目撃者、モブ

みけねこ

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これからの四人

娘とお茶会①

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「んあ~! うちの娘可愛いぃ~!」
「えっへへ」
 おめかしした娘がものすっごく可愛い。髪も衣装もふわふわしてて天使かな? って思ってしまうほどだ。
 今日はお義母さんのお茶会にお呼ばれしたから二人で出席することにした。まぁ、娘の社交界への場馴れも踏まえてのお茶会だけど。俺もお義母さんにそうしてもらったように、娘も同じように場を設けてくれている。
 ただお義母さん主催のお茶会はほとんど、と言うか、全員女性なのよ。前は俺が場馴れするために主催してくれてたから特に疑問を抱くこともなく出席してたんだけど。でも今はマリンのための主催だ。
 女性のみの場に、一応性別上男の俺が出席するのってどうよ? っとなったわけよ。
 流石にお姉様方も女性同士の場に男がいたらちょっと嫌じゃない? 女性だけでお喋りしたいことっていっぱいあるだろうし、男がいるから喋りにくいことだってあるんじゃない?
 マリンにはお義母さんがついているから、流石に俺はそろそろ辞退しようと思ってお義母さんに前にそう伝えたら、だ。
「あらあらアシエちゃん、そんなこと気にしなくてもいいのよ?」
「でも流石に大勢の女性の中に男一人って……」
 そんな、巷の本で流行ってるハーレム? ってやつじゃないんだから。
「あのねアシエちゃん、彼女たちはアシエちゃんにも会いたいのよ?」
「そうなんですか?」
「ええそうよ。だって目の保養――」
「え?」
「こほん、なんでもなくってよ? アシエちゃんが来ないとわかると皆さんきっと落ち込むわ……だから一緒にいらっしゃい?」
「そう言ってくださるんなら……」
 なんか言い包められたような気もするし、何か言われたような気がしないわけでもないけど。まぁそう言ってくれるんならってことで俺もマリンと一緒に出席となったわけだ。
 可愛くおめかししたマリンに対して、俺も一応それなりの格好をする。もう何度も着てきたから流石に慣れたし、衣装を作ってくれる人がいつも俺の体格に合わせて作ってくれるから動きやすくて毎度すごく助かってる。
「今日も俺も一緒だけど」
「えへへ、お母様のエスコートされるのわたしだけだから、すっごく嬉しい!」
「んも~! また可愛いこと言う~!」
 俺だっていつもウェルスにエスコートされるほうだから、だからこうして娘のエスコートはすっごく嬉しい。俺の腕を差し出せば、小さい手が俺の腕に触れる。可愛くてキュンキュンする。
 娘をエスコートして会場に行くとすでにみなさん来ていて和気あいあいとお喋りしている。いつも思うんだけど、俺たちが遅れてやってきてるわけじゃないんだけどみなさん来るの早いんだよなぁ。
 会場に現れた俺たちに気付いたみなさんは早速挨拶に来てくれる。マリンも一人一人に丁寧に返していて、俺に似てるんだけどこういうとこしっかり王族なんだよなぁと思いつつ。俺に向けられる挨拶に対して俺もしっかりと返していく。
「お母様、みんなに挨拶してきますね」
「ああ、行っといで」
 マリンも参加するようになって、マリンと同い年ぐらいの子たちも参加するようになっていた。遠くからでも友達の姿が見えたんだろう、マリンは楽しそうに走っていく。やっぱうちの娘可愛い。
 そんな可愛い娘の後ろ姿を見送りつつ、俺もいつも通りお義母さんの隣の席に着いた。
「マリン様も相変わらず愛らしいお方ですね」
「そう言っていただけて嬉しいです。正直物凄く可愛いです、はい」
「まぁまぁ、うふふっ、自慢もしたくなりますものねぇ」
 いつも俺の話し相手になってくれるお姉様方とそんな会話をしつつ、和やかな時間を過ごす。今のお茶会の主役はマリンだから、おこぼれでついてきた俺はのんびりとさせていただきますと。
 賑やかなお茶会で他愛のない会話をしていると、ふと一人の貴婦人が俺に問いかけてきた。
「そういえばアシエ様、娘から聞いたのですが……マリン様にナイフを差し上げたのだと」
「ああ」
 ナイフ、っていう単語に一瞬お姉様方に動揺っていうか、眉を顰めたというか、そういう表情を見せられたけどまぁ確かに穏やかな単語じゃないから仕方がない。
 飲んでいたお茶から口を離して一度ソーサーにカップを置く。確かに愛娘にナイフをあげるとは何事かと思うよな、うん。っていうか実は金槌もあげてるけどそっちは黙っておくことにして。
「ナイフというか、『守り刀』ですね。東の国の伝統らしくて」
 前にナデシコさんとイリスさんが来たときに東の国の文化のことを教えてくれて、それは手紙でも続いていた。正直新鮮で驚くものばかりで教わることも楽しい。
 そんな中ナデシコさんが俺が鍛冶師だということを聞いて、「ではこういうものも作れるのではないでしょうか?」と教えてくれたのがその『守り刀』だ。守り刀はその名の通り、持ち主の身を守ってくれるお守りのようなものらしい。
 そりゃいいな! ってことで俺はナデシコさんが送ってくれた資料の写しを元に早速その守り刀を作ってマリンだけじゃなくて、ウェルスとレオンにもプレゼントした。この刀が俺の大切な家族を守ってくれるようにって。
 もちろん、切れ味抜群にしておいたから、物理的にも守ってくれるようにって。
 物理的なところは秘密にしておいて、それ以外のことを貴婦人に説明したらえらく感心していた。
「他の文化を取り入れる柔軟性も素晴らしいですわ」
「……アシエ様、不躾で申し訳ないのですが」
「なんでしょう?」
「そ……その守り刀というものは、わたくしたちにも作っていただくことは可能なのでしょうか……?」
「俺もまだ修行中の身なので、流石にみなさんに差し上げるほどの物は……なので、大切な家族だけに渡しています」
「大変失礼なことを申して申し訳ありません。そうですわよね、大切な方に差し上げたいですわよね……そうですわよね……」
 なんかものすっごくしょんぼりされてしまった。よくよく見てみると他のお姉様方もしょんぼりしてる。そ、そんなに欲しかったの?
 でも綺麗な貴婦人の懐から守り刀がポロンって出てきたらびっくりしない? 下手したら暗殺でもするのか……? っていう疑惑持たれたりしない? 俺がまだまだ修行中の身ってこともあるけど、流石に貴婦人たちに武器のプレゼントはどうかと。
 このしょんぼりした空気どうしよ、と思いつつ取りあえずお茶を飲んでいたら、さっきとはまた別の貴婦人がふと顔を上げてとある一点に視線が留まった。
「……あの、王妃。めずらしい髪飾りをつけておりますが、それはどちらで?」
「これ? ふふふっ! 実はこれ、アシエちゃんがプレゼントしてくれたのです。ね? アシエちゃん」
「はい」
 すっごく嬉しそうな顔してるお義母さんもやっぱ美人さんで、可愛いんだよなぁと思いつつ頷き返す。流石に王妃に武器プレゼントするってのはどうよってことで、お義母さんにはこれまた東の国の髪飾りをプレゼントした。
「『かんざし』と言うものです。装飾は得意なので作れそうだと思い、作ってお義母さんにプレゼントしました」
「素敵な装飾でしょう? わたくしも気に入って毎日つけているのです」
 毎日だったんだ、知らなかった。たまにでもいいからつけてくれるといいな~程度だったからちょっと照れちまう。ただ毎日となると使用頻度も高くなって劣化が早くなったりしないかなとちょっと心配にもなってくる。
 とかそんな俺を他所に……いやマジで他所だな。お姉様方はもうお義母さんのかんざしに釘付けになっている。流石にまじまじ見てくるものだから、お義母さんも一度髪から引き抜いて手のひらに置いて見やすいようにした。
「まぁ……素敵……」
「花と蝶があしらわれているのですね……精密ですわ」
 なんかすごく褒めてくれてるみたいで、思わずテレテレしようとしていた俺の隣でお義母さんがものすっごく胸張ってる。まぁ庶民風に言うとめっちゃドヤ顔。我が子自慢する親みたいな感じ。いやあながち間違っちゃいないのか……? いつの間にかお義母さんの周りにお姉様方が集まってきたものだから、邪魔にならないように立って別の席に移った。女性のこういうパワーってすごいよな。
 俺が隣に来たものだからとある貴婦人が目を丸くして、ちょっとだけ顔が赤くなった。でもすぐに笑顔を浮かべて軽く会釈をする。
「確かウェルス様が持っているペーパーナイフもアシエ様が作ったものだと」
「そうですね、最初にウェルスにあげたものです」
 っていうか売った物。しかも全部俺が作ったわけじゃなくて装飾部分だけだけど。ある意味親父との合作なわけだけど、ウェルスはそのペーパーナイフを今でも大切に使ってくれている。
「アシエ様がお作りになられたものはどれも素晴らしいものです。なので皆様が欲しがるのも当然なのですわ」
「え、そうなんですか? いやぁ、そう言っていだけて嬉しいようなありがたいような、恥ずかしいような」
 鍛冶師としての腕を少しでも認められたのかな、と照れ笑いをすると俺とお喋りしていた貴婦人の顔も赤くなった。大丈夫かな風邪かな。今日はいい天気で肌寒さとか全然ないんだけど。
 大丈夫ですか? って聞いたらすごい勢いで首が左右に振られたから、多分大丈夫なんだろう、うん。今度はその首振りで首痛めてないかって心配になってきたけど。
「……守り刀は難しいですけど、かんざしなら作れそうです」
「そうなのですか⁈」
「うぉっ⁈ ま、まぁ、みなさんが欲しがるなら、ですが。でも大量には作れませんけど」
 キャッキャ楽しそうにしてるお姉様方を見ながらポロッと言っちまったけど、貴婦人のあまりの勢いに押されて思わず仰け反った。なんとなく鼻息も荒い気がする。
「いいえ個数限定にしたほうが貴重度も上がるというもの! 良いと思いますわ! でもきっと殺到するでしょうから身近な方からがよろしいかと!!」
「そ、そうですね。お世話になってる方から……」
「素敵ですわ!!」
「か、顔近いです」
「……きゃっ! 申し訳ございません!」
 どんどん近付いてきて流石にこれ俺がセクハラで訴えられる~! ってところで貴婦人が我に返って距離を元に戻してくれた。ホッと一息。
 まぁでも今までもお世話になってるメイドさんや使用人の人たち、護衛の騎士の人にもプレゼントしてきたから、こうして俺たちのことをあたたかく見守ってくれているお姉様方にもお礼の品をプレゼントするのもいいのかもしれない。
 流石にナイフプレゼントするのもな~って思っていたから。かんざしなら普段使いもできるし、いざというとき先端で刺せるから。いやー、何を刺すかなんて人それぞれだけど。
 あとでナデシコさんに他にもいいデザインがないかどうか手紙で聞いてみよ、と思いながらテーブルの上にあったケーキをフォークで一口頬張った。
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