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幕間

56 バンという音でビックリ、ビッグバン

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「カンゾウ、これが私の先祖、大賢者リコリースの遺産なのね?」
「はい、リコッテ様。このアダマンタイトの杖、そして残滓の衣、光魔法と闇魔法のスクロール、これがリコリース様の残した遺産です。」

 私はカンゾウと名乗る剣士から、装備品を受け取る。少し触れただけで、それが凄まじい力を秘めていることが分かる。スクロールの方は、最上位ランクの魔法らしい。私はそれらを使用可能にする。その光景を見て、カンゾウが驚愕の表情を浮かべる。どんなに資質があろうとも、普通は経験も積まずにいきなり取得可能なものではないらしい。というか経験を積んですら、これらを身につけられるのは希有の存在だと言うことだ。

 カンゾウはリコリースと一緒にダンジョン踏破したパーティーメンバーの末裔だ。そして彼はずっとリコリースの子孫を探していたようだ。彼の話によると大賢者リコリースはその昔、ソルトシールダンジョンを踏破したという。最深部に至った彼女は、力では無く世界の真実を知ることを望んだらしい。その結果・・・彼女は田舎の村、ボリハ村で静かに骨を埋(うず)めることになる。世界の真実というのが、彼女に何もかもを諦めさせてしまうほど衝撃的な内容だったらしい。

 そしてカンゾウは、その真実が何だったのかを突き止めるため、リコリースの子孫を探していたのだ。それが私、リコッテということらしい。リコリースの得た知識を、彼女は仲間達に語ることはしなかった。知らない方が幸せだと。そしてダンジョン踏破という事実すら隠し、全てを徹底的に隠蔽したらしい。

「ただ、リコリース様はご自分の知識を、日頃身につけていた何かに記録していたようなのです。」
「身につけていたもの? この杖とか?」
「どうやら違うようです。 形は三角形をしているらしいのですが、皆目見当が付きません。」
「三角形? 折りたたんだクロス? う~ん、分からないわね。」
「それさえあれば、リコリース様の知識を一気に獲得できるはずです。この村に無いとすると、もしかしたらソルトシールダンジョンのどこかに残されているかもしれません。」
「ちょっと見つけるのは難しそうね。」

 とりあえずリコリースの知識は置いておく。資金を潤沢に得られる状況になった私は、カンゾウを伴いソルトシールダンジョンへ向かうことになった。カンゾウは別のダンジョンで第六層に到達した手練れだ。

「それとひとつ、お耳に入れておきたいことが。」
「なに?」
「アーマレッリダンジョンの探索中、妙な男に会いました。」
「妙な男?」
「ボロディアという者です。一時、パーティーを組んだことがあるのですが、彼は『世界は暴走を止める』と言っていました。能力もかなり特殊で、何というか言葉にするのが難しい力の持ち主です。最終的に彼は、アーマレッリダンジョンを踏破し、そして姿を消しました。私はその時、力及ばす、ついて行くことは出来ませんでしたが・・・。」
「踏破者となると、その人の言葉には何か重みが出てくるわね。」

 私はぶっちゃけ世界の真実なんてどうでも良い。アフタにギャフンと言わせられればそれでいいのだ。世界が暴走しようが知ったことでは無い。そういえばアフタが『世界はビッグバンの爆発で出来た』とかいう話をしたことがあったっけ。全然意味が分からないけど。

「リコッテ様から伺ったアフタという少年。話を伺う限り、どうもボロディアと同じ臭いがするのです。」
「アフタ? アイツはダンジョン踏破なんて出来っこないわよ。 すっごく弱いんだから。早く見つけないと・・・死んでるかもしれないぐらいに。」
「いえ、強さという面では無く言動です。すでに一人、アフタ少年の監視の任務に就けてあります。」
「監視? ちゃんと生きてるの?」
「はい、どうやら第三層に到達したところのようで。」※情報遅延
「第三層? どうやって? 強い仲間がいるの?」
「いえ、一人で戦っているようです。」
「何かの間違いじゃ無い?」
「どうやら、何か特殊な武器を使っているようで、油断できぬ者だと。」
「う~ん、特殊な武器か。それはあり得るかも。」

 ダンジョンの過酷さは、カンゾウや他の冒険者からも聞いている。ポッと出の冒険者が、ソロでどうにかなるような世界では無い。そんな中、彼が何をするか、そういう面では正直言って予想が付かない。

 私にはカンゾウという強いサポートメンバーと、村で稼いだ莫大な財力、そして大賢者リコリースから受け継いだ魔力、さらに最強の装備品がある。彼がどこまで進もうとも、一瞬で追いついてやる。既に立ち回りのレクチャーはカンゾウから受けている。

 こうして私はソルトシールへと出発した。
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