魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

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3章 冒険の始まりと動き出す王国

58 ベアーだべあ

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 洞窟に入る前に一つやっておくことがある。

「洞窟に入る前に魔力感知をしてみます。
 特に反応が無かったら別の場所を探しましょう。」

「へえ、そんなことも出来るんだ。
 で、どうなの?」

 エリッタが結論を聞いてくる。

「ちょっと待ってください。
 集中しないといけないので。」

 さすがにそんなにすぐには無理だ。
 僕は洞窟の中に向けて魔力感知を発動させる。
 修行でやっていたときと違いノイズが多い。
 至る所で細かい魔力の反応がある。
 その中で密度の大きい物を探す。

「ありました。
 数は少なそうですが。
 とりあえず行ってみましょう。」

 僕達は洞窟の奥へ進んだ。
 この洞窟はそれほど大きくは無い。
 しばらく進んでいくと、感知に反応があった場所に達した。
 その周囲を探してみると、ピー玉程度の大きさの魔晶石が3つ見つかった。

 僕は魔晶石の魔力を測ってみる。

「高純度かどうか微妙なラインですね。」

 残念ながらそれほど上質では無かった。

「だが、魔力感知のおかげで簡単に見つかったな。
 この調子で次へいこう。」

「楽ちんだね。」

 魔力感知が無いと、魔晶石を探す作業はなかなか大変なのだという。
 師匠に感謝しておこう。

 地図に書いてある次の洞窟を目指す途中に巨大な熊を見つけた。
 大きさは3メートルほどある。

「あいつはグラベアだ。
 熊が瘴気で巨大化した魔物だ。
 出来ればやり過ごしたいところなんだが。」

 僕達はいったん茂みに隠れる。
 グラベアは僕達の気配を感じたのか、ひたすら臭いをかぎ回っている。
 そして少しずつこちらに近づいてきている。

「これはやっちまった方が早いね。」

 エリッタが鉄串を構える。

「ああ、やるか。
 俺が出る、準備は良いか?」

 エランは大剣に手をかけた。

「大丈夫です。」

 僕が応じる。

「オッケー、いつでも良いよ。」

 エリッタは横方向へ移動した。
 エランが大剣を抜きグラベアの方へ進む。
 僕は火炎球の魔術構成を編み始めた。

 グラベアはエランに気がつき突進する。
 エランは大剣で牽制しつつ、少し距離をとる。
 突進に失敗したグラベアは立ち上がり腕を上げた。
 エランに爪を振り下ろす・・・。

「グギィィ」

 グラベアが痛みで叫び声を上げた。
 爪を振り下ろしきる前にグラベアの肩に、エリッタの鉄串が突き刺さったのだ。
 間を置かず次の瞬間、グラベアの足の付け根に大剣が振るわれた。
 グラベアは体勢を崩した。
 エランはそのまま後ろへ回り込み距離をとる。

 僕は火炎球の魔法を放つ、そしてグラベアに吸い込まれるように接触した。
 プシュッという若干情けない音がして、グラベアが炎に包まれる。
 爆裂型では無いのでエフェクトがイマイチだ。
 僕は次の魔術構成に入る。

 グラベアは炎に包まれ、その場で暴れ出した。
 後ろに回り込んでいたエランが背中に大剣を打ち込む。
 グラベアの腹に大剣が生えた。
 そこにエリッタの鉄串が打ち込まれていく。

 エランがグラベアに足をかけ、大剣を思いっきり引き抜き距離をとる。
 血を吹き出すグラベア。
 それから少し時間をかけたが、僕が爆撃球を打ち込む。
 爆撃球は火炎球より威力が高いのだけれど、そのぶん魔術回路を編むのに時間がかかる。
 爆撃球はグラベアの頭に命中し、大きな爆発音が発生した。
 頭の肉片が周囲に飛び散る。
 ちょっとしたスプラッターだ。

 グラベアは倒れた。
 少しの間だけ痙攣を起こしていたが、今は完全に動かない。

「やったな。
 オキス、初陣にしては見事なタイミングだった。」

 エランがグラベアの状態を確認しつつ言う。

「けっこう緊張しましたよ。」

 緊張のせいだろう、喉がからからになっている。

「アタイの出番がもう少しあるかと思ったのに、アッサリだったね。」

 エリッタはいつも通りな感じで平然としていた。
 そういう気質なのか、経験によるものなのか。
 鉄串がなかなか抜けないのか、うんうんうなりながら回収していたけれど。

「グラベアがいるという話は村では言っていなかったな。
 注意していくぞ。」

 エランが注意を促す。
 僕達は他の魔物がいないか警戒し、少し休憩を取ってから次の洞窟へ向かうことにした。





 パーティー無双だった。
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