龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第8話ー13

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『金剄、蒼崩拳!』
 勇吾から事前に聞いていた柾陰の属性は雷、陰陽五行法では雷は木気に属する事象として分類される為月子は金気を用いた攻撃で柾陰の経絡を打ち抜いた。金剋木である。
ちなみに五行の法則を知っている諸兄には釈迦に説法だろうが知らない方の為に掻い摘んで説明すると五行とはこの世界は木・火・土・金・水で構成されていると考える中国魔術の思想であり根幹を指しアジア圏で広く普及している基礎術式や現代術式の多くは五行法が基盤になっている。
 陰陽五行の用法としては簡単に分けると2つ、相生と相克に分けられ月子が行ったのは相克である。相生とは隣り合う属性同士が高め合う事を指し逆に相克は対角に位置する属性を弱くする事である。ざっくり言えば金気=金属製の斧で木=木気を切ってやる!的な事である。

 右手には確かな手応えが残っていた。確実に柾陰の経絡を打ち抜いた、しかし僅かに残る拳の痺れと大の字に倒れている筈の柾陰から沸き立つ気が月子の構えを解く事を許さず拳を固めさせた。立ち上がる姿は覚束無く先程まで軽々と扱っていた長大な木刀を杖代わりにしないと立てない程だったがその目は死んでは居なかった。その体から発せられている気は揺らぎ安定してないが目に宿る闘志だけはギラギラと燃え盛っている。

「参った。これ程の一撃は生涯初めてだ。不覚にも足が笑っている。その小さな体から繰り出したその一撃、感服した!
俺の名は伽島柾陰、貴殿の名を知りたい!」
今にも膝から崩れ落ちそうな柾陰だったがそれでも月子を見据える目は生気を失っていない。むしろ輝いている。
「お褒めに預かり光栄です。私は白銀月子、未熟ながらこの拳を修めるべく精進の途中です。」
月子は構えを解き頭を下げる。
「その立ち振る舞い、構えを解いてなお隙の無さ。貴殿が兵頭の切り札だったのか…貴殿が居るからこそのあの動き、俺もまだまだ青い、兵頭にしてやられた。」
柾陰の視線の先には千草と対峙する勇吾の後姿を見て深く息を吐く。
「ここに至るまでの道筋を良い様に踊らされていたか、やはり兵頭の本質は策を巡らせ勝利を手繰り寄せる策士。しかし去年見せた戦士としての猛々しさも捨てがたいな。」
「実は数日前までは伽島先輩との再戦を楽しみにしていたのですが一昨日の夜に神代教官から手酷く駄目出しをされたのでこの様な作戦に至ったようです。」
それを聞いた柾陰は豪快に笑う。
「なるほど、それは仕方ない。礼司殿に苦言されれば仕方無し。あいつは幼い頃より礼司殿に憧れているからな。」
柾陰は頻りに笑った後に再び大きく息を吐く。
「白銀殿、この身が整うまでお待ち戴き感謝する。どうやらこれ以上は回復は見込めない。貴殿に打ち抜かれた経絡は数日は回復しないだろう。されど、我が渾身の一刀に曇り無しいざ尋常に勝負!!」
 体を支えていた木刀を上段に構え残った霊気を練り上げる柾陰、だが体内の霊力を操作する経絡は月子の一撃で破損し機能不全を起こしている。この状態で霊気を使用すれば全身に激痛が走りまともに動く事は出来ない。これは肉体が肉体を維持する為に起す防衛行動、しかし柾陰はそれを気合で捻じ伏せ最後の一撃を繰り出そうとしている。
「ならば私もこの一撃を持って返礼とさせて頂きます。」

 柾陰の練り上げられた霊気は蒼雷を纏わせながら木刀に集約していくその様は神話の戦神が蘇ったかのように見えた。
大して月子は後ろに飛び退き距離を取る。両手を腰に構え軸足を折り曲げ腰を落とし氣を高めていく。両者ほぼ同時に最後の一撃が放たれた。
 「秘の太刀、鳴神ぃぃぃ!!」
 限界まで高められた力を解放するように放たれた一撃は凶悪な稲妻と化していた。空気を裂き焦がし月子に襲い掛かるが月子はそれを静かに迎え撃つ。高め練り上げた氣を両手両足に纏め上げ放たれる神速の一撃。
 「白秋虎歩…」
振り下ろされた雷は轟音共に地面に突き刺さり巨大な土煙を上げた、やがて一陣の風が吹くとそこには満足そうな笑みを浮かべた柾陰の姿とその後ろに立つ月子の姿。
「…薄明双爪。」
「お見事。」
月子は立ったまま気を失った柾陰に一礼をする、その瞬間試合終了の合図が会場に響いた。
「勝者、兵頭・白銀チーム!!」
月子対柾陰、勇吾対千草の戦いがほぼ同時に決着が着いた。
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