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第8話ー14
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振り下ろされる雷を追い抜くように空気抵抗を限りなくゼロにする地面スレスレの姿勢のまま月子は風すら追い抜く。観客席からは月子が消えたように見えただろう、人の目に映る事の無い速度のまま放たれる無音の爪が二振り、静かに駆け抜けた。両手に込めた氣は鋭い爪となり柾陰の礼装ごと切り裂く。その衝撃は彼の鍛え抜かれた体を突き抜け最後に残っていたなけなしの体力気力を根こそぎ狩り取った。
月子の両手から高密度に造り上げられた爪が霧散し、その光が夕闇に落ちる陽の儚い光の様に静かに消えていく。
木刀を振り下ろした姿のまま気絶している柾陰を見ながら安堵の息を吐く月子。二人が交差した最後の一合は紙一重の攻撃に為ったからである。既に死に体と思われて柾陰だったが最後の一撃は正しく彼にとって最高の一撃を生み出した。
肉体の生存本能を精神力で捻じ伏せ剣士としての本懐を押し通す事で彼の持つ十全以上の力が生まれた。月子も相手がどんな状態であろうとも手心を加えない彼女らしい性格が功を奏した。もし仮に全力で技を放たなければ倒れていたのは月子だったかもしれない。試合終了のアナウンスに漸く勝利の実感が沸いて来たが背中に張り付く冷や汗が薄氷を踏むような勝利だと告げたような気がした。
アナウンスから暫くすると勇吾の安否が気になり彼と千草が戦っていた場所に走り出す。擂り鉢状に抉られた床の中心に埃まみれの二人が居た。勇吾は意識を失って居る千草を抱きかかえ放心している。千草の礼装は背中部分はボロボロに千切れ白い肌にも無数の傷が刻まれていたが本人はそれほど重傷ではない様子であり静かな寝息を立てて眠っている。
一方の勇吾のほうが重傷に見える。左手は出血し数箇所の骨折、肋骨にも何本かひびが入っている。額も切れており満身創痍に見えるが蚩尤の霊核が既に少しずつ回復させているので直ぐに歩けるようになるはずだが本人は一向に動こうとせず固まっている。
「勇吾君?おーい、勇吾君…ゆ・う・ご・く・ん!!!」
声を掛けてもピクリともしない勇吾に終いには耳の直ぐ脇で大声で声を掛けた月子。
「なっなんだ!つっ月子!?えっんなんでお前ココに?試合はどうしたんだ?」
月子の声に我に帰った勇吾だが自身の置かれている状況混乱し要領を得ない。しかも顔をなぜか赤らめ挙動不審である。
「何言ってるの?うち達が勝ったんだよ。それと、この状況はどう言う事かな?なんでかな?うちの目にはほぼ裸のその人を勇吾君が抱きしめている様に見えるんだけど?」
柾陰との戦いで心身ともに疲れているはずの月子だったがそれ以上に湧き上がる怒りが気力を漲らせ先ほど以上の氣が拳に宿っている様に見受けられる。
「ばっ馬鹿変な勘違いすんじゃねぇよ!試合の結果がこう言う状態な訳でちぃ姉も気絶してるから支えないといけねぇし
やましい事など一つも無いからな!ホント無いからな!」
「なんか妙に必死な感じだよね。本当に何にも無いならうちの目を見て言えるよね。」
月子は勇吾の顔をじっと見つめ鼻先が触れそうに為るまで顔を近づけると勇吾がふいっと目を逸らす。いつもならココまで顔を近づけると月子の方が顔を赤らめて視線を外すか飛び退くものだが今に限って勇吾が赤面し視線を外す。
「目、逸れてるけど…」
「か、顔が近いからビックリしただけさ…」
「あやしい…何かあったでしょ?」
「なっ、何にも無い何にも無いって!ああっそうだちい姉を医務室に運んでもらわないと!」
月子から後ずさりながら距離を取りつつ既に試合会場入っていている会場スタッフを見つけ手を振る勇吾。明らかに試合前と違った勇吾の様子を見て月子の女の勘がパトカーのサイレン並に警報を鳴らしている。これは断固追求して吐かせねばならない、別件逮捕の後に強引な取調べも辞さないほど勇吾の挙動不審さは黒であると月子は思っていた。
「ちょっと勇吾君お話があります。」
かなり強めの圧力を醸し出しつつ勇吾に迫る月子。
「そうだ月子、お前の礼装ボロボロじゃないか早く着替えて来いよ、ああでも俺の方が着替えるの早いから先に言って着替えるからゆっくり着替えろ、じゃ、先行ってるぞ!」
千草を医療スタッフに任せた勇吾はそそくさと会場から逃げ出していく。しかもクラウチングスタイルからの全力疾走でその場から逃走した。あまりにも唐突かつ必死な逃走に月子も唖然としながら見送ってしまったが直ぐに追いつこうと走り出すが既に後姿が見えない程の距離だった。
「ああっもう!!」
鈍い地響きがした、月子の八つ当たりの震脚で会場が揺れたようだ。
一方会場のスタッフや廊下にいた他の生徒の目も気にする事無く全力疾走のまま控え室に駆け込む勇吾。息を荒げながら自分の制服が掛けてあるロッカーの前で息を整えながら着替えようとするがその思いとは裏腹に遅々として着替えが終わらない。普段なら一分ほどで着替えられる制服が妙に重く感じボタンを留めるのが難しい。今彼の脳内での思考比率は千草との試合中に起きたあの出来事でほぼ占領されているからだろう。
「あれどういう事なんだろう?っかどういう意味なんだ?俺しちゃったっうかされちゃったと言うか何だよ!もう!モヤモヤするしなんか月子の顔も見れねぇし!はぁぁぁぁぁ…」
控え室で独り悶々とし頭を抱える勇吾。いくら彼が朴念仁で超鈍感であろうともあそこまで直接的な好意を示されれば嫌が負うにも意識してしまう。彼自身生涯で始めてのキスを経験してしまい普段なら気にもしない月子との距離さえ意識するほどに動揺している。
「よーし、一旦落ち着け俺。呼吸を整えろ、平常心、平常心
…よし…ならねぇ!!」
独りバタバタと床を転げ回るほど混乱している所にドアのノック音が聞える。
「勇吾君…居るの解ってますよ。着替え終わってますよね?入ります。」
敬語モードの月子がドアの前に立っている、ドア越しでも分かるほどの圧力が勇吾に圧し掛かるが恐怖を差し引いても今は逃げる事を優先したいと考えていた。ここで逃げても帰った後自室で更に手酷い尋問が待っていると理解しつつも今は気まずい気持ちで月子の顔をまともに見れない。
「いい加減返事ぐらいしなさい!怒りますよ!」
壊れるのではないかと言う位の勢いでドアを開ける月子に対し内心もう怒ってるじゃんっとツッコミを入れていた勇吾だがそれと同時に残っていた符を急遽別の術式に書き換えて発動させる。「発煙!」術式が発動し部屋の中は煙で充満させると勇吾はわざと音を立てて動く素振りをする。
「こんな目晦ましまで使って…これは尋問だけじゃ済まないですよ。はぁぁぁ、はっ!」
月子は力を溜めて拳を振りぬくと物凄い拳圧で煙が晴れて行く。部屋中の煙は霧散するがそこには勇吾の姿が見当たらなかった。しかし月子も見逃さなかった、部屋の一番奥のロッカーから制服の一部がはみ出ているのを目敏く見つける。
「煙に乗じて部屋から脱出と見せかけて部屋に隠れてうちをやり過ごそうって策かな?そう言う賢い策の勇吾君は嫌いじゃないけど今のうちには逆効果かな!」
ゆっくりとロッカーに歩みを進めロッカーの前に立つとにこやかな表情とは裏腹にその目は笑っていない。振りかぶった拳が鉄製の戸を打ち抜いた。
「ゆ~ご~くん、あれ?うそ!居ない!」
自ら空けた拳大の穴を怖い笑顔で覗き込むがその中には勇吾の姿は無かった。
その時、控え室のドアが勢い良く閉まる。
「悪い月子、今は一人にさせてくれぇぇぇ!!」
種明かしは簡単で符術を使い煙を充満させると同時にいかにも動きましたと月子にわざと察知させ実はもう一枚の符で穏行の術式を使い息を潜め姿を隠して月子がロッカーに向かうのを見計らい部屋の外に逃げる事に成功した。実は月子が見た征服は勇吾が着忘れていた上着がたまたまはみ出していただけで月子の早とちりも成功に繋がる要因だった。
そんなこんなで何とか脱出に成功した勇吾は脱兎の如く逃げる。「百盾壁!」あろう事か六甲兵装術で盾のバリケードまで作る念の要り様・・・
もう彼自身何故月子から逃げるのか分からなくなっていた。
返す返す言うのも酷だが朴念仁であり女性の機微に鈍感な彼は女性を女性と意識する事が無かった。強過ぎる姉と強い姉弟子に対して異性として見るより尊敬と畏怖が刷り込まれてしまった事もある事と学園に入学してからは優秀な生徒である事を目標とし特技武官になってからは礼司の七光と言われない様にと更に自己鍛錬を磨き続けた結果、文武両道を絵に書いたような誰もが羨望の眼差しで見つめる存在になっていたがその反面学園生活の殆どを学業と自己鍛錬に費やし青春のせの字も無い不毛な学生生活を送ってしまった。勿論学業、実技も優秀で黙っていれば2枚目な勇吾にはそれ相応に女生徒達からのアプローチは有ったが何度も言うがこの男朴念仁であり鈍感である、故に悉く少女達の好意をスルーし今に至ってしまった。
そんな彼だが千草の弩直球かつ弩級の好意を受けてしまい対処方法が分からない。術者としては一流な彼だがこと女性への経験値は小学生並の彼がいきなりの告白とキスを経験してしまい彼の脳内キャパシティはいっぱいいっぱいであり急激に異性を意識してしまっている。遅れてきた思春期状態だ、めんどくせぇ!!更に今まで無頓着に月子に接してきたことを急速に省み始め言い様の無い羞恥に苛まれている。もう何がなんだか分からないから走る事を止められないと言った状況でもある。
勇吾が走り始めた直後後方から破壊音が響き渡るのが聞えた。勿論月子がドアを破壊して廊下側に出て来た音であり数々の攻撃を耐えてきた勇吾自慢の術式を容易く破壊した音でもある。「ひつ!」音と共に伝わる怒気が勇吾の体を強張らせ短い悲鳴すら口から洩れる。本能で分かる逃げないと今逃げないと命がヤバイ!!しかし恐怖が一瞬の躊躇を生み怒りの権化と化した月子から逃げる為に一歩目が遅れてしまった。一瞬、風が吹きぬけた。獲物を狩る虎が勇吾の目の前にいた、それも彼が創り出した盾を片手に…その盾は勇吾の頭部めがけ振りぬかれた。
月子の両手から高密度に造り上げられた爪が霧散し、その光が夕闇に落ちる陽の儚い光の様に静かに消えていく。
木刀を振り下ろした姿のまま気絶している柾陰を見ながら安堵の息を吐く月子。二人が交差した最後の一合は紙一重の攻撃に為ったからである。既に死に体と思われて柾陰だったが最後の一撃は正しく彼にとって最高の一撃を生み出した。
肉体の生存本能を精神力で捻じ伏せ剣士としての本懐を押し通す事で彼の持つ十全以上の力が生まれた。月子も相手がどんな状態であろうとも手心を加えない彼女らしい性格が功を奏した。もし仮に全力で技を放たなければ倒れていたのは月子だったかもしれない。試合終了のアナウンスに漸く勝利の実感が沸いて来たが背中に張り付く冷や汗が薄氷を踏むような勝利だと告げたような気がした。
アナウンスから暫くすると勇吾の安否が気になり彼と千草が戦っていた場所に走り出す。擂り鉢状に抉られた床の中心に埃まみれの二人が居た。勇吾は意識を失って居る千草を抱きかかえ放心している。千草の礼装は背中部分はボロボロに千切れ白い肌にも無数の傷が刻まれていたが本人はそれほど重傷ではない様子であり静かな寝息を立てて眠っている。
一方の勇吾のほうが重傷に見える。左手は出血し数箇所の骨折、肋骨にも何本かひびが入っている。額も切れており満身創痍に見えるが蚩尤の霊核が既に少しずつ回復させているので直ぐに歩けるようになるはずだが本人は一向に動こうとせず固まっている。
「勇吾君?おーい、勇吾君…ゆ・う・ご・く・ん!!!」
声を掛けてもピクリともしない勇吾に終いには耳の直ぐ脇で大声で声を掛けた月子。
「なっなんだ!つっ月子!?えっんなんでお前ココに?試合はどうしたんだ?」
月子の声に我に帰った勇吾だが自身の置かれている状況混乱し要領を得ない。しかも顔をなぜか赤らめ挙動不審である。
「何言ってるの?うち達が勝ったんだよ。それと、この状況はどう言う事かな?なんでかな?うちの目にはほぼ裸のその人を勇吾君が抱きしめている様に見えるんだけど?」
柾陰との戦いで心身ともに疲れているはずの月子だったがそれ以上に湧き上がる怒りが気力を漲らせ先ほど以上の氣が拳に宿っている様に見受けられる。
「ばっ馬鹿変な勘違いすんじゃねぇよ!試合の結果がこう言う状態な訳でちぃ姉も気絶してるから支えないといけねぇし
やましい事など一つも無いからな!ホント無いからな!」
「なんか妙に必死な感じだよね。本当に何にも無いならうちの目を見て言えるよね。」
月子は勇吾の顔をじっと見つめ鼻先が触れそうに為るまで顔を近づけると勇吾がふいっと目を逸らす。いつもならココまで顔を近づけると月子の方が顔を赤らめて視線を外すか飛び退くものだが今に限って勇吾が赤面し視線を外す。
「目、逸れてるけど…」
「か、顔が近いからビックリしただけさ…」
「あやしい…何かあったでしょ?」
「なっ、何にも無い何にも無いって!ああっそうだちい姉を医務室に運んでもらわないと!」
月子から後ずさりながら距離を取りつつ既に試合会場入っていている会場スタッフを見つけ手を振る勇吾。明らかに試合前と違った勇吾の様子を見て月子の女の勘がパトカーのサイレン並に警報を鳴らしている。これは断固追求して吐かせねばならない、別件逮捕の後に強引な取調べも辞さないほど勇吾の挙動不審さは黒であると月子は思っていた。
「ちょっと勇吾君お話があります。」
かなり強めの圧力を醸し出しつつ勇吾に迫る月子。
「そうだ月子、お前の礼装ボロボロじゃないか早く着替えて来いよ、ああでも俺の方が着替えるの早いから先に言って着替えるからゆっくり着替えろ、じゃ、先行ってるぞ!」
千草を医療スタッフに任せた勇吾はそそくさと会場から逃げ出していく。しかもクラウチングスタイルからの全力疾走でその場から逃走した。あまりにも唐突かつ必死な逃走に月子も唖然としながら見送ってしまったが直ぐに追いつこうと走り出すが既に後姿が見えない程の距離だった。
「ああっもう!!」
鈍い地響きがした、月子の八つ当たりの震脚で会場が揺れたようだ。
一方会場のスタッフや廊下にいた他の生徒の目も気にする事無く全力疾走のまま控え室に駆け込む勇吾。息を荒げながら自分の制服が掛けてあるロッカーの前で息を整えながら着替えようとするがその思いとは裏腹に遅々として着替えが終わらない。普段なら一分ほどで着替えられる制服が妙に重く感じボタンを留めるのが難しい。今彼の脳内での思考比率は千草との試合中に起きたあの出来事でほぼ占領されているからだろう。
「あれどういう事なんだろう?っかどういう意味なんだ?俺しちゃったっうかされちゃったと言うか何だよ!もう!モヤモヤするしなんか月子の顔も見れねぇし!はぁぁぁぁぁ…」
控え室で独り悶々とし頭を抱える勇吾。いくら彼が朴念仁で超鈍感であろうともあそこまで直接的な好意を示されれば嫌が負うにも意識してしまう。彼自身生涯で始めてのキスを経験してしまい普段なら気にもしない月子との距離さえ意識するほどに動揺している。
「よーし、一旦落ち着け俺。呼吸を整えろ、平常心、平常心
…よし…ならねぇ!!」
独りバタバタと床を転げ回るほど混乱している所にドアのノック音が聞える。
「勇吾君…居るの解ってますよ。着替え終わってますよね?入ります。」
敬語モードの月子がドアの前に立っている、ドア越しでも分かるほどの圧力が勇吾に圧し掛かるが恐怖を差し引いても今は逃げる事を優先したいと考えていた。ここで逃げても帰った後自室で更に手酷い尋問が待っていると理解しつつも今は気まずい気持ちで月子の顔をまともに見れない。
「いい加減返事ぐらいしなさい!怒りますよ!」
壊れるのではないかと言う位の勢いでドアを開ける月子に対し内心もう怒ってるじゃんっとツッコミを入れていた勇吾だがそれと同時に残っていた符を急遽別の術式に書き換えて発動させる。「発煙!」術式が発動し部屋の中は煙で充満させると勇吾はわざと音を立てて動く素振りをする。
「こんな目晦ましまで使って…これは尋問だけじゃ済まないですよ。はぁぁぁ、はっ!」
月子は力を溜めて拳を振りぬくと物凄い拳圧で煙が晴れて行く。部屋中の煙は霧散するがそこには勇吾の姿が見当たらなかった。しかし月子も見逃さなかった、部屋の一番奥のロッカーから制服の一部がはみ出ているのを目敏く見つける。
「煙に乗じて部屋から脱出と見せかけて部屋に隠れてうちをやり過ごそうって策かな?そう言う賢い策の勇吾君は嫌いじゃないけど今のうちには逆効果かな!」
ゆっくりとロッカーに歩みを進めロッカーの前に立つとにこやかな表情とは裏腹にその目は笑っていない。振りかぶった拳が鉄製の戸を打ち抜いた。
「ゆ~ご~くん、あれ?うそ!居ない!」
自ら空けた拳大の穴を怖い笑顔で覗き込むがその中には勇吾の姿は無かった。
その時、控え室のドアが勢い良く閉まる。
「悪い月子、今は一人にさせてくれぇぇぇ!!」
種明かしは簡単で符術を使い煙を充満させると同時にいかにも動きましたと月子にわざと察知させ実はもう一枚の符で穏行の術式を使い息を潜め姿を隠して月子がロッカーに向かうのを見計らい部屋の外に逃げる事に成功した。実は月子が見た征服は勇吾が着忘れていた上着がたまたまはみ出していただけで月子の早とちりも成功に繋がる要因だった。
そんなこんなで何とか脱出に成功した勇吾は脱兎の如く逃げる。「百盾壁!」あろう事か六甲兵装術で盾のバリケードまで作る念の要り様・・・
もう彼自身何故月子から逃げるのか分からなくなっていた。
返す返す言うのも酷だが朴念仁であり女性の機微に鈍感な彼は女性を女性と意識する事が無かった。強過ぎる姉と強い姉弟子に対して異性として見るより尊敬と畏怖が刷り込まれてしまった事もある事と学園に入学してからは優秀な生徒である事を目標とし特技武官になってからは礼司の七光と言われない様にと更に自己鍛錬を磨き続けた結果、文武両道を絵に書いたような誰もが羨望の眼差しで見つめる存在になっていたがその反面学園生活の殆どを学業と自己鍛錬に費やし青春のせの字も無い不毛な学生生活を送ってしまった。勿論学業、実技も優秀で黙っていれば2枚目な勇吾にはそれ相応に女生徒達からのアプローチは有ったが何度も言うがこの男朴念仁であり鈍感である、故に悉く少女達の好意をスルーし今に至ってしまった。
そんな彼だが千草の弩直球かつ弩級の好意を受けてしまい対処方法が分からない。術者としては一流な彼だがこと女性への経験値は小学生並の彼がいきなりの告白とキスを経験してしまい彼の脳内キャパシティはいっぱいいっぱいであり急激に異性を意識してしまっている。遅れてきた思春期状態だ、めんどくせぇ!!更に今まで無頓着に月子に接してきたことを急速に省み始め言い様の無い羞恥に苛まれている。もう何がなんだか分からないから走る事を止められないと言った状況でもある。
勇吾が走り始めた直後後方から破壊音が響き渡るのが聞えた。勿論月子がドアを破壊して廊下側に出て来た音であり数々の攻撃を耐えてきた勇吾自慢の術式を容易く破壊した音でもある。「ひつ!」音と共に伝わる怒気が勇吾の体を強張らせ短い悲鳴すら口から洩れる。本能で分かる逃げないと今逃げないと命がヤバイ!!しかし恐怖が一瞬の躊躇を生み怒りの権化と化した月子から逃げる為に一歩目が遅れてしまった。一瞬、風が吹きぬけた。獲物を狩る虎が勇吾の目の前にいた、それも彼が創り出した盾を片手に…その盾は勇吾の頭部めがけ振りぬかれた。
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