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寂しい 5月14日①
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翌朝、杏梨はベットで目覚めた。
パンツ以外の服は身につけていなかったが、布団やブランケットが重ねてかけてあり、寒くはなかった。
ベットのにはそうたはいなかった。
帰っちゃった…?
服を着てリビングへ行くと、ソファーでそうたが寝ていた。
毛布も何もかけておらず、そうたは寒そうだった。やや苦悶の表情を浮かべながら寝息をたてている。杏梨はブランケットを取りに行って、そっとそうたの上にかけた。
「…?」
眠りが浅かったのか、ブランケットをかけてすぐ、そうたは目を覚ました。
「そうた、ごめんね。起こしちゃった」
「いや、大丈夫だよ」
ソファーから身を起こすそうたは、少しだるそうだった。
「ソファー寒かったんじゃない?ごめんね。ベットで寝てくれて良かったのに…」
杏梨は目覚めたときに、隣に人がいなかった寂しさを思い出した。
「いや…それは俺のじゃないから」
そうたは困ったように苦笑した。
時刻はもう10時半過ぎだった。
温かいコーヒーを入れて、そうたと飲む。
向かいに座るそうたの顔をみていると、必然と昨夜自分がそうたにどんな風に慰められたか思い出された。
完全にそうたを金田扱いして、泣きながら甘えてしまった。思い出すだけで顔から火が吹き出そうだった。
「そうた…あの昨日ごめんね。私そうたを…金田さんに…」
杏梨が気まずそうに切り出すと、そうたは杏梨の言葉に被せるように言いきった。
「いいんだよ。俺もだから。」
そうたはそのままコーヒーを一口飲む。
「杏梨ちゃんは癒された?」
そうたは少し意地悪な顔で杏梨に問いかけた。
「えっ…うん、もちろん」
そうたはどんな自分のことを好きだと何度も言ってくれたし、とても優しく触れてくれた。
気持ち良かったし、あのときは満たされた。
それは間違いない。
「寂しくなくなった?」
その問いかけには杏梨はすぐに返事できなかった。
確かにこうしてそうたがいてくれるときは気が紛れる。
しかし、そうたがいなくなった後は空しさが残る。
なにより、昨夜は考える暇もなかったが、金田がそうたのことを容認しているばかりかセックスを推奨している事実が杏梨の心に悲しく重く、のし掛かっていた。
「うん、そうたがいてくれるから寂しくないよ」
杏梨は嘘をついた。
そうたがこんなに尽くしてくれているのに、寂しいなんて言えなかった。
そうたは杏梨の本音を見抜いているようだったが、それについては何も言わなかった。
「金田さんの気持ち、伝わった?」
そうたの問いに杏梨は、その意味がわからなかった。
金田からは連絡が来ていないし、金田がしたことといえばそうたに杏梨の事を任せたくらいだ。
「金田さんからは何も連絡きてないよ?
そうたに私を任せる位、嫉妬もしないし、どうでもいいんじゃないかな。」
杏梨の言葉にそうたはため息をついた。
「どうでも良かったら、そんなことしないんじゃないかな?」
少し諭すように杏梨に言葉をかける。
「他の男に自分の彼女抱かせるようにするなんて、どうでも良いとしか思えないよ。」
杏梨には金田の気持ちが自分に向いているとはとても思えなかった。
「杏梨はそうとしか思えないの?」
そうたが悲しそうに問いかける。
「それ以外に何て思えばいいの?」
今の杏梨には悲しみでその答えしか見えず、それしか言えなかった。
そうたは再度ゆっくりと息を吐き、少し声のトーンを落とした。
杏梨にというより、そうた自身を落ち着かせているような声だった。
「金田さんが今まで杏梨にしたこと、言ったことちゃんと思い出して?
俺が昨日、金田さんの気持ちになって言ったことちゃんと思い出して?
そしたら、きっと寂しくない。もし、それでも寂しいならもう俺にはどうにもできない。」
杏梨は何も言えなかった。
金田が自分にしたこと?金田は仕事ばかりで構ってくれない
私に言ったこと?金田は私の事を好きとも何とも言わない。
そうたが金田になって言ったこと?そうたは優しかったし、欲しい答えをくれた。泣いていて夢中でもやもやして思い出せない。それは何だっだったか…。
彼氏が相手してくれないのに寂しいと思っちゃいけないの?
好きな人に他の男に抱いてもらうようにされて悲しいと思っちゃいけないの?
杏梨が呆然としているのを見て、そうたは今日は用事があると言って帰ろうとした。
杏梨はそうたに申し訳なくて、1人になりたくなくてそうたを引きとめた。そして、彼の好きなオムライスを作った。
優しかったそうたにまで見捨てられる。ご飯を食べたらきっといつものように美味しいと言ってくれる。笑顔を見せてくれる。そう思った。
しかし、どこか上の空のそうたは、杏梨がじっと見つめて待っているのに気がつくまで美味しいとは言わなかった。
そして、食べ終わると足早に去っていった。
杏梨はそれが悲しくて、別れ際に「また連絡する」とそうたに伝えた。
パンツ以外の服は身につけていなかったが、布団やブランケットが重ねてかけてあり、寒くはなかった。
ベットのにはそうたはいなかった。
帰っちゃった…?
服を着てリビングへ行くと、ソファーでそうたが寝ていた。
毛布も何もかけておらず、そうたは寒そうだった。やや苦悶の表情を浮かべながら寝息をたてている。杏梨はブランケットを取りに行って、そっとそうたの上にかけた。
「…?」
眠りが浅かったのか、ブランケットをかけてすぐ、そうたは目を覚ました。
「そうた、ごめんね。起こしちゃった」
「いや、大丈夫だよ」
ソファーから身を起こすそうたは、少しだるそうだった。
「ソファー寒かったんじゃない?ごめんね。ベットで寝てくれて良かったのに…」
杏梨は目覚めたときに、隣に人がいなかった寂しさを思い出した。
「いや…それは俺のじゃないから」
そうたは困ったように苦笑した。
時刻はもう10時半過ぎだった。
温かいコーヒーを入れて、そうたと飲む。
向かいに座るそうたの顔をみていると、必然と昨夜自分がそうたにどんな風に慰められたか思い出された。
完全にそうたを金田扱いして、泣きながら甘えてしまった。思い出すだけで顔から火が吹き出そうだった。
「そうた…あの昨日ごめんね。私そうたを…金田さんに…」
杏梨が気まずそうに切り出すと、そうたは杏梨の言葉に被せるように言いきった。
「いいんだよ。俺もだから。」
そうたはそのままコーヒーを一口飲む。
「杏梨ちゃんは癒された?」
そうたは少し意地悪な顔で杏梨に問いかけた。
「えっ…うん、もちろん」
そうたはどんな自分のことを好きだと何度も言ってくれたし、とても優しく触れてくれた。
気持ち良かったし、あのときは満たされた。
それは間違いない。
「寂しくなくなった?」
その問いかけには杏梨はすぐに返事できなかった。
確かにこうしてそうたがいてくれるときは気が紛れる。
しかし、そうたがいなくなった後は空しさが残る。
なにより、昨夜は考える暇もなかったが、金田がそうたのことを容認しているばかりかセックスを推奨している事実が杏梨の心に悲しく重く、のし掛かっていた。
「うん、そうたがいてくれるから寂しくないよ」
杏梨は嘘をついた。
そうたがこんなに尽くしてくれているのに、寂しいなんて言えなかった。
そうたは杏梨の本音を見抜いているようだったが、それについては何も言わなかった。
「金田さんの気持ち、伝わった?」
そうたの問いに杏梨は、その意味がわからなかった。
金田からは連絡が来ていないし、金田がしたことといえばそうたに杏梨の事を任せたくらいだ。
「金田さんからは何も連絡きてないよ?
そうたに私を任せる位、嫉妬もしないし、どうでもいいんじゃないかな。」
杏梨の言葉にそうたはため息をついた。
「どうでも良かったら、そんなことしないんじゃないかな?」
少し諭すように杏梨に言葉をかける。
「他の男に自分の彼女抱かせるようにするなんて、どうでも良いとしか思えないよ。」
杏梨には金田の気持ちが自分に向いているとはとても思えなかった。
「杏梨はそうとしか思えないの?」
そうたが悲しそうに問いかける。
「それ以外に何て思えばいいの?」
今の杏梨には悲しみでその答えしか見えず、それしか言えなかった。
そうたは再度ゆっくりと息を吐き、少し声のトーンを落とした。
杏梨にというより、そうた自身を落ち着かせているような声だった。
「金田さんが今まで杏梨にしたこと、言ったことちゃんと思い出して?
俺が昨日、金田さんの気持ちになって言ったことちゃんと思い出して?
そしたら、きっと寂しくない。もし、それでも寂しいならもう俺にはどうにもできない。」
杏梨は何も言えなかった。
金田が自分にしたこと?金田は仕事ばかりで構ってくれない
私に言ったこと?金田は私の事を好きとも何とも言わない。
そうたが金田になって言ったこと?そうたは優しかったし、欲しい答えをくれた。泣いていて夢中でもやもやして思い出せない。それは何だっだったか…。
彼氏が相手してくれないのに寂しいと思っちゃいけないの?
好きな人に他の男に抱いてもらうようにされて悲しいと思っちゃいけないの?
杏梨が呆然としているのを見て、そうたは今日は用事があると言って帰ろうとした。
杏梨はそうたに申し訳なくて、1人になりたくなくてそうたを引きとめた。そして、彼の好きなオムライスを作った。
優しかったそうたにまで見捨てられる。ご飯を食べたらきっといつものように美味しいと言ってくれる。笑顔を見せてくれる。そう思った。
しかし、どこか上の空のそうたは、杏梨がじっと見つめて待っているのに気がつくまで美味しいとは言わなかった。
そして、食べ終わると足早に去っていった。
杏梨はそれが悲しくて、別れ際に「また連絡する」とそうたに伝えた。
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