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一章 チュートリアルな第一層

18 パタンと閉めるパターンだ

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 ボス部屋と控え室を何度も往復しながら撒菱を回収した。
「コボルトチーフよ、今回の所は見逃してやろう。首を洗って待っているがいい。はっはっはっは。」
 パタン。僕は半開きにした扉から叫ぶと、終わったところで閉めた。ボス部屋の控え室を出ると、そこは元の通路だった。僕と交代で別の冒険者が控え室へ入っていく。この辺りの空間の接合がどうなっているのかイマイチよく分からない。ダンジョンは神の至宝が作り出した物らしいから、深く考えても無駄だろう。そして僕は残った食料を食べ歩きながら街へと戻った。
 

5日目決算

項目              単価  個数
-----------          ------ ----
繰り越し            4万3700
オニオングラタンとパンと紅茶   -800 1
干し肉とパン           -2500 1
スライムの核            500 3
大ネズミの核            600 2
大ネズミのしっぽ         1200 1
-------------------------------------------
所持金             4万4430

 そして6日目に突入する。僕は食料と食材を購入して回った。そしてボス部屋を目指す。途中赤いスライムが僕の前に立ち塞がった。しかし投石二発で難なく仕留める。途中コボルトを数匹見かけたけれど、無視して通り過ぎた。無視したコボルトは別の冒険者が狩り始めたようだ。

 再びボス部屋行列の最後尾に並ぶ。今日は昨日よりも行列が短い。そして僕の番がやってくる。ついに第一層をクリアするときがやってきたのだ。控え室に入った僕は準備を整える。そして奥の扉を開けた。相変わらず「ギギギー」という音がする。ボスを倒したら油を差そうと思う。

 まずは挨拶の投石。いきなり顔面ヒット。顔を手で押さえてしゃがみ込むコボルトチーフ。さい先の良いスタートだ。しゃがみ込むのもほんの数秒、コボルトチーフは僕めがけて突撃してくる。僕は食材をばらまいた。瓶に入ったオリーブオイルだ。瓶は割れ、地面に油がまき散らされる。さらに撒菱を追加した。

 昨日同様チーフはステップで撒菱を躱す。そして・・・滑る。さらに・・・刺さる。「ぐひょぉ」という愉快な声を上げるチーフ。しかしソルトシール風コボルトチーフのオリーブオイルと撒菱サラダはまだ完成していない。僕はハバネロと胡椒をブレンドした調味料を詰めたカプセルを、チーフの顔面めがけて投擲する。ヒット。

 「オッパラピー」というなんだかよく分からない声が聞こえてきた。それが料理の感想なのだろうか?とりあえず転げ回ってマナーの悪いチーフを槍でつつく。一刺し二刺し。しかしチーフだけあって堅い。まだまだ致命傷には至りそうに無い。立ち上がるチーフ。チーフはまだまだ頑張れそうだ。

 僕は控え室へ後退する。そして扉を閉めた。「パタン」いつもの音だ。僕は10を数える。そして扉を開いた。元の位置へ戻ろうと、チーフがソロソロと歩いている。僕はそこへ投石する。再びこちらへ向けて走ってくるチーフ。そして・・・転ぶ。さらに・・・刺さる。

 僕は料理の味を引き立たせる為、香辛料を追加する。チーフが「フゴフゴ」言っているのが聞こえるけれど、意味はよく分からなかった。僕はチーフが立ち上がるまで槍を突き刺した。そして控え室へ後退する。「パタン」それがパターンだ。パターンハマった!

 それをさらに三回ほど繰り返したところでコボルトチーフは動かなくなった。楽勝、無傷、パーフェクトゲーム。大勝利だ。

 コボルトチーフから核を回収する。蒸気を上げて消えていくチーフ。ドロップは魔法石(小)×2。

 なんだか感慨深い物がある。そんな余韻に浸っていると、突然奥の方が光り出す。僕はその光に警戒しつつ、ゆっくりと近づいた。光が少しずつ消えていく。光の後に残ったのは、宝箱だった。

 僕は宝箱を開ける。無警戒に開けたのは、さすがにボス部屋の宝箱に罠は仕掛けないだろうという、根拠の無い推測だった。相変わらず、油を差したいと思わせる音を響かせる宝箱。中には・・・。

「指輪?」

 僕は大きな宝箱に小さく存在する指輪を拾い上げた。銀色をベースに灰色の模様が入っている指輪だ。おそらくマジックアイテムなのだろう。効果が分からないので装備はせずに仕舞っておくことにした。鑑定ってどこでしてもらえるんだろう?とりあえず魔法屋に持ち込んでみるかな。

 そんなことを考えていたとき、突然地震のような揺れが生じる。僕はビビった。前世は地震大国の住人ではあったけれど、ダンジョン内での地震はかなり怖い。天井が崩れたら一巻の終わりだ。僕は天井を見上げながら無事を祈った。そして揺れが収まる。助かった。

「あれ?」
 ボス部屋の中心に、さっきは無かったものが出現している。階段だ。螺旋状に続く階段。先がどうなっているのか、全く見通せない。これを降りたら第二層なのだろう。

 このまま降りてみたいという気持ちもあったけれど、恐らく第二層は魔物も強くなるはずだ。指輪の鑑定もあるし、いったん街へ戻った方が賢明だ。ということで僕は帰路についた。
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