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4.まったりゆったり
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魔王討伐という名目の挨拶は美味しいお菓子をもらって終わった。帰るときも魔王に見送られたし途中のトラップありの道は妖精さんが嫌がってたから渋々一般の道。街にも戻って王様に伝言を伝えて、そして何事もなく自分の家に帰った。その日の夕食は普通にシチューだった。
それからというものの、かなりの頻度で魔王城に遊びに行ってる。魔王曰く。
「勇者の食べっぷりが見ていて楽しいし、よかったらまた食べにおいでよ! 作って待ってるから!」
とのことで、そのお言葉にこれでもかっていうほど甘えた。行きはお菓子を美味しくいただくためにトラップ道をわざと通って、魔王城に入れば魔法陣の上に乗って勝手に魔王の前に転移する。目の前にお菓子が出されて、ふかふかのソファまで出されて快適なグータラ生活だった。それはもう、家にいるよりもずっと。
「魔王ってお菓子作りが趣味なの?」
「趣味っていうか、最初は暇つぶしだったんだよね。でもやり始めたら色々凝っちゃって……楽しくてついつい」
「お花も綺麗だしねぇ」
「お花も結構難しいんだ。あ! そうだ勇者」
なんだか乗っていたらダメになっちゃうクッションの上でゴロゴロしていたら、傍でせっせとお花の手入れをしていた魔王が少し困り顔でこっちを見てきた。
「勇者に頼みがあるだけど……いいかな?」
「うん? いいよ」
「あっ、先に内容聞いてから決めてもらっていい?」
君のその即決は少し心配になるなぁ、だなんて。まるで父親みたいなことを言われた。父親がどんなものなのか私はちょっとわかんないけど。多分こんな感じじゃない? 的な。
「それで? どういう頼み?」
「うん、ちょっと畑の手伝いをしてもらいたいんだ」
「畑?」
前に来たときにそういえば見せてもらった、魔王城の敷地内にある畑。マナの少ないところで頑張って野菜たちは育っていたけれど、人間の街の畑に比べてそれは随分と小さかった。
このダメダメにするクッションから起き上がるのは少し悲しかったけど、身体を起こして魔王の近くまで寄ってみる。魔王は「こっち」と言いながら前回とは違う場所のほうに歩き出した。
やっぱりこの城って広いんだな、と思いつつ黙ってその背中についていく。ついていかなきゃ下手したら魔物たちの居住地に迷い込んでしまうかもしれないから。お休みのところお邪魔するわけにも行かないし、となると素直についていくしかない。
たどり着いた先は前に案内してもらった畑よりも少し広い場所だった。でも、まだ土が耕されている程度で野菜はどこにも見当たらない。
「ここにも新しく畑を作ろうと思ったんだけど、範囲が広がったせいか前の畑に比べてマナが少量で……」
このままじゃきっと野菜は育たない、と肩を落とす魔王にピンと来た。なぜ魔王が私をここに案内して、そして手伝ってほしいと頼んできたのか。
「マナを注げばいいんだ?」
「そう! 話が早くて助かるよ~。あっ、でも無理をしない範囲でいいからね?!」
なんだか心配そうな顔してるけど、言われたこっちは「なんだその程度か」だ。そんな、魔王がしょんぼりとした顔をして頼むようなことでもないのに。だって私は確かに人間だけど、勇者ですから。
「いいよ。そのくらい朝飯前って感じ」
「朝飯前どころかお菓子たくさん食べたあとだけどね」
「そんな細かいこといいから」
にっこり笑う魔王にジッと視線を向けて、そして畑のほうに移す。手のひらをかざせば淡い光が発し始めた。
マナと魔力は似ているようで若干違う。魔力はマナに精霊の力を混ぜて言葉にすることによって炎を出したり水を出してそれが魔法という言い方に変わる。でもこれにはセンスが必要で使える人と使えない人が出てくる。
逆にマナは攻撃には使えない。マナは生命、とでも言っていいのかな。大地に流れる生命。それを吸収して多く蓄えれる人もいればそうでな人もいたり、差は若干あるけれど。魔力は持てる人を選ぶけれどマナは誰でも持っている。それこそ人間や魔族や精霊や、はたまた草木や自然なものでも。
ただ魔族は相性が悪いのかマナの量が少なくて、なぜか魔力の量は多い。マナが勝手に魔力に変換されているのかも。人間は半々。精霊はもちろん相性がよくてマナの量が多い。けど、精霊は癒やしの魔法が使えてもあまり攻撃的な魔法は使えない。
まぁ、話は脱線しちゃったけど。私は勇者ということもあって自分の中にあるマナの量が人よりもかなり多かった。だから自分のマナを多少分けてもなんの支障もない。マナが少ないこの大地に自分のマナを分けてあげる。
マナを分ける瞬間パッと輝いたけれど、でもそれも終われば一見普通の畑だ。ただしさっきに比べて周辺の空気が若干軽くなったような気がする。どう? って思いながら魔王に振り返ってみれば……パァアッて、輝いた笑顔がそこに。
「さっ……すが勇者! これほどマナを与えてくれるなんて! すごいね君は!」
「……そ、そんなこと、あるかも? こういうことなら任せてよ」
こんな喜んでくれるとは思っていなくて、思わず照れてしまう。ちょこっとほっぺたをポリポリ掻いて、まだ少し恥ずかしいから魔王から視線を外して口を開く。
「だって、魔王には美味しいお菓子いっぱいもらってるから……そのお礼」
「……! 勇者っ……!」
「ぶっちゃけ私はお菓子作ったり、そもそも料理作れなくて」
「え? そうなの?」
「……うん」
今まで何回かチャレンジはしてみたよ? 流石に少しは作れるようになったほうがいいかなって、もしかしたら魔王じゃなくてもどこかに討伐に行く羽目になったら野宿とかするだろうからそのときのためにって。何回かチャレンジはしてみた。
でもまぁ、できあがったのは大体黒くて。っていうかもう料理には見えなくて。なんだかヤバいブツを生み出してしまったって思ってしまうほど、まぁ見た目もアレだし味もアレだし。
とにかく、何回チャレンジしても全然上達しない。剣とか魔法とかはすぐに上達するのに。一体何が違うのかまったくわからなくて、最終的に諦めた。
一方で魔王は美味しいものをたくさん生み出すことができる。おかしいなぁ、魔王だって勇者とあんまり変わらないもんなんじゃないの? とか思ったけどそもそも生きている長さが違うんだから、練習量だって違う。そりゃぁ、美味しいの作れるわっていつも美味しくいただいちゃう。
「料理はできないけど、でもこうして畑にマナを注ぐことはできるから。これからもジャンジャン頼っちゃって」
「いいの?」
「いいよいいよ! それに魔王みたいにお花を育てたりとか繊細なことはできないけど、でも力仕事には自信があるから! そこも頼って!」
「あははっ、うん、わかった。色々と頼らせてもらおうかな?」
「任せて!」
むんっ、と力こぶを作ってみせれば魔王はまた楽しそうにふにゃふにゃ笑う。だって私ここに来るようになってグータラして魔王が作ってくれる美味しいお菓子食べているだけだから! 流石にね? 少しは申し訳ないなって思ってたわけ。だって私勇者とか言われてるけど魔王を討伐する必要がないんだから、正直言って用なしというかなんというか。いや、私が活躍するような有事になってほしくはないけど。
「そうだ勇者。そしたら一緒に野菜育ててみる? 君も時間あるようだし料理も教えようか?」
「え? 畑仕事は嬉しいけど、料理……私闇の物体しか生み出さないけど……?」
「大丈夫! 俺だって最初はそうだったから! でも少しずつ続けてみたら上達するものだよ?」
なんだか魔王がすっごく元気づけようとしてくれてる。私のために、そこまで。数千年前に人々を虐殺して大地を灰と化していたとは思えない……!
「そ、そこまで言うんだったら……頑張ってみようかな……?」
「頑張ろうね! 勇者!」
「一緒に闇の物体食べようね」
「……う、うん!」
私が料理するということは、生み出したヤバいものも食べなきゃいけないということで。捨てるなんてことは簡単だけど折角頑張って育ててくれた食材を無駄にすることなんてできない。
薬草とか回復薬とかいっぱい持ってくるから、と意気込んでいた私に魔王は若干冷や汗を流しつつも笑顔で頷いた。とりあえず、ヤバい物体を魔王城に広げる前に上達しなければ。
それからというものの、かなりの頻度で魔王城に遊びに行ってる。魔王曰く。
「勇者の食べっぷりが見ていて楽しいし、よかったらまた食べにおいでよ! 作って待ってるから!」
とのことで、そのお言葉にこれでもかっていうほど甘えた。行きはお菓子を美味しくいただくためにトラップ道をわざと通って、魔王城に入れば魔法陣の上に乗って勝手に魔王の前に転移する。目の前にお菓子が出されて、ふかふかのソファまで出されて快適なグータラ生活だった。それはもう、家にいるよりもずっと。
「魔王ってお菓子作りが趣味なの?」
「趣味っていうか、最初は暇つぶしだったんだよね。でもやり始めたら色々凝っちゃって……楽しくてついつい」
「お花も綺麗だしねぇ」
「お花も結構難しいんだ。あ! そうだ勇者」
なんだか乗っていたらダメになっちゃうクッションの上でゴロゴロしていたら、傍でせっせとお花の手入れをしていた魔王が少し困り顔でこっちを見てきた。
「勇者に頼みがあるだけど……いいかな?」
「うん? いいよ」
「あっ、先に内容聞いてから決めてもらっていい?」
君のその即決は少し心配になるなぁ、だなんて。まるで父親みたいなことを言われた。父親がどんなものなのか私はちょっとわかんないけど。多分こんな感じじゃない? 的な。
「それで? どういう頼み?」
「うん、ちょっと畑の手伝いをしてもらいたいんだ」
「畑?」
前に来たときにそういえば見せてもらった、魔王城の敷地内にある畑。マナの少ないところで頑張って野菜たちは育っていたけれど、人間の街の畑に比べてそれは随分と小さかった。
このダメダメにするクッションから起き上がるのは少し悲しかったけど、身体を起こして魔王の近くまで寄ってみる。魔王は「こっち」と言いながら前回とは違う場所のほうに歩き出した。
やっぱりこの城って広いんだな、と思いつつ黙ってその背中についていく。ついていかなきゃ下手したら魔物たちの居住地に迷い込んでしまうかもしれないから。お休みのところお邪魔するわけにも行かないし、となると素直についていくしかない。
たどり着いた先は前に案内してもらった畑よりも少し広い場所だった。でも、まだ土が耕されている程度で野菜はどこにも見当たらない。
「ここにも新しく畑を作ろうと思ったんだけど、範囲が広がったせいか前の畑に比べてマナが少量で……」
このままじゃきっと野菜は育たない、と肩を落とす魔王にピンと来た。なぜ魔王が私をここに案内して、そして手伝ってほしいと頼んできたのか。
「マナを注げばいいんだ?」
「そう! 話が早くて助かるよ~。あっ、でも無理をしない範囲でいいからね?!」
なんだか心配そうな顔してるけど、言われたこっちは「なんだその程度か」だ。そんな、魔王がしょんぼりとした顔をして頼むようなことでもないのに。だって私は確かに人間だけど、勇者ですから。
「いいよ。そのくらい朝飯前って感じ」
「朝飯前どころかお菓子たくさん食べたあとだけどね」
「そんな細かいこといいから」
にっこり笑う魔王にジッと視線を向けて、そして畑のほうに移す。手のひらをかざせば淡い光が発し始めた。
マナと魔力は似ているようで若干違う。魔力はマナに精霊の力を混ぜて言葉にすることによって炎を出したり水を出してそれが魔法という言い方に変わる。でもこれにはセンスが必要で使える人と使えない人が出てくる。
逆にマナは攻撃には使えない。マナは生命、とでも言っていいのかな。大地に流れる生命。それを吸収して多く蓄えれる人もいればそうでな人もいたり、差は若干あるけれど。魔力は持てる人を選ぶけれどマナは誰でも持っている。それこそ人間や魔族や精霊や、はたまた草木や自然なものでも。
ただ魔族は相性が悪いのかマナの量が少なくて、なぜか魔力の量は多い。マナが勝手に魔力に変換されているのかも。人間は半々。精霊はもちろん相性がよくてマナの量が多い。けど、精霊は癒やしの魔法が使えてもあまり攻撃的な魔法は使えない。
まぁ、話は脱線しちゃったけど。私は勇者ということもあって自分の中にあるマナの量が人よりもかなり多かった。だから自分のマナを多少分けてもなんの支障もない。マナが少ないこの大地に自分のマナを分けてあげる。
マナを分ける瞬間パッと輝いたけれど、でもそれも終われば一見普通の畑だ。ただしさっきに比べて周辺の空気が若干軽くなったような気がする。どう? って思いながら魔王に振り返ってみれば……パァアッて、輝いた笑顔がそこに。
「さっ……すが勇者! これほどマナを与えてくれるなんて! すごいね君は!」
「……そ、そんなこと、あるかも? こういうことなら任せてよ」
こんな喜んでくれるとは思っていなくて、思わず照れてしまう。ちょこっとほっぺたをポリポリ掻いて、まだ少し恥ずかしいから魔王から視線を外して口を開く。
「だって、魔王には美味しいお菓子いっぱいもらってるから……そのお礼」
「……! 勇者っ……!」
「ぶっちゃけ私はお菓子作ったり、そもそも料理作れなくて」
「え? そうなの?」
「……うん」
今まで何回かチャレンジはしてみたよ? 流石に少しは作れるようになったほうがいいかなって、もしかしたら魔王じゃなくてもどこかに討伐に行く羽目になったら野宿とかするだろうからそのときのためにって。何回かチャレンジはしてみた。
でもまぁ、できあがったのは大体黒くて。っていうかもう料理には見えなくて。なんだかヤバいブツを生み出してしまったって思ってしまうほど、まぁ見た目もアレだし味もアレだし。
とにかく、何回チャレンジしても全然上達しない。剣とか魔法とかはすぐに上達するのに。一体何が違うのかまったくわからなくて、最終的に諦めた。
一方で魔王は美味しいものをたくさん生み出すことができる。おかしいなぁ、魔王だって勇者とあんまり変わらないもんなんじゃないの? とか思ったけどそもそも生きている長さが違うんだから、練習量だって違う。そりゃぁ、美味しいの作れるわっていつも美味しくいただいちゃう。
「料理はできないけど、でもこうして畑にマナを注ぐことはできるから。これからもジャンジャン頼っちゃって」
「いいの?」
「いいよいいよ! それに魔王みたいにお花を育てたりとか繊細なことはできないけど、でも力仕事には自信があるから! そこも頼って!」
「あははっ、うん、わかった。色々と頼らせてもらおうかな?」
「任せて!」
むんっ、と力こぶを作ってみせれば魔王はまた楽しそうにふにゃふにゃ笑う。だって私ここに来るようになってグータラして魔王が作ってくれる美味しいお菓子食べているだけだから! 流石にね? 少しは申し訳ないなって思ってたわけ。だって私勇者とか言われてるけど魔王を討伐する必要がないんだから、正直言って用なしというかなんというか。いや、私が活躍するような有事になってほしくはないけど。
「そうだ勇者。そしたら一緒に野菜育ててみる? 君も時間あるようだし料理も教えようか?」
「え? 畑仕事は嬉しいけど、料理……私闇の物体しか生み出さないけど……?」
「大丈夫! 俺だって最初はそうだったから! でも少しずつ続けてみたら上達するものだよ?」
なんだか魔王がすっごく元気づけようとしてくれてる。私のために、そこまで。数千年前に人々を虐殺して大地を灰と化していたとは思えない……!
「そ、そこまで言うんだったら……頑張ってみようかな……?」
「頑張ろうね! 勇者!」
「一緒に闇の物体食べようね」
「……う、うん!」
私が料理するということは、生み出したヤバいものも食べなきゃいけないということで。捨てるなんてことは簡単だけど折角頑張って育ててくれた食材を無駄にすることなんてできない。
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