魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

文字の大きさ
188 / 262
7章 次への引き継ぎと暗躍の者達

189 無双の無能魔王

しおりを挟む
 あれから三ヶ月、日程の調整がようやく終わり、私は少数の部下を連れて帝国へ向かった。
 出来ればサブオーレンを連れて行きたかったのだけど、魔領を長期に留守にしようものなら内政が回らなくなる。
 今だ魔領は慌ただしい状況が続いているのだ。
 そして私はいなくなっても大して問題が無いらしい。
 いっそ無双ならぬ無能魔王を名乗るべきなのだろうか。

 四天王ももちろん領内の仕事があるので連れて行けない。
 結局、私の直属の部下であるヴェネスと、そして少し前まで帝国にいたタレンティを伴っている。
 タレンティは私を無限の悪夢とも言えるあの状況から救うため、彼を連れてくるあの時まで奔走してくれていた。
 結果として敵対する帝国で働くことになっていた。

 そしてずっと私の側にいたヴェネス。
 ヴェネスとタレンティは血は繋がっていないが、昔は姉妹のように仲が良かった。
 しかしある時タレンティがギスケに敗れ、ギスケの元に降ってからは、ヴェネスは彼女を裏切り者だと軽蔑するようになったのだ。
 今は昔の通りと行かないまでも、ぎごちなく話をする程度にはなっている。
 二人は私が生まれたときから私を守るため、ずっと側にいたのだ。

 その他、魔族のトップレベルの護衛が付いている。
 サブオーレンが戦闘能力については自分を遙かに超えると言っていた人物も含まれている。
 見た目がナンパ師のような男で、名前をギルティーンを言う。
 実力を測るため試しに魔法を撃ち込んでみたら、その魔法を薔薇に変えて差し出してきた。
 なんだかよく分からないけれど、たぶん強いのだろう。

 私達は飛龍で帝国首都トレンテに到着した。
 途中の砦ででも良かったのだけれど、皇帝エスフェリアが魔王陛下と会談するのには整った場所にするべきだという指示を出したようだ。
 ルディンの話によると、砦だと私に対する警備が滞る可能性を考慮したのだろうということらしい。
 帝国には魔王に恨みを持つ人間に事欠かないからだ。

 そして私達を出迎えるために、国務大臣が足を運んできていた。
 帝国ではナンバースリーの人物だ。
 一番は当然皇帝エスフェリア、二番は摂政的な立場にある魔神ギスケだ。

 周囲を帝国の将軍達と精鋭部隊が固めている。
 さらにそれを挟むように町民が群がっている。
 困ったことに誰も笑っていない。
 私も笑えないから人のことは言えないけれど、歓迎ムートとは言えない状況のようだ。
 石を手に持った町民が取り押さえられている姿すらあった。
 想像以上に恨まれている。

 私が石を持っていたその町民に目を向けると突然泡を吹いて気絶した。
 周りで悲鳴が上がる。
 黄色い悲鳴では無い、本気の悲鳴だ。
 精神魔法もなにもかけてないんだけど。
 どうすればいいのよ。

『なるほど、これはギスケの指示かな。』

 ルディンがそう言った。

「どういう意味?」

 何のことだか分からず、私はルディンに聞いた。

『警備のことを考えるなら、町の人には戒厳令を敷いて、外に出るのを禁止すれば良いはずなんだ。
 それをしなかったと言うことは、君にこの状況を見せたかったからなんだろう。』

「直接言えばいいのに、回りくどいことをするのね。」

『言うよりも、この方が実感できるはずだよ。』

 私はこれからの交渉に前途多難さを感じつつも、エスフェリアとの対面を果たしたのだった。








 本気の悲鳴無双だった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

処理中です...