能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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一章 チュートリアルな第一層

7 先立つものが無いので、先立つ不孝をお許しください

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 とにかく物価が高い。今の所持金6万2000シュネでは、装備品を満足に買いそろえることも出来ない。冒険者は金がかかる。さらに宿代も馬鹿にならない。そういえば困ったことがあったら冒険者ギルドに相談するように言われていた。ということでギルドの受付で相談することにした。人との接触はコミュ障には辛い。相談の結果、月極の借家を紹介され、そこに住むことになった。月3万5000シュネ、前金。明日から入居できるらしい。残金は2万7000シュネになった。槍・・・買えないじゃん。

 街には他にも色々な施設がある。装備は整っていない。しかしそろそろダンジョンの空気を吸いたいところだ。僕は街の観光名所にもなっているダンジョンの入り口の前まで来た。旅行客が何組か来ており、それをガイドする人が何やら解説を入れている。そして装備を固めた冒険者が3組ほどダンジョンに入っていく。僕も後に続くようにダンジョンへ向かう。すると入り口を警備していた兵士が話しかけてきた。そこでギルドカードの提示を要求された。僕は自分のギルドカードを見せる。するとそれ以上は何も言われずに中に入ることが出来た。こんな格好でも警告の一つも無い。自己責任というやつか。
 
 今回はちょっと空気を吸うだけで、すぐ戻るつもりだった。ダンジョンは洞窟のようになっており、当然外より暗い。腰のランプを付けても、目が慣れるまでしばらくかかった。しばらく、きつめの下り坂が続く。そして開けた場所に出る。そこは・・・。
 
 人、人、人。人だらけだ。そこら中で露天があり、そこで買い物をしている冒険者がいる。僕は座って休んでいる冒険者に、これがどういう状態なのか勇気を出して聞いてみた。どうやらここは冒険者同士がダンジョンで手に入れたアイテムを売り買いする場所らしい。ダンジョンの外で商売をすると営業許可証が必要になり、さらに税金を支払わなければならない。ここではそれが免除されるのだ。脱法行為なのだけれど、領主はそれを見逃しているという。冒険者に対する便宜らしい。そしてもう一つ貴重な情報を教えてもらった。三層には冒険者村があるというのだ。いつか辿り着きたい場所だ。
 
 ここよりもさらに奥へ行くと、魔物がいる危険地帯となる。マップを確認すると、いくつかの経路に分かれている。ボス部屋を目指す経路が、一番人が多いようだ。まずはその周囲で魔物と戦って、戦闘経験を磨くのがセオリーらしい。僕は人が多いところは苦手なので、人気の無い経路を進む。武器は採取用ナイフしか無い。もし魔物と出くわしたら、全速力で逃げることにしよう。
 
 目が慣れてくると、洞窟自体が若干光を放っていることに気がついた。もしランプが消えてしまっても、ゆっくり歩けば何とか外に出られそうな明るさだ。第一層はチュートリアルダンジョンと呼ばれるほど、フロアボスを除けは緩い場所らしい。しかし間抜けな冒険者がいるらしく、月に何人かは第一層で死ぬようだ。さらにごくまれに強力なレアモンスターが出現することがあり、そういう場合は全速力で逃げろと言われている。経験の浅い僕は、何がレアモンスターなのだか、根本的に区別が付かない。
 
 キョロキョロと辺りを警戒しつつ奥へ進む。魔物は・・・いない。人がいないのは魔物が出ないからか?とりあえずダンジョンの空気を吸うという目的は達成した。今日のところは引き上げよう。そう思ったところで、地面に生えているものに気がつく。「うほ、キノコだ!」僕はなんだかよく分からないキノコを魔法の袋に放り込む。売り物になるかどうかは分からないけれど、ダメ元だ。収穫できたのは青いキノコばかりだが、一つだけ真っ白なのが混ざっていた。いくらになるかちょっと楽しみだけれど、第一層の初っぱなで手に入るキノコが高く売れるわけも無いだろう。
 
 僕が夢中でキノコを袋に詰めていると、ふとした気配に気がつく。視線を隣に移すと、耳の長い緑色の生き物が立っている。大きさは、薬局の前に置かれている謎のカエルと同じくらいだ。手には太めの棒のようなものを持っている。ええっと・・・コボルト?「うわぁぁぁ」僕は叫び声を上げた。
 
 その声に驚いたのだろうか?コボルトっぽい魔物は一目散に去って行く。どうやら事なきを得たようだ。僕は安心してキノコの採取を再開する。もう少しで全部袋に入れ終わる。そしてまた気配に気がつく。またかと思い振り返ると・・・やっぱりさっきと同じコボルトっぽい魔物だった。ただ一つ、さっきと違うことがある。それは数が10倍に増えたことだ。
 
 「うわぁぁ」再び叫ぶ。しかし今回は誰も逃げない。そのかわり僕が逃げた。とにかく全速力で走った。後ろから走ってくる音が聞こえる。どんどん呼吸が苦しくなっていく。全力疾走はそろそろ限界だ。そこへ迫り来る足音。僕はスタミナポーションの蓋を開け、一気に飲み干す。「ゴホ」焦りすぎて若干気管に入った。それでもポーションは効果を発揮する。ふっとさっきまでの息苦しさが緩和する。気管の違和感は無視して、再び全速力で走った。入り口付近の露天に戻ってきたときには、すでに後ろから続く気配は無くなっていた。なんとか逃げ切ったのだ。
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