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第7話ー6 パートB2
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勇吾は残りの符を全て空中に舞い散らすとその全てが塵に変わっていく勇吾の周囲に符に蓄積された自身の魔力が充満する。この魔力が尽きるまでは自身の魔力を使わずとも無制限に術の発動が可能である。
「まずはそのカッコイイ装甲削れるだけ削らせて貰うぞ!」勇吾がOneEyesに狙いを定めると彼の前面に無数の弩が宙に現れまるで重火器の様に絶え間無い矢の掃射が始まった。
しかし輝兼のOneEyesの進行速度は変わらない主要センサーが密集する頭部をガードしながら勇吾に迫る。
『この程度じゃこの子の装甲を削る事すら出来ないよ!』
OneEyesが勇吾まで1メートルまで距離を詰め攻撃姿勢に入るがここで勇吾の罠が発動する。
「その慢心が命取りだ。」
OneEyesの足元から何十本もの戈がその動きを絡め取る。
『何だって、ちぃ!!』
勇吾は残っている自身の魔力の殆どを注ぎ込んで最高の一撃を放つために身構える。腰を落とし右手は天を掴むように上に向けそこに師が見せた最強の槍を創り出す。
「これで終いだ!『破城槍』!!」
『動けぇぇぇぇ!!』
輝兼の叫びと共にOneEyesのメインカメラが光を放つと自身の装甲を剥がしながら絡みつく戈を破壊、装甲が剥がれたその拳は槍を撃とうとしている勇吾に届く。
拳は鈍い音を立て勇吾の腹部を抉る。その音はOneEyesの機体が崩壊する音と勇吾の肋骨を砕く音だった。
しかしその拳が届くと同時に勇吾の手からは『破城槍』は撃ち出されていた。OneEyesの胸を貫くはずの槍は右に逸れOneEyesの左胸と肩口をごっそり抉ったが勇吾の意識が一瞬途切れた為槍は霧散する。OneEyesは動きを止めた、しかし致命打を受けたのは勇吾も同じである。輝兼とOneEyesの渾身の一撃は勇吾を20メートル以上吹き飛ばし観客席と試合場を隔てている壁に叩きつけられる。観客席からは想像以上の激戦に加え勇吾の凄惨な姿に悲鳴が上がる。重い沈黙が会場に圧し掛かるが数秒が勇吾の姿を見てざわつき始める。
勇吾の体内に在る蚩尤の霊核が動き出す。宿主を生かす為に傷ついた体を魔力によって修復を始めていた。粉々に砕けていた肋骨は元に戻り外傷も内蔵の破損も一分も満たない内に完全に回復した。
「ぐはっ!」
口から胃に溜まっていた血を吐き出すと胸の辺りを押さえ込みフラフラと立ち上がる勇吾。
「落ち着け、落ち着け。もう大丈夫だ…」
自分自身に語りかけるように深い呼吸を繰り返す。傷は癒えたが今度は霊核から溢れ出す魔力を抑える為に自己制御を始めなければいけない。姜師との修行で霊核の制御は本戦が始まるまで出来うる限りの時間を費やしたが未だに完全に制御は出来ずにいた為、制御下に置かれていない状況での霊核の起動は押さえ込むために心身共に非常に疲労してしまう。
呼吸と瞑想で霊核を落ち着かせる事が出来た。
勇吾は試合前の状態まで回復し何事も無かったかのように立ち上がった。しかし勇吾の礼装に刻まれた防御術式は全て破壊され魔力は完全に使い切ってしまっていた。観客から見れば輝兼の最後の一撃を無傷で防ぎきったかのように写っているのだろう。勇吾は動かなくなったOneEyesを数秒見つめた後輝兼の元に歩いていった。そこには試合前からは想像出来ないほど窶れてしまっている輝兼が弟の正兼に介抱される姿だった。
「あの子は凄く大喰らいでね魔力バッテリーだけじゃ足りなくて僕の魔力も持って行ったよ。…でも、それでも君に届かなかった。」
横たわり立ち上がる力無く零す様に呟く輝兼の横に座る勇吾は戦いきった友人を見る。
「殆ど相打ちだ。こうやって俺が立っているのは紙一重だ。マジな話、正兼君に勝負を挑まれたら終わりだよ。」
苦笑いをして肩を竦ませる。体も魔力も万全だが当の勇吾本人にこれ以上戦う気概が無くなってしまった。輝兼との戦いに満足してしまったからだ。
「先輩と戦う気は無いので安心してください。兄さんと姉さんが満足してくれれば勝敗には意味が有りませんから。」
三光院正兼にとって今回の実戦演習は兄と姉二人の希望を叶える為に出ていただけでこの試合の行方は勝っても負けても
どちらでも良かった。彼からすればこの試合が始まった時点で彼の役目は終えたも同然だった。
生粋のゴーレム研究者である彼は力の優劣や術者としての格付けに興味は無くこの様な大会に出ずに済むなら自室で篭って研究に没頭して居たかった。しかし他ならない兄と姉のたっての願いを聞かない訳には行かない。実はお兄ちゃん、お姉ちゃん大好きっ子な彼は柄にも無くがんばってしまったようだ。
「勝敗は付いている様なので兄さんを連れて医務室に向かいます。」
「すまないねマイブラザー、お兄ちゃん動けないのでおんぶして言ってくれないか?」
「嫌です面倒臭い。運搬用ゴーレムを出してあるのでそれに運ばせます。それでは先輩、これで。」
正兼が呼び出したゴレーム達が輝兼を無造作に運び出していく。
「わるい、正兼君。月子の姿が見えないんだけど何処かな?
自分の試合で手一杯であいつの事見てなかったんだ。」
「まずはそのカッコイイ装甲削れるだけ削らせて貰うぞ!」勇吾がOneEyesに狙いを定めると彼の前面に無数の弩が宙に現れまるで重火器の様に絶え間無い矢の掃射が始まった。
しかし輝兼のOneEyesの進行速度は変わらない主要センサーが密集する頭部をガードしながら勇吾に迫る。
『この程度じゃこの子の装甲を削る事すら出来ないよ!』
OneEyesが勇吾まで1メートルまで距離を詰め攻撃姿勢に入るがここで勇吾の罠が発動する。
「その慢心が命取りだ。」
OneEyesの足元から何十本もの戈がその動きを絡め取る。
『何だって、ちぃ!!』
勇吾は残っている自身の魔力の殆どを注ぎ込んで最高の一撃を放つために身構える。腰を落とし右手は天を掴むように上に向けそこに師が見せた最強の槍を創り出す。
「これで終いだ!『破城槍』!!」
『動けぇぇぇぇ!!』
輝兼の叫びと共にOneEyesのメインカメラが光を放つと自身の装甲を剥がしながら絡みつく戈を破壊、装甲が剥がれたその拳は槍を撃とうとしている勇吾に届く。
拳は鈍い音を立て勇吾の腹部を抉る。その音はOneEyesの機体が崩壊する音と勇吾の肋骨を砕く音だった。
しかしその拳が届くと同時に勇吾の手からは『破城槍』は撃ち出されていた。OneEyesの胸を貫くはずの槍は右に逸れOneEyesの左胸と肩口をごっそり抉ったが勇吾の意識が一瞬途切れた為槍は霧散する。OneEyesは動きを止めた、しかし致命打を受けたのは勇吾も同じである。輝兼とOneEyesの渾身の一撃は勇吾を20メートル以上吹き飛ばし観客席と試合場を隔てている壁に叩きつけられる。観客席からは想像以上の激戦に加え勇吾の凄惨な姿に悲鳴が上がる。重い沈黙が会場に圧し掛かるが数秒が勇吾の姿を見てざわつき始める。
勇吾の体内に在る蚩尤の霊核が動き出す。宿主を生かす為に傷ついた体を魔力によって修復を始めていた。粉々に砕けていた肋骨は元に戻り外傷も内蔵の破損も一分も満たない内に完全に回復した。
「ぐはっ!」
口から胃に溜まっていた血を吐き出すと胸の辺りを押さえ込みフラフラと立ち上がる勇吾。
「落ち着け、落ち着け。もう大丈夫だ…」
自分自身に語りかけるように深い呼吸を繰り返す。傷は癒えたが今度は霊核から溢れ出す魔力を抑える為に自己制御を始めなければいけない。姜師との修行で霊核の制御は本戦が始まるまで出来うる限りの時間を費やしたが未だに完全に制御は出来ずにいた為、制御下に置かれていない状況での霊核の起動は押さえ込むために心身共に非常に疲労してしまう。
呼吸と瞑想で霊核を落ち着かせる事が出来た。
勇吾は試合前の状態まで回復し何事も無かったかのように立ち上がった。しかし勇吾の礼装に刻まれた防御術式は全て破壊され魔力は完全に使い切ってしまっていた。観客から見れば輝兼の最後の一撃を無傷で防ぎきったかのように写っているのだろう。勇吾は動かなくなったOneEyesを数秒見つめた後輝兼の元に歩いていった。そこには試合前からは想像出来ないほど窶れてしまっている輝兼が弟の正兼に介抱される姿だった。
「あの子は凄く大喰らいでね魔力バッテリーだけじゃ足りなくて僕の魔力も持って行ったよ。…でも、それでも君に届かなかった。」
横たわり立ち上がる力無く零す様に呟く輝兼の横に座る勇吾は戦いきった友人を見る。
「殆ど相打ちだ。こうやって俺が立っているのは紙一重だ。マジな話、正兼君に勝負を挑まれたら終わりだよ。」
苦笑いをして肩を竦ませる。体も魔力も万全だが当の勇吾本人にこれ以上戦う気概が無くなってしまった。輝兼との戦いに満足してしまったからだ。
「先輩と戦う気は無いので安心してください。兄さんと姉さんが満足してくれれば勝敗には意味が有りませんから。」
三光院正兼にとって今回の実戦演習は兄と姉二人の希望を叶える為に出ていただけでこの試合の行方は勝っても負けても
どちらでも良かった。彼からすればこの試合が始まった時点で彼の役目は終えたも同然だった。
生粋のゴーレム研究者である彼は力の優劣や術者としての格付けに興味は無くこの様な大会に出ずに済むなら自室で篭って研究に没頭して居たかった。しかし他ならない兄と姉のたっての願いを聞かない訳には行かない。実はお兄ちゃん、お姉ちゃん大好きっ子な彼は柄にも無くがんばってしまったようだ。
「勝敗は付いている様なので兄さんを連れて医務室に向かいます。」
「すまないねマイブラザー、お兄ちゃん動けないのでおんぶして言ってくれないか?」
「嫌です面倒臭い。運搬用ゴーレムを出してあるのでそれに運ばせます。それでは先輩、これで。」
正兼が呼び出したゴレーム達が輝兼を無造作に運び出していく。
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自分の試合で手一杯であいつの事見てなかったんだ。」
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