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第19話
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若旦那はその昔、アルーシャさんと共にダンジョン攻略を目指した事があるとか。
魔法もその為に勉強して覚えたらしい。
そこそこ、いいとこまではいったのだが、共に攻略を目指していたメンバーを失った事によりダンジョン攻略を辞めて、逃げるように領地に戻ってきたらしい。
よくもまあ、あの親父さんが許してくれたなって聞くと、ダンジョン攻略を目指す貴族はそこそこいるそうな。
ダンジョンを攻略した貴族には国から栄誉叙勲を貰える上に、下手したら領地まで増えるとか。
逆に誰かにダンジョン攻略された所為で領地を差し出さないといけない場合もあるとか。
その場合でも、過去にダンジョン攻略していれば、その対象にされない。
また、未踏ダンジョンであれば神々から神器を授けられ、一気に大名の仲間入りとか。
「辞めてください若旦那! もういいじゃありませんか。それに身分が違いすぎます。大丈夫、私はどこにもいきませんから。ずっと、若旦那の世話だけして生きていきます」
「それじゃ駄目なんだ! 僕は、アルーシャに幸せになってもらいたいんだ。そんな辛い生き方をして欲しい訳じゃない!」
「若旦那……アルーシャは、若旦那と居られるだけで幸せですよ?」
「アルーシャ……」
はあ、分かりました。攻略法その三でいく訳ですね。
よろしい、このセイジ、全力をもってサポートいたしましょう。
銃のレベルも上がるしな。
「若旦那、冒険者、つて、ある」
「ほんとうかい!? そういえばセイジは冒険者だったんだな」
オレ達は翌日、さっそくオレの居た町に向かって出発するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「「にぃいいちゃぁあーーん!」」
町に戻ったオレに孤児達が、そりゃも~、すげー勢いで飛びついてきた。
「セイジの事だから、うん、心配してなかったぞ」
そう言ってくる姉さん。でも少し目に隈があるッスよ?
「いや~良かったぜ、もうちょっとで、皆で領主様のとこに襲撃かけるとこだったわ」
なんてこと計画してんですか! 反乱でも起こす気か?
町中の人がオレの帰還を祝福してくれる。
こんな異世界で、待っていてくれる人がこんなに居たんだな。
「セイジは大勢の人に好かれているんだな」
それを見て若旦那がそう言ってくる。
ちょっとホロッとくるオレ。
「おいセイジ、早速だが、指名依頼だ」
なんすかその紙の束? えっ、見る限りトリトリトリって書いてるんですが。えっ、オレの存在意義ってマグロ鳥狩りですか? えっ、マジで!?
いやまあ、マグロ鳥なら道中数匹落としてきてるけどさあ。
オレが馬車からひっぱりだしたマグロ鳥を見て町中の人が歓喜する。
さっきより盛り上がってますね。オレはマグロ鳥以下ですか?
「ほらセイジ、冒険者、紹介してくれるんじゃなかったのか?」
ちょっとくさってるオレに若旦那が問いかけてくる。
そこでオレはアイラ姉さんとヒュッケルさんを紹介する。
後は盾の人だが……バルドック兄貴、手伝ってくれないかな?
「何? ダンジョン探索だと? まあ、オレも昔は……しかしなあ」
そう言ってエステラ姉さんをチラチラ見やる。
「行ってきな、なあに、宿の事は孤児達が居るさ。いやしかし、領主の跡継ぎがねえ……」
宿屋の姉さんは若旦那達の恋バナを聞いて随分入れ込んでいる模様。
そこへ、孤児の女の子の一人がモジモジしながらオレに擦り寄ってくる。
「兄ちゃん、俺、待ってたよ。だからさ」
「何がだ?」
「………………」
どうせそんなこったろうと思ったよ! って叩かれまくるオレ。
オレなんかやったっけ?
どうやら、別れ際のセリフをプロポーズだと勘違いしていた模様。
落ち込んでた時に、そうやって皆に励まされたらしい。皆も皆だな、人事だと思って。
まあ、そういう訳で冒険者ギルドにパーティ申請に行く。
リーダーは若旦那。名前はエンスート。魔術師。
それにオレ、魔法使い?
アイラ姉さん、弓使い。ヒュッケルさん、斧使い。バルドック兄貴、大剣使い兼盾役。
そしてサポート役(ようは荷物持ち、警戒などの小間使い)のアルーシャさん。一応武器はツインダガーだ。
「セイジはそんな武器で戦えるのかい?」
前線を張るというオレに意義を唱えてくる若旦那。
「あ~若旦那はまだ、セイジの実力を知らね~のか?」
「私達が保証しますわよ。まずはこいつに突っ込ませて遠距離から削ったほうがいいですの」
「そうじゃそうじゃ、もしかしたら若旦那の出番はないかもな」
3人の現役冒険者に言われて引き下がる若旦那。
フッ、若旦那もオレの勇姿を見れば納得するさ。
などと思っていたのだが、
「セイジ……やはり全然ダメじゃないか。あれはこのダンジョンの最弱モンスターなんだぞ」
だからスライムはオレの天敵なんスよーー!
魔法もその為に勉強して覚えたらしい。
そこそこ、いいとこまではいったのだが、共に攻略を目指していたメンバーを失った事によりダンジョン攻略を辞めて、逃げるように領地に戻ってきたらしい。
よくもまあ、あの親父さんが許してくれたなって聞くと、ダンジョン攻略を目指す貴族はそこそこいるそうな。
ダンジョンを攻略した貴族には国から栄誉叙勲を貰える上に、下手したら領地まで増えるとか。
逆に誰かにダンジョン攻略された所為で領地を差し出さないといけない場合もあるとか。
その場合でも、過去にダンジョン攻略していれば、その対象にされない。
また、未踏ダンジョンであれば神々から神器を授けられ、一気に大名の仲間入りとか。
「辞めてください若旦那! もういいじゃありませんか。それに身分が違いすぎます。大丈夫、私はどこにもいきませんから。ずっと、若旦那の世話だけして生きていきます」
「それじゃ駄目なんだ! 僕は、アルーシャに幸せになってもらいたいんだ。そんな辛い生き方をして欲しい訳じゃない!」
「若旦那……アルーシャは、若旦那と居られるだけで幸せですよ?」
「アルーシャ……」
はあ、分かりました。攻略法その三でいく訳ですね。
よろしい、このセイジ、全力をもってサポートいたしましょう。
銃のレベルも上がるしな。
「若旦那、冒険者、つて、ある」
「ほんとうかい!? そういえばセイジは冒険者だったんだな」
オレ達は翌日、さっそくオレの居た町に向かって出発するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「「にぃいいちゃぁあーーん!」」
町に戻ったオレに孤児達が、そりゃも~、すげー勢いで飛びついてきた。
「セイジの事だから、うん、心配してなかったぞ」
そう言ってくる姉さん。でも少し目に隈があるッスよ?
「いや~良かったぜ、もうちょっとで、皆で領主様のとこに襲撃かけるとこだったわ」
なんてこと計画してんですか! 反乱でも起こす気か?
町中の人がオレの帰還を祝福してくれる。
こんな異世界で、待っていてくれる人がこんなに居たんだな。
「セイジは大勢の人に好かれているんだな」
それを見て若旦那がそう言ってくる。
ちょっとホロッとくるオレ。
「おいセイジ、早速だが、指名依頼だ」
なんすかその紙の束? えっ、見る限りトリトリトリって書いてるんですが。えっ、オレの存在意義ってマグロ鳥狩りですか? えっ、マジで!?
いやまあ、マグロ鳥なら道中数匹落としてきてるけどさあ。
オレが馬車からひっぱりだしたマグロ鳥を見て町中の人が歓喜する。
さっきより盛り上がってますね。オレはマグロ鳥以下ですか?
「ほらセイジ、冒険者、紹介してくれるんじゃなかったのか?」
ちょっとくさってるオレに若旦那が問いかけてくる。
そこでオレはアイラ姉さんとヒュッケルさんを紹介する。
後は盾の人だが……バルドック兄貴、手伝ってくれないかな?
「何? ダンジョン探索だと? まあ、オレも昔は……しかしなあ」
そう言ってエステラ姉さんをチラチラ見やる。
「行ってきな、なあに、宿の事は孤児達が居るさ。いやしかし、領主の跡継ぎがねえ……」
宿屋の姉さんは若旦那達の恋バナを聞いて随分入れ込んでいる模様。
そこへ、孤児の女の子の一人がモジモジしながらオレに擦り寄ってくる。
「兄ちゃん、俺、待ってたよ。だからさ」
「何がだ?」
「………………」
どうせそんなこったろうと思ったよ! って叩かれまくるオレ。
オレなんかやったっけ?
どうやら、別れ際のセリフをプロポーズだと勘違いしていた模様。
落ち込んでた時に、そうやって皆に励まされたらしい。皆も皆だな、人事だと思って。
まあ、そういう訳で冒険者ギルドにパーティ申請に行く。
リーダーは若旦那。名前はエンスート。魔術師。
それにオレ、魔法使い?
アイラ姉さん、弓使い。ヒュッケルさん、斧使い。バルドック兄貴、大剣使い兼盾役。
そしてサポート役(ようは荷物持ち、警戒などの小間使い)のアルーシャさん。一応武器はツインダガーだ。
「セイジはそんな武器で戦えるのかい?」
前線を張るというオレに意義を唱えてくる若旦那。
「あ~若旦那はまだ、セイジの実力を知らね~のか?」
「私達が保証しますわよ。まずはこいつに突っ込ませて遠距離から削ったほうがいいですの」
「そうじゃそうじゃ、もしかしたら若旦那の出番はないかもな」
3人の現役冒険者に言われて引き下がる若旦那。
フッ、若旦那もオレの勇姿を見れば納得するさ。
などと思っていたのだが、
「セイジ……やはり全然ダメじゃないか。あれはこのダンジョンの最弱モンスターなんだぞ」
だからスライムはオレの天敵なんスよーー!
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