6 / 21
6.勇者のお手伝い
しおりを挟む
勇者と魔王は長年戦い続けている。魔王は容赦なく人間を蹂躙し、勇者はそんな魔王から命懸けで人々を守ってきた。けれど中々倒すことができない魔王。長い時の中を生き続ける魔王に対し人間の命はあまりにも短い。だからこそ勇者は次の勇者へと希望を託す。そうして勇者は生き続ける。
っていうのをお婆から聞いた話だったんだけど。その実争いはとうの昔に終わっているし勇者と魔王はお互い自由気ままにのんびりと過ごしている。あたしが初めて会った勇者なんてあれからしょっちゅう魔王城に遊びに行っているみたいで、しかも魔王が作ってくれるお菓子を食べてのんびりしているとか。
「そこだけ聞いたらアンタだたのグータラ人間じゃない! 勇者らしいこと一つもしないで今日もダラダラするってなんなの?!」
街に戻ってきてるみたいだったから勇者の家に行ってみたら、ベッドの上にうつ伏せになって雑誌を読みながら薄くスライスして揚げたポテトをポリポリ食べている。これが勇者?! 今までの勇者がこの姿見たらものすっごく悲しむんじゃないの?!
ってこのあたしが! 折角注意してあげてるっていうのに勇者は気にすることなくまた雑誌に視線を戻して、しかも足をプラプラしてまったく悪びれる様子を見せない。勇者以前に人間としてどうなの。
「勇者らしいことって。勇者なんて活躍しないのが一番いいんだよ」
「だからってお菓子食べてダラダラするのがアンタのすることなの?! 少しは討伐なりなんなりしなさいよ!」
「何を討伐するの? 魔物は悪いことしないのに」
「うぐっ! そ、それは……」
「それになぁーんにもしないわけじゃないし」
チラッと置かれている時計に視線を向けたかと思うと読んでいた雑誌をパタンと閉じて、勇者は身体を起こしてベッドから降りた。さっきまで上下とも布切れ一枚みたいな格好だったくせに、色々と準備をし始めてすっかり初めて会ったときと同じ格好になった。ただしマントなし。
「え、な、何よ、出かけるの?」
「そう。お願いされてたから。そろそろ時間かなって」
とか言ってるけどもしかしておつかいってやつじゃないの? っと勇者に対して疑いの目を向ける。正直この溢れ出そうなマナが見えなかったら本っ当に! 勇者に見えない。なんの特徴もない村人その一。
そんな勇者が階段を降りて自分の母親に「行ってくるね」と一言だけ告げて家から出た。もしかしたら母親のおつかいかと思ったけどどうやらそうじゃないみたい。街の外に向かっていってるみたいだけど魔物を討伐するっていう感じでもない。一応腰には剣を差していたけど抜く素振りも見せないし。
そしてしばらくついていってみればそこそこ大きな森の前にたどり着いて、そこにはちょっと厳つい人間となぜか魔物も一緒にいた。あの魔物はゴーレムだ。耐久度があって力も強い。
「おお勇者、悪いな来てもらって。早速頼んでいいか?」
「もちろん」
「な、何するのよ」
「ん? お手伝い」
勇者が森に向かって手を掲げると周りにいた人たちが一斉に左右に捌ける。今から何が起ころうとしているのか、想像できるようでできないようで。
「『ビエント・フィロ』」
そう、勇者がたった一言。たった一言言っただけで目の前にあった木があっという間に切り倒された。勇者が使ったのは風魔法。しかも誰でも習得できるような初期中の初期。
っていうのに、あれだけ木しかなかったのに目の前に広がっているのは大地と見通しのいい風景だ。初心者でも使える魔法なのにこの威力って、明らかにおかしい。
「助かったぞ勇者。よーし者共運べ運べー!」
「おーっす!」
一斉に捌けていた人たちが動き出して切り倒された木をまた運びやすいように切って、えっさほっさと運び出した。もしかして木材調達だったわけ? ってこのときになってようやく気付く。ちなみに一緒にいたゴーレムたちは人間に頼まれてたみたいで一緒に木を運んでいる。
「えっ……と、勇者」
「前まではみんなで頑張って伐採してたみたいなんだけどね、私が魔法使ったほうが早いから」
便利でいいでしょ、って続けた勇者に確かに便利だけど。そうしたほうがこの人たちも仕事が早くすんでいいんだろうけど。でも、そんな、魔王討伐とか魔王に対抗できる勇者にこんな便利屋的なことをさせる? 普通なら「こんなこと勇者にさせるな」って勇者だって怒ってもおかしくないのに。
っていうその勇者は他の人たちと一緒にえっさほいさと木材運んでいるし。しかも持っている量が明らかにおかしい。そのへんの屈強な身体つきのおじさんよりも持っているってどういうことなの。明らかに質量がおかしい。勇者って名前がなかったら腕の細いただの小娘って感じなのに、なんでそんな両腕に丸太をこんもりと持ってんのよ。
「ゆ、勇者。流石に無茶してない? そんなに持って重いでしょ……」
「え? 強化魔法使ったらもっと持てるけど、魔法使ったほうがいい?」
「強化魔法使ってなかったんかい!」
あたしてっきり周りの人のために強化魔法で強化して持っているものだと思っていたのに! なに、天然でこの怪力なの? なんなの? 勇者と会ってからちょこちょこ思っていたことだけど、頭まで筋肉でできてんの?
「妖精さん、危ないから避けたほうがいいよ」
「きゃあ?! ちょっと! 丸太ぶん回さないでよ!」
「お。なんだちみっこいのがいるなと思ったら虫じゃなくて妖精か。悪い悪いしっかりと並べて置こうと思ってな」
「よっ、妖精であるあたしを虫ぃ?!」
こんなか弱くて可憐で儚げでで幻想的な妖精を虫⁉ 虫と見間違うなんてことある?!
「そんくらいの大きさの虫っているからね」
「だからって虫って何よ虫って! もっとあたしに敬意を払いなさいよ!」
「手で払われそうだから黙ってたほうがいいよ」
「どういう忠告よ?!」
「か弱くて可憐で儚げな人ってそんなに喋んないと思って」
「くっ……!」
勇者のくせに痛いところを突いてくる。あたしは確かに人間よりは年上だけど、妖精の中ではまだまだ若い部類に入る。周りの妖精からからかわれたり生暖かい目で見られるなんてことよくあるし。
それが嫌で嫌で勇者を見に行く、っていう野次馬じみたことしてその実ちょっとした家出みたいなことをした。なんてこの勇者には言えないし言いたくない。わりと真顔で正論を返してきそうなんだもの。しかも悪意なく真っ直ぐな瞳をして。
ともあれ、丸太に潰されるなんてことは余計だし勇者から少し離れて様子を眺める。ゴーレムたちも人を襲うことなくせっせと丸太を運んでいた。ゴーレムは少し知能が低いから人間の言葉を喋るなんてことはできないんだけど、それでも単語単語で一生懸命自分の考えを伝えようとしている。そして人間も、言いたいことを汲み取ってゴーレムとしっかり意思疎通をしていた。
きっとずっとずっと前の勇者だったら、信じられない光景が広がっているんだなとしみじみ思ってしまった。今までの歴代の勇者はこれを望んでいたんだろうか、それとも肩を落としてるんだろうか。
「妖精さん」
「……あのね。最初に言ったでしょ。あたしにはちゃんとミウィっていう可愛い名前があるって」
「ミウィちゃん」
……初めて名前を読んだかと思ったら、ちゃん付け。普通妖精にちゃんなんて付ける?
本当、この勇者には世界の常識っていうか、そういうものが伝わらないと渋々勇者の近くに飛んでいく。勇者の前でずっと羽を動かすのも面倒になってその肩の上に腰を下ろした。
「何よ、勇者」
「これ、食べてみる?」
食べてみる? って聞いてきたくせに容赦なく口に押し込むなんてなんなのこの脳筋バカ。別に見たときはちゃんとしたマナが含まれていたから身体に悪いものじゃなさそうって。
そう思ったあたしがバカだった。
「うぐぅっ?! ゴッ、ゴホゴホッ! ちょっと何よこの謎の物体! まっず! ほんっとまずい!」
マナはちゃんとあったのに味がもう、味がもうおかしい。苦いやら渋いやら辛いやらなんかちょっと甘いやら場所によってはしょっぱいやら。あの小さな一粒でこんな味するなんておかしくない?! って口の中にある変なものをペッペッと吐き出して勇者に抗議しみれば、なぜか勇者はしょんぼりと肩を落として落ち込んでる。
な、なんなのよ。まるであたしが悪いみたいに。ハッと気付いて周りを見渡してみたら、さっきまでせっせと動いていた人間もあたしにジトッとした視線を向けてくる。
「まずかったんだ……ごめんね。練習してるんだけどうまく作れなくて……」
「……! も、もしかして、勇者が作ったの……?」
「魔王に教えてもらいながら作ってるんだけど……まずかったんだ……」
どおりでマナは十分にあったんだ、とかそんなこと思える余裕がない。だってもう明らかに勇者がどん底みたいな落ち込み方をするんだもの。もしかして周りの人たちも食べてみた? このまずいものを? でも彼らは別にまずそうな顔をしていない、っていうことは妖精の口には合わなかったってこと? でもだって、あんな色んな味するものなんて食べれるわけな……
「まずかったんだ……」
「っ、ああ、もう! まずかった! 色んな味がするほど一体何を入れたのよ! 味見した?! 味見せずに周りに配ったんじゃないでしょうね?!」
「……魔王が食べて、『悪くない』って」
「それは魔王が気を遣ったのよッ! 魔王に言っときなさい! ちゃんと言ったほうがその人のためだって‼」
「……ミウィちゃん……」
「そっ……そんな目で見つめてこないで!」
そんな捨てられたラビットみたいなうるうるした目であたしを見つめてきてどうすんの! 勇者はデフォかどうかわからないけど人を惹きつける能力があるんだから、そんなものをここで発揮しない!
本当、無自覚が一番たちが悪い! って思ってるのにうるうる勇者に気圧されてまずいまずい言っていたあたしも段々と言葉が詰まってくる。
「わっ……わかったわよー! あたしも一緒に魔王城に行って、料理を教えてあげる! あたしはアンタに気を遣ったりせずにはっきり言ってあげるんだからね?!」
「ミウィちゃん……! ありがとう!」
勇者があたしの手をぎゅっと握ってきて、嬉しそうな顔をする。同時に周りからはワッと歓声が上がった。
もう、一体何なのよ。あたしはただどっと疲れが押し寄せてきただけだった。
っていうのをお婆から聞いた話だったんだけど。その実争いはとうの昔に終わっているし勇者と魔王はお互い自由気ままにのんびりと過ごしている。あたしが初めて会った勇者なんてあれからしょっちゅう魔王城に遊びに行っているみたいで、しかも魔王が作ってくれるお菓子を食べてのんびりしているとか。
「そこだけ聞いたらアンタだたのグータラ人間じゃない! 勇者らしいこと一つもしないで今日もダラダラするってなんなの?!」
街に戻ってきてるみたいだったから勇者の家に行ってみたら、ベッドの上にうつ伏せになって雑誌を読みながら薄くスライスして揚げたポテトをポリポリ食べている。これが勇者?! 今までの勇者がこの姿見たらものすっごく悲しむんじゃないの?!
ってこのあたしが! 折角注意してあげてるっていうのに勇者は気にすることなくまた雑誌に視線を戻して、しかも足をプラプラしてまったく悪びれる様子を見せない。勇者以前に人間としてどうなの。
「勇者らしいことって。勇者なんて活躍しないのが一番いいんだよ」
「だからってお菓子食べてダラダラするのがアンタのすることなの?! 少しは討伐なりなんなりしなさいよ!」
「何を討伐するの? 魔物は悪いことしないのに」
「うぐっ! そ、それは……」
「それになぁーんにもしないわけじゃないし」
チラッと置かれている時計に視線を向けたかと思うと読んでいた雑誌をパタンと閉じて、勇者は身体を起こしてベッドから降りた。さっきまで上下とも布切れ一枚みたいな格好だったくせに、色々と準備をし始めてすっかり初めて会ったときと同じ格好になった。ただしマントなし。
「え、な、何よ、出かけるの?」
「そう。お願いされてたから。そろそろ時間かなって」
とか言ってるけどもしかしておつかいってやつじゃないの? っと勇者に対して疑いの目を向ける。正直この溢れ出そうなマナが見えなかったら本っ当に! 勇者に見えない。なんの特徴もない村人その一。
そんな勇者が階段を降りて自分の母親に「行ってくるね」と一言だけ告げて家から出た。もしかしたら母親のおつかいかと思ったけどどうやらそうじゃないみたい。街の外に向かっていってるみたいだけど魔物を討伐するっていう感じでもない。一応腰には剣を差していたけど抜く素振りも見せないし。
そしてしばらくついていってみればそこそこ大きな森の前にたどり着いて、そこにはちょっと厳つい人間となぜか魔物も一緒にいた。あの魔物はゴーレムだ。耐久度があって力も強い。
「おお勇者、悪いな来てもらって。早速頼んでいいか?」
「もちろん」
「な、何するのよ」
「ん? お手伝い」
勇者が森に向かって手を掲げると周りにいた人たちが一斉に左右に捌ける。今から何が起ころうとしているのか、想像できるようでできないようで。
「『ビエント・フィロ』」
そう、勇者がたった一言。たった一言言っただけで目の前にあった木があっという間に切り倒された。勇者が使ったのは風魔法。しかも誰でも習得できるような初期中の初期。
っていうのに、あれだけ木しかなかったのに目の前に広がっているのは大地と見通しのいい風景だ。初心者でも使える魔法なのにこの威力って、明らかにおかしい。
「助かったぞ勇者。よーし者共運べ運べー!」
「おーっす!」
一斉に捌けていた人たちが動き出して切り倒された木をまた運びやすいように切って、えっさほっさと運び出した。もしかして木材調達だったわけ? ってこのときになってようやく気付く。ちなみに一緒にいたゴーレムたちは人間に頼まれてたみたいで一緒に木を運んでいる。
「えっ……と、勇者」
「前まではみんなで頑張って伐採してたみたいなんだけどね、私が魔法使ったほうが早いから」
便利でいいでしょ、って続けた勇者に確かに便利だけど。そうしたほうがこの人たちも仕事が早くすんでいいんだろうけど。でも、そんな、魔王討伐とか魔王に対抗できる勇者にこんな便利屋的なことをさせる? 普通なら「こんなこと勇者にさせるな」って勇者だって怒ってもおかしくないのに。
っていうその勇者は他の人たちと一緒にえっさほいさと木材運んでいるし。しかも持っている量が明らかにおかしい。そのへんの屈強な身体つきのおじさんよりも持っているってどういうことなの。明らかに質量がおかしい。勇者って名前がなかったら腕の細いただの小娘って感じなのに、なんでそんな両腕に丸太をこんもりと持ってんのよ。
「ゆ、勇者。流石に無茶してない? そんなに持って重いでしょ……」
「え? 強化魔法使ったらもっと持てるけど、魔法使ったほうがいい?」
「強化魔法使ってなかったんかい!」
あたしてっきり周りの人のために強化魔法で強化して持っているものだと思っていたのに! なに、天然でこの怪力なの? なんなの? 勇者と会ってからちょこちょこ思っていたことだけど、頭まで筋肉でできてんの?
「妖精さん、危ないから避けたほうがいいよ」
「きゃあ?! ちょっと! 丸太ぶん回さないでよ!」
「お。なんだちみっこいのがいるなと思ったら虫じゃなくて妖精か。悪い悪いしっかりと並べて置こうと思ってな」
「よっ、妖精であるあたしを虫ぃ?!」
こんなか弱くて可憐で儚げでで幻想的な妖精を虫⁉ 虫と見間違うなんてことある?!
「そんくらいの大きさの虫っているからね」
「だからって虫って何よ虫って! もっとあたしに敬意を払いなさいよ!」
「手で払われそうだから黙ってたほうがいいよ」
「どういう忠告よ?!」
「か弱くて可憐で儚げな人ってそんなに喋んないと思って」
「くっ……!」
勇者のくせに痛いところを突いてくる。あたしは確かに人間よりは年上だけど、妖精の中ではまだまだ若い部類に入る。周りの妖精からからかわれたり生暖かい目で見られるなんてことよくあるし。
それが嫌で嫌で勇者を見に行く、っていう野次馬じみたことしてその実ちょっとした家出みたいなことをした。なんてこの勇者には言えないし言いたくない。わりと真顔で正論を返してきそうなんだもの。しかも悪意なく真っ直ぐな瞳をして。
ともあれ、丸太に潰されるなんてことは余計だし勇者から少し離れて様子を眺める。ゴーレムたちも人を襲うことなくせっせと丸太を運んでいた。ゴーレムは少し知能が低いから人間の言葉を喋るなんてことはできないんだけど、それでも単語単語で一生懸命自分の考えを伝えようとしている。そして人間も、言いたいことを汲み取ってゴーレムとしっかり意思疎通をしていた。
きっとずっとずっと前の勇者だったら、信じられない光景が広がっているんだなとしみじみ思ってしまった。今までの歴代の勇者はこれを望んでいたんだろうか、それとも肩を落としてるんだろうか。
「妖精さん」
「……あのね。最初に言ったでしょ。あたしにはちゃんとミウィっていう可愛い名前があるって」
「ミウィちゃん」
……初めて名前を読んだかと思ったら、ちゃん付け。普通妖精にちゃんなんて付ける?
本当、この勇者には世界の常識っていうか、そういうものが伝わらないと渋々勇者の近くに飛んでいく。勇者の前でずっと羽を動かすのも面倒になってその肩の上に腰を下ろした。
「何よ、勇者」
「これ、食べてみる?」
食べてみる? って聞いてきたくせに容赦なく口に押し込むなんてなんなのこの脳筋バカ。別に見たときはちゃんとしたマナが含まれていたから身体に悪いものじゃなさそうって。
そう思ったあたしがバカだった。
「うぐぅっ?! ゴッ、ゴホゴホッ! ちょっと何よこの謎の物体! まっず! ほんっとまずい!」
マナはちゃんとあったのに味がもう、味がもうおかしい。苦いやら渋いやら辛いやらなんかちょっと甘いやら場所によってはしょっぱいやら。あの小さな一粒でこんな味するなんておかしくない?! って口の中にある変なものをペッペッと吐き出して勇者に抗議しみれば、なぜか勇者はしょんぼりと肩を落として落ち込んでる。
な、なんなのよ。まるであたしが悪いみたいに。ハッと気付いて周りを見渡してみたら、さっきまでせっせと動いていた人間もあたしにジトッとした視線を向けてくる。
「まずかったんだ……ごめんね。練習してるんだけどうまく作れなくて……」
「……! も、もしかして、勇者が作ったの……?」
「魔王に教えてもらいながら作ってるんだけど……まずかったんだ……」
どおりでマナは十分にあったんだ、とかそんなこと思える余裕がない。だってもう明らかに勇者がどん底みたいな落ち込み方をするんだもの。もしかして周りの人たちも食べてみた? このまずいものを? でも彼らは別にまずそうな顔をしていない、っていうことは妖精の口には合わなかったってこと? でもだって、あんな色んな味するものなんて食べれるわけな……
「まずかったんだ……」
「っ、ああ、もう! まずかった! 色んな味がするほど一体何を入れたのよ! 味見した?! 味見せずに周りに配ったんじゃないでしょうね?!」
「……魔王が食べて、『悪くない』って」
「それは魔王が気を遣ったのよッ! 魔王に言っときなさい! ちゃんと言ったほうがその人のためだって‼」
「……ミウィちゃん……」
「そっ……そんな目で見つめてこないで!」
そんな捨てられたラビットみたいなうるうるした目であたしを見つめてきてどうすんの! 勇者はデフォかどうかわからないけど人を惹きつける能力があるんだから、そんなものをここで発揮しない!
本当、無自覚が一番たちが悪い! って思ってるのにうるうる勇者に気圧されてまずいまずい言っていたあたしも段々と言葉が詰まってくる。
「わっ……わかったわよー! あたしも一緒に魔王城に行って、料理を教えてあげる! あたしはアンタに気を遣ったりせずにはっきり言ってあげるんだからね?!」
「ミウィちゃん……! ありがとう!」
勇者があたしの手をぎゅっと握ってきて、嬉しそうな顔をする。同時に周りからはワッと歓声が上がった。
もう、一体何なのよ。あたしはただどっと疲れが押し寄せてきただけだった。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる