魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

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7章 次への引き継ぎと暗躍の者達

177 お疲れの彼にカレーを食べさせたい

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 私は動けなかった。
 心取り戻したからだ。
 彼が死んだことによって、彼の中にあったシーリが私の元へ戻ってきたのだ。

 なんとか動くことが出来るようになった私は、彼に治癒魔法をかけ続けた。
 単純な回復魔法では無い。
 最大級の治癒魔法だ。

「なんで、なんで目を覚まさないの。
 傷なんてもうどこにも無いのに。
 お願い、目を覚まして!
 私はもう大丈夫だから。」

 私はこの世界で十年しか生きていない。
 でも繰り返した時間を換算すれば百年を超えている。
 心が枯れるまで魔法の修練を続け、魔術回路の構築は意識すらせずに編むことが出来る。
 この程度の傷を塞ぐなんて造作も無いはずなのに・・・違う、傷は塞がっている。

 私はさらに治癒魔法を彼にかけ続けた。
 いっこうに動かない彼。
 心臓も止まったまま。

「なんで動かないの?」

 私は叫んだ。

 こんな世界に前世の記憶を持ったまま、ひとりぼっちで生まれてきた。
 救いだったのは、彼がこの世界にいることが感じ取れたから。
 私の一部が彼の所にあったから・・・繋がっていた。
 いつか必ず会える、その為だけに生きてきた。

 でも私は不安定な存在だった。
 心がバラバラになり、アリスという存在に残されたの心は、悲しみと寂しさ、そして憎しみ。
 それでも生きてこられたのは、彼に対する愛が残っていたから。
 それだけは失わずに来られたはずだった。

 彼に会うために力を付ける必要があった。
 時を戻すユニークスキル、永劫の回帰が使えるようになってからは、ひたすら魔法の修練に明け暮れた。
 だけどこれは諸刃の剣だった。
 永遠とも言える時が使える代わりに、心が疲弊して枯れていくのだ。
 そして枯れた心は凍っていった。
 私はそれすらも、魔法の修練に没頭できるようになって良かったとすら考えていた。

 シーリと名付けられた私の一部。
 そこから彼と繋がっている。
 でもそれは凍った心に憎しみを宿す結果となった。
 それがどんどん膨れあがって、自分では制御できない怪物に変わった。

 そして彼と再会した。
 昔と顔は全然変わっていたけれど、私を見て吹き出した彼の笑顔は同じだった。
 私は自分を抑えられなかった。
 そして彼を・・・殺してしまった。
 彼は最後まで私を救おうとしてくれていたのに。

 彼を殺した瞬間、私の心が戻ってきた。
 シーリが私と一つになった。
 よりによってこのタイミングで爆発する感情。
 私は引き裂かれそうな心の爆発を抑え付け、彼の傷を治癒した。

 完璧に治癒したはずなのに、やはり彼は目を覚まさなかった。
 時間を戻した。
 そして最大級の治癒魔法をかけた。
 それでも駄目だった。

 魂がここに無いのだ。
 あるのは空っぽの体だけ。

 それでも私は魔法を使い続ける。
 彼が生き返るのなら、私の魔力が空っぽになっても構わない。
 その時、私の肩に手がかかった。

「アリス、もういいよ。
 十分だ。
 オキスは・・・君を守れたんだ。」

 勇者ジキルだ。
 私の猛毒の魔法で命を削り取ったはずなのに、少しだけ疲弊した顔をしているけれど十分に動けている。
 さすが勇者という化け物だ。

 私は動かなくなったオキスと呼ばれていた彼に抱きついた。
 体温が少し残っていた。
 私はもう、泣くことしか出来なかった。







 無双なんて幻影なのに。
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