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6章 魔王の息子と最後の無双
176 棺に収まった後の引き継ぎ
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僕は風の魔法を放った。
魔法はアリスを吹き飛ばした。
アリスがいたはずの場所へカシムの一撃が炸裂する。
轟音とともに床に大穴が空く。
僕はもう限界だった。
致命傷こそ時間を巻き戻されて無かったことになったが、その前のダメージは残ったままだ。
出血が酷い。
さっき使った魔法も限界を超えて放ったのだ。
もう回復魔法を編む力は残っていない。
攻撃を受けるまでも無く、命が尽きるのは時間の問題だ。
目がかすれていく。
音も遠くなっていく。
まるで水中にいるような気分だ。
アリスは無事だろうか?
みんなも無事に逃げて欲しい。
だれも死なずに・・・僕と会うのはしばらく先でいい。
また失敗した。
今回の失敗は今までで最大級なのだろう。
中途半端な覚悟、いつも通り何とかなるだろうという安易な気持ち。
そしてたった一人で十年待たされた彼女へ思慮の無さ。
僕の使命だった神との戦い。
その為の布石は遺跡街に残してある。
何とかなると信じよう。
時間が戻る気配は無い。
今度こそ僕は完全に死ぬ。
先代魔王アストレイア、僕の母はこんな間抜けな結末を予想していたのだろうか?
まさか僕を倒すのがよりにもよって・・・。
そう言えば前世では僕の判断ミスで彼女を死なせてしまったんだっけ。
今回死ぬのは僕だけだ。
そうだ、まだ謝っていなかった。
前世で死なせてしまってゴメン。
転生してからも会いに来るまで時間をかけてゴメン。
そしてまたひとりぼっちにさせてゴメン。
謝罪を声に出すことは出来ない。
意識が混濁してくる。
目の前には昔の彼女の顔と、氷の彫刻のような今の彼女の顔が交互に浮かび上がる。
残りの仕事は魔王グレバーンとクルセイダーズの件だ。
クルセイダーズを動かしている黒幕の件も積み残しになっている。
まあ、勇者ジキルがいるから何とかなるだろう。
毒の魔法を受けたのが心配だけど、勇者だからなんとかするはずだ。
『オキス、駄目ぇぇ。
諦めないで。』
シーリの声が響く。
もう周りの音は聞こえない。
それだけにシーリの声が頭の中に鮮明に響く。
思考能力が落ちて、その声に返事をすることも出来ない。
シーリが僕の彼女の人格の一部であることには最初から気が付いていた。
しかし前世で彼女を死なせてしまった負い目から、シーリに意識を向けるのを避け続けてきたのだ。
そうだ、シーリにも謝らないといけない。
本当にゴメン。
『私は楽しかったよ。
だから・・・後悔はしないよ。
私はいなくなるけど、代わりにアリスが力を貸してくれるから。
オキス、あ・がと・だ・す・だよ。』
シーリの声も遠くなる。
僕は思い出した。
魔王アストレイアとの契約を。
彼女を救う為の対価、そして魔王アストレイアが支払う対価。
アストレイアは自分と最愛の息子の命を対価としたのだ。
神を倒す手段として。
そして僕は彼女を救うために契約した。
神と戦うこと、そして魔王の息子として命を落とすことを了承したのだ。
その時アストレイアは、足りない分は後からもう一人に支払ってもらうと言っていた。
そう、全ては魔王アストレイアの描いた絵図の上にあった。
魔王の息子はここで死ぬ。
全ては神の使徒を出し抜く為に。
最初から決まっていたのだ。
引き継ぎは任せたよ、アリス。
魔王の息子はここで死ぬけれど、必ずまた会いに行くよ。
僕の無双はここで終わる。
魔法はアリスを吹き飛ばした。
アリスがいたはずの場所へカシムの一撃が炸裂する。
轟音とともに床に大穴が空く。
僕はもう限界だった。
致命傷こそ時間を巻き戻されて無かったことになったが、その前のダメージは残ったままだ。
出血が酷い。
さっき使った魔法も限界を超えて放ったのだ。
もう回復魔法を編む力は残っていない。
攻撃を受けるまでも無く、命が尽きるのは時間の問題だ。
目がかすれていく。
音も遠くなっていく。
まるで水中にいるような気分だ。
アリスは無事だろうか?
みんなも無事に逃げて欲しい。
だれも死なずに・・・僕と会うのはしばらく先でいい。
また失敗した。
今回の失敗は今までで最大級なのだろう。
中途半端な覚悟、いつも通り何とかなるだろうという安易な気持ち。
そしてたった一人で十年待たされた彼女へ思慮の無さ。
僕の使命だった神との戦い。
その為の布石は遺跡街に残してある。
何とかなると信じよう。
時間が戻る気配は無い。
今度こそ僕は完全に死ぬ。
先代魔王アストレイア、僕の母はこんな間抜けな結末を予想していたのだろうか?
まさか僕を倒すのがよりにもよって・・・。
そう言えば前世では僕の判断ミスで彼女を死なせてしまったんだっけ。
今回死ぬのは僕だけだ。
そうだ、まだ謝っていなかった。
前世で死なせてしまってゴメン。
転生してからも会いに来るまで時間をかけてゴメン。
そしてまたひとりぼっちにさせてゴメン。
謝罪を声に出すことは出来ない。
意識が混濁してくる。
目の前には昔の彼女の顔と、氷の彫刻のような今の彼女の顔が交互に浮かび上がる。
残りの仕事は魔王グレバーンとクルセイダーズの件だ。
クルセイダーズを動かしている黒幕の件も積み残しになっている。
まあ、勇者ジキルがいるから何とかなるだろう。
毒の魔法を受けたのが心配だけど、勇者だからなんとかするはずだ。
『オキス、駄目ぇぇ。
諦めないで。』
シーリの声が響く。
もう周りの音は聞こえない。
それだけにシーリの声が頭の中に鮮明に響く。
思考能力が落ちて、その声に返事をすることも出来ない。
シーリが僕の彼女の人格の一部であることには最初から気が付いていた。
しかし前世で彼女を死なせてしまった負い目から、シーリに意識を向けるのを避け続けてきたのだ。
そうだ、シーリにも謝らないといけない。
本当にゴメン。
『私は楽しかったよ。
だから・・・後悔はしないよ。
私はいなくなるけど、代わりにアリスが力を貸してくれるから。
オキス、あ・がと・だ・す・だよ。』
シーリの声も遠くなる。
僕は思い出した。
魔王アストレイアとの契約を。
彼女を救う為の対価、そして魔王アストレイアが支払う対価。
アストレイアは自分と最愛の息子の命を対価としたのだ。
神を倒す手段として。
そして僕は彼女を救うために契約した。
神と戦うこと、そして魔王の息子として命を落とすことを了承したのだ。
その時アストレイアは、足りない分は後からもう一人に支払ってもらうと言っていた。
そう、全ては魔王アストレイアの描いた絵図の上にあった。
魔王の息子はここで死ぬ。
全ては神の使徒を出し抜く為に。
最初から決まっていたのだ。
引き継ぎは任せたよ、アリス。
魔王の息子はここで死ぬけれど、必ずまた会いに行くよ。
僕の無双はここで終わる。
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