能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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一章 チュートリアルな第一層

17 ミミックって耳食うのかな?

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 宝箱が「ギギギー」っという音を出して開く。この宝箱、油を差した方が良いのでは無いだろうか?とにかく宝箱は開く。鍵はかかっていなかったようだ。

 僕はバックステップし、非常事態に備える。1秒、また1秒と経過する。1分待った。警戒しすぎだろうか?こんな光景を他の冒険者に見られたら、また馬鹿にされるんだろうか?僕は恐る恐る中を覗いてみる。

 カラだ。やっぱり・・・そうだよね。落胆したその時「あっ」そう声に出た。何かある。僕はその何かを、身を乗り出して拾い上げる。宝箱が大きいので、どうしても半身を入れないと届かないのだ。もしこの宝箱がミミックだったら、パッコーンと閉まって、胴体と足にお別れすることになるかもしれない。そこでパーティーを組めばソロじゃなくなるなあ。恐怖心をごまかすため、そんな妄想を膨らませる。しかし妄想の選択を間違えて、ますます怖くなってしまった。

 僕は宝箱の中に一つだけ入っていた石を拾い上げた。大豆のような大きさの透き通る緑色の石だ。高く売れるかな?しばらくすると宝箱が蒸気のような物を発しながら消えていく。もしかして魔物と同じような扱い?なんだかよく分からないけれど、宝箱からお宝をゲットした。冒険者ギルドの講座で宝箱のことも教えておいて欲しかったな。無駄にビビってしまった。

 とにかく5日目の目的はボス部屋への到達だ。僕はボス部屋への道の迂回経路を進む。途中、昼食を済ませ、スライム1匹と大ネズミ2匹を倒し、ついにボス部屋の前までたどり着いた。第一層、チュートリアルダンジョンの最深部だ。そこには・・・行列があった。

 ボス部屋待ちの行列だ。扉の前に冒険者達が並び、最大4人が入って扉を閉める。すると、間を開けずに次の冒険者が入る。次に扉が開いたときには、前にいたはずの冒険者がいなくなっている。どういう仕組みなんだろう?

 冒険者ギルドの講座によると、ボス部屋からは離脱可能だという。もし戦ってみて駄目だと判断したら、無理をせず離脱するように言われている。ただし離脱して通路に戻ってくると、ボスは蓄積したダメージを完全回復するようだ。今回は偵察がミッションだ。様子を見たら離脱しよう。一つしか無い命、初見殺しだけは避けなければならない。

 僕はボス部屋行列の最後尾に並ぶ。少しずつ行列が先に進み、そして僕の後ろには新たな冒険者パーティーが並ぶ。ボス戦の連携の仕方などを話し合う前後の冒険者パーティ。ソロ活動中の僕にはいたたまれない。早く順番が回ってきて欲しい。

 そしてついに順番だ。僕は扉を開き中へ入る。後ろから「え?あいつ一人で行くの?」みたいな声が聞こえてきたけれど、キニシナイ、キニシナイ。

 中は小さな個室だった。ボス部屋までは二重扉になっている。次の扉を開いたところに第一層のボスがいる。入ってきた扉を閉めて、控えの個室は密室になった。深呼吸をする。そして奥の扉に手をかけた。扉を開く。

「ギギギー」っという音と共に扉が開く。このダンジョン、潤滑油が色々なところで必要だと思う。シリコンスプレーとか、あると便利だよね。

 中は体育館のような広さだ。そしてその中心には・・・コボルト。しかしただのコボルトでは無い。大きさが2メートル。持っている棒も、中国拳法映画に出てきそうな混だ。種別はコボルトチーフというところか。すごい素早そうなんだけど、離脱できるのかな?

 僕は投石の準備をする。接近したら勝てる気がしない。十分距離はある。僕はビビりながら控え室から投石した。素早そうなので当たる気がしない。しかし・・・初撃は見事命中。ただ問題は距離がありすぎて致命傷にはなっていないことだ。よく見ると、恐らく皮膚が剥けているのだろう、多少の出血がある。

 コボルトチーフは僕をロックオンしたようだ。僕に向かって駆け寄ってくる。僕は二撃目の投石を放つ。素早く避けるコボルトチーフ。さすがチーフ、それでも走る速度は緩まない。僕は撒菱をばらまく。チーフはそれに気づき、すんでの所で速度を緩め、撒菱をステップで躱しながら近づいてくる。そこを狙って投石を行う。チーフは不安定な体勢の中、それを躱す。すでに僕との距離は目前となった。

 僕は・・・扉を閉めた。閉めるときは何故かパタンとあっさり閉まる。どういう構造なんだ、この扉?槍を握りながら乱入に備える。緊張で汗が滴る。10秒、20秒・・・来ない。

 ホラー映画だと安心したところで、後ろから出てきたりするんだけど、もちろん後ろにもいない。念のため確認してしまうところがビビりたる所以(ゆえん)か。

 どうやら扉を閉めると、中には入ってこないらしい。まあ、普通はこんな所から攻撃する冒険者はいないよね。

 さあ、どうしよう。どう考えても現時点で勝てる相手ではない。そうなると帰るしか無い。もしかして・・・このまま第一層で冒険は終了なんだろうか。そんな虚無感が心を支配する。いや、まだ全力で挑んだわけでは無い。打開策はあるはずだ。

 僕は扉を少しだけ開き、中を確認する。目の前にボスがいたらどうしようという恐怖心よりも、どうなっているのかという好奇心が勝った。コボルトチーフは・・・元の位置に戻ってる。そして注目すべきポイントを発見する。さっきの初撃の傷がそのまま残っているのだ。たしか通路に戻ったら完全回復するはずじゃ?いやまて、ここは通路じゃ無い。

 ということは・・・。「いやはぁぁぁぁーぅ」僕はそう叫びガッツボーズをとる。コボルトチーフがそれに反応して、僕に向かって走ってくる。再び扉を閉める。「パタン」という音がした。

 打開策、見つけたよ。
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