魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

文字の大きさ
57 / 262
3章 冒険の始まりと動き出す王国

57 地図とチーズ

しおりを挟む
 フェイメル村から一時間ほど歩いた場所にフェイステラ渓谷はある。
 瘴気が漂う場所なので、渓谷内に人の住居は無い。
 そういった場所に抵抗力の無い人間が長くいると体力が奪われ、下手をすると衰弱死する。
 瘴気は人間に害悪をなすが、逆に人間が利用するための魔晶石を生み出すものでもある。
 野生動物を魔物化させたりもするけれど。
 フェイステラ渓谷には瘴気を吸収しやすい石が多いので、魔晶石を採掘するには打って付けの場所となっている。

 こういう場所を探索する冒険者には、瘴気に対する抵抗力が要求される。
 抵抗力が無い者は、冒険途中であっという間にリタイアすることになる。
 魔術師の場合は元々瘴気に対する高い抵抗力を持っている。
 それ以外の人間は定期的に瘴気に触れて耐性を付けるしか無い。
 僕の場合はそもそも魔族なので、全く問題無しどころか調子が良くなるぐらいだ。 
 エランやエリッタは経験者だけあって、渓谷の瘴気の濃度なら数日過ごしても大丈夫だということだ。

 僕達はフェイメル村に一泊した。
 酪農が中心の村だ。
 牛の数は数えるのを諦めるほどいた。
 バターやチーズの生産では王国でもトップクラスだ。
 街で食べたものの中に、この村で生産されたものがあるのかもしれない。

 この村の近くには魔物が出る危険地帯がある。
 しかし村までやってきたことは今のところ無いという。
 一応の棲み分けは出来ているようだ。

 宿泊のついでに情報収集を行った。
 特に注意するべきは魔物の動向だ。
 事前に集められる情報をきちんと集めることによって、危険を最小限にすることが出来るのだ。
 村にある酒場で他の冒険者達から話を聞いた。
 もちろん僕はノンアルコールの果実ジュースを頼んだよ。
 それから特産のチーズが美味しかった。

 話を戻そう。
 そもそもフェイステラ渓谷にはそれほど強い魔物は住んでいない。
 しかし集団で襲ってくる昆虫系の魔物の巣が所々にあり、気をつけなければいけないポイントになっている。
 うっかりテリトリーに踏み込んでしまうと、攻撃を受けることになる。

 彼らの話によると、半年ぐらい前から魔物達の動向が変わったとのことだった。
 昆虫系の魔物は、魔晶石が採掘されるポイントから離れるように巣の場所が移動しているという。
 冒険者にとってはありがたい事なのだけれど、やはり不気味と言えば不気味だ。

 さらに不気味なのは、渓谷の川に住んでいる亀の魔物だ。
 クルタトルという種類で、こちらから手を出さない限り襲ってこない比較的大人しい魔物だ。
 体長は1メートル前後の個体が多く、怒らせるとすごい勢いで突進してくる。
 甲羅だけで無く皮膚も硬いため、倒すのは容易ではない。
 その亀の魔物は百匹前後はいたはずなのに、一年ほど前から忽然と姿を消したらしい。

 その他には、怪しいローブの男が目撃されているという証言もあった。
 何が怪しいかというと、右腕からニョロニョロと植物のような物を生やしているというのだ。
 正体を確かめようとした冒険者もいたけれど、すぐに逃げられてしまい分からず仕舞いだ。 
 しかし誰も実害を受けていないので、もし出会っても関わらずに済ませれば問題ないと言うことだ。

 情報を得た僕達はフェイステラ渓谷に出発した。
 魔晶石を採掘する冒険者が多いので、分かりやすい道が出来ている。
 渓谷にはいくつかの洞窟があり、瘴気の濃度が濃くなっている場所がある。
 そういった場所を探すと純度の高い魔晶石が手に入るのだ。
 瘴気がある限り魔晶石は周期的に生成されるので、枯渇することは無い。

 渓谷の入り口まで到達した。
 僕達は村で購入した地図を広げる。
 魔晶石が採れる洞窟の位置を記した物だ。
 村人は冒険者相手に上手く商売をしている。
 まずは手近なところから回ってみることにした。

 そして最初の洞窟に到達した。
 洞窟の中は真っ暗闇かと思ったら、内部が微妙に光を放っている。
 瘴気と岩が反応して出る光のようだ。
 僕のように暗視能力の無い人間にとっては、かなりありがたいだろう。

「多少は見えるみたいですね。」

「ああ、だがこれだけだと心許ない。
 明かりは必要だ。」

 そう言うとエランがランタンを取り出そうとした。

「これを使ってください。
 こちらの方が取り回しが楽です。」

 僕は腰に下げていた自作の白熱電球ランプを渡した。

「これは・・・魔道具か?
 ずいぶん高額(たか)そうな物を持ってきたな。」

「いえ、魔力は使っていません。
 僕の自作の品です。」

 エランは使い方を確認した。

「ほお、面白いな。
 使わせてもらおう。」

 準備は万端だ。





 村は酪農無双だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...