいつらに知能なんてついちゃったら……慌てて勇者が羽織っていたマントを引っ張りこの場から引かせようとする。
っていうのに、何この勇者の装備?! なんで鎧一つも着けてないの?! ほぼ布っきれじゃない! こんなのただの服! 防御力ゼロ! バカ! バカなのこの勇者!
「ちょ、ちょっと勇者! 何やってんのよ! そんな装備で戦えるとでも思ってるの?! 命が欲しかったら引いて――」
「なんで戦う必要があんの?」
「は?」
え、ちょ、きょとんとした勇者の視線があたしに向かう。ついでに二体のオークもきょとんとした顔でこっちを見てる。そんな、なんで魔物と人間が同じ表情をして妖精を見てんのよ。
わけわからなくてキョドってると、いきなり笑いだしたのはオークのほうだった。あたしはバカにされたんだと思って頭に一気に血が登ったんだけど、勇者は笑ってるオークに対し特に怒ることなくそのままスルーだ。やっぱりバカなのこの勇者。
「ダッハハハ! もしかしてそこの妖精ちゃん、生まれたばっかりかい?」
「ああ、それならあの反応も頷けるなぁ」
「なっ?! バッ、バカにしてるの?! あたしはアンタたちと違って気高い妖精っ――」
「人間と魔物が戦うなんて、もう数千年も前の話だよ」
勇者の口から出てきた言葉に、あたしの時間が確実に止まった。勇者がなんか変な魔法使った? と思うほど。
え、だって、人間と魔物はずっと長い間戦ってきたんでしょ? だって未だに魔王は健在だし、勇者も一定の周期で次の勇者が生まれてる。それって、魔王との対決が終わってないから、で。
「俺たちぁもう全然人を襲ってねぇよ。そんなひでぇことできねぇって」
「そうだそうだ。人間にはこっちも世話になってんだし。人間の作る飯なんてすっげぇうめぇしなぁ」
「は、え?」
「もしかして君って精霊界から出てくるの初めて?」
「ぬぐっ……!」
勇者から図星を突かれた。オークたちが言っていた言葉にも反論できない。いやでも実際この中で一番年下は勇者なんだから。人間と魔物、そして精霊とは時の流れが違う。確か勇者って十六歳になってから魔王討伐、なんてこと聞いたけど十六歳だなんて妖精から見てもまだまだ赤ちゃん並だ。だから、あたしはこの勇者よりもお姉さんなんだから。
……でも、正直に言うと人間界に出てきたのはこれが初めてだった。精霊界なんて別に人間界に興味を示す者なんてあんまりいないし。それこそマナが枯渇するとか一大事にならないと人間界とコンタクトを取らない。
っていうことは何? あたしが聞いた情報って、もう何千年も前のことだったってこと?
「あんの……ババァーッ!」
あたしに色々と教えてくれたのは集落をまとめているお婆だった。お婆はその集落で一番の長生きっていうこともあって知識も豊富だった。ってことは何、あのババァ情報のアップデートできてなかったってこと?
「初めての人間界ってわけかい。ようこそ~楽しんで行きな」
「私も初めての魔王城」
「おお! 勇者も初魔王城か! そしたら近場まで案内しようか? おいらたちも丁度帰るところだったんだ」
何この奇妙な光景。勇者とオークが普通に親しく喋ってるし、しかもそのオークは魔王城へ勇者を案内しようとしているし。普通だったらなんらかの罠だと思って警戒するはずなのに。
「そしたらお願いしよっかな」
この勇者はすんなりお願いするし。やっぱりこの勇者バカなの? 少しは相手を疑いなさいよ。
「それじゃあね、妖精さん」
「えっ?」
歩き出したオーク二体の後ろをついていこうとする勇者は然も当然のようにあたしに別れの挨拶をしてきた。こっちを振り返って呆然としているあたしにフリフリと手を振ってる。
「まっまっ……待ちなさいよ! あたしも行くわ!」
ここで勇者と別れて、その勇者が騙されて返り討ちに合ったりしたりしたらあたしの目覚めが悪すぎる。
急いでピューッと勇者のところまで飛んでいってその肩に止まってみる。前を歩いているオークは「いい散歩日和だ」なんて言いながら大量の荷物を抱えてのほほんとしていた。オークの厳つい顔で視界に入ってなかったけど、その大量の荷物は美味しそうな野菜やら果物やらが見え隠れしている。
「いやほんと人間には助かってんだよ。こんなうんめぇ飯作んのかって」
「人間たちから教わるまでおいらたちその辺の道草くったりすっぺぇ果実食ってたりしてたもんなぁ」
「オークは力持ちだよね。この間山から降ってきた巨大な岩動かしてくれて本当助かったってみんな言ってたよ」
「デヘヘ……あれくらいお安いご用さぁ」
……何この共存共栄。え、数千年も経てば人間も魔族もこうなっちゃうの? 末端である魔物でこれだから魔王なんてどんだけ変わったんだっての。魔王と言ったらお婆の話ではとてつもなく非道で血も涙もなくて、すべてを破壊するとか言ってたのに。
本当、なんかピクニック気分で歩いている勇者とオーク二体。道中人間と他の魔物とすれ違ったけどそれぞれ軽くお辞儀する程度で、寧ろこっちを微笑ましく見てた。中には「いい散歩日和ですねぇ」なんて腰を曲げたおばあちゃんがのんびり言う始末。
っていうか魔王城って歩いていけるもんなの?
とかなんとか思っていたら、目の前に現れたのは明らかに禍々しい雰囲気の森。この森の先に魔王城があるのだとまざまざと見せつけているような気がして、無意識にごくりと唾を飲み込んだ。
「あ、ここが入り口だ。こっちが一般人用の道」
と、一体のオークが指差した先は、真っ直ぐに伸びた道。「ウェルカム」なんて文字が書いた看板が堂々と立てられていた。
「ほんでこっちがおいらたちが暇つぶしで作ったトラップありのダンジョン風の道」
「それってもうダンジョンじゃない!」
今この場でまともな感性を持っているのがあたししかいないとかつらすぎない?
もう一体のオークが指差した先は、もう明らかに禍々しい雰囲気の道。っていうか禍々しすぎて先が見えない。絶対直線じゃないし暇つぶしでトラップ作ったとかもうバカ。おバカとしか思えない。
っていうのに、勇者は一度ウェルカムの立て看板を見たかと思うとすぐにもう一個の道へと視線を向けた。嫌な予感がする。
「どうせならトラップありのほうで行こうかな」
「このおバカーッ! アンタバカじゃないの?! なんでわざわざ危険な道を選ぶのよ‼」
やっぱり。やっぱりそっち選ぶと思ってた。一般通路のほうは無表情で見ていたくせにトラップありの道は目が輝いていたんだから! もう、好奇心旺盛です! と言わんばかりに‼
「普通の時間かかると思うけど、勇者なら楽勝だわな」
「いっぱい仕掛けておいたから楽しんでくれ」
「わかった。ここまで案内ありがとう。楽しんでくるよ」
「それじゃあな~」
「魔王様によろしく~」
「待て待て誰か止めなさいよ! あッ! ちょっと勇者?! 人の話を聞きなさいってば!」
「人……?」
「人じゃなかった! 妖精! 妖精の話!」
なんだか勇者にツッコまれたのがとてつもなく恥ずかしいし情けないような気がしてきた……!
そしてこうして喋っている間に勇者はどんどん森の中に足を踏み入れていく。視界も良好じゃないし道も複雑そうなのに、なんでその進む足に淀みがないの。とか思っていたら。
「きゃーっ?!」
丸太が飛んできたんですけど?! 妖精のあたしは一度ぶつかったらぺっちゃんこなんですけど?! っていうか人間でも確実に頭持ってかれるけど?! 暇つぶしでガチのトラップ作る奴ってどこにいんの?!
いたわ! あたしたちを案内したオークたちがそうだったわ! 何アイツら、もしかしてあたしたちを殺す目的で案内したんじゃないんでしょうね?!
とかあたしがてんやわんやしてるっていうのに、勇者はまさに勇者だったというべきか。数歩歩けばすぐに発動するトラップをヒョイヒョイと軽々しく避けていく。
「なにこれ。すっごい楽しい」
「やっぱりおバカなのね」
え。もしかしてあたしが知らないだけで、今までの勇者もこうだったっていうの?
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる