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四章 予想はよそう、第四層

60 半田ゴテだと判断される

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 35日目。

 製油の方法をマニュアル化した物を、宿オヤジが派遣してきた元冒険者に渡す。第四層出発の準備のためだ。しばらく戻ってこられないかもしれないので、僕以外でも仕事が回るようにしたのだ。その分、経費が売り上げからさっ引かれることになる。経費の割合? 売り上げの50%だよ。まあ、仕事をしなくてもお金が入ってくるわけだし、問題ないよね?

 そういえば第三層をクリアした後、誰も僕を誰も訪ねてこなくなった。ちょっと報告したかったんだけどな。みんな色々と忙しいのだろう。最近人と接することが多かったけど、よくよく考えれば元々僕はソロボッチ。なんだか最初に戻ったような気分だ。

 とにかくこれから第四層に向けて出発だ。どんなところか大方予想は付いている。今回はスピード攻略してやる!

 僕は途中のアンデッドを踏みつぶしながら、第三層のボス部屋前へ到達する。もはや僕にとってアンデッドの集団など雑魚同然だ。え? 車から降りて勝負してみろ? 何を言っているか分からないな。

 装甲車をいったん魔法の袋にしまい、いつもの通り螺旋階段を降りる。そして第四層の入り口にたどり着いた。僕は意を決して第四層を見る。そこは・・・荒野だった。うん、もう驚かないよ。

 周囲を確認すると、ええっと、名前なんだっけ? 西部劇でよくコロコロ転がっているやつ。アレが流れていく。まあ、とりあえず探索してみよう。

「ソウコウシャー」
 僕は装甲車を取り出す。気分は未来から来たタヌキ型ロボットだ。

 そして荒野を装甲車でドライブだ。見えるのは小高い山とサボテンみたいな植物だった。ふと、遠くで動く物を発見する。微妙な土煙を上げながら近づいてくるそれは・・・犬?

 たぶん機械仕掛けの犬だ。大きさは小型犬、魔物・・・と言って良いのか微妙だけど、とにかく味方では無いだろう。第三層の芋虫の件もある。おそらくは、まともに戦ったらとんでもない強敵になるだろう。しかしあのシルエット、何だか見覚えがある気がする・・・。

 僕はアクセルを踏み込む。そのままひいて鉄屑にしてやれば良い。エンジンの回転数が上がり、装甲車の速度が急速に高まる。そして犬型ロボットと接触・・・しない。素早くサイドステップで躱す犬。そうか、アンデッドは死を気にしないから避けなかったんだ。よく考えたら普通はそうするよね。完全に僕の感覚がおかしくなっていた。

 さて、どうしよう? 僕は後ろを確認するが、犬は一応追いかけてきている、けれど距離が少しずつ離れていく。どうやら装甲車の速度の方が早いようだ。速度を出すなら4足歩行よりもやはり車輪か。

 ある程度は行ったところで一旦停車させる。そろそろエンジンを冷やしたい。装甲車から出て周囲を確認する。中からだとイマイチ見にくいのだ。遠くにドーム型の建物があるのを発見する。よく見たらそれがいくつか点在していた。さすがにまだボス部屋では無いよね?

 しばらく休憩した後、ドーム型の建物へ向かった。近くに装甲車を着ける。そばで見るとかなり大きな規模の建物だ。そして入り口は・・・扉が壊れており、隙間から中には入れそうだ。とりあえず探索しないと始まらない。

 僕は中に入る。中は廊下が続いており、途中いくつかの扉が見える。そして所々、配線がむき出しになってショートの火花が飛んでいる。この光景で言えることは二つ。

 この建物は電気的な設備がある
 火花が出ると言うことは電気系統が生きている

 さて、隠匿の指輪の準備はいつでもOKだ。もし敵が出たら、さっと角に隠れて発動させよう。もはや絶対に勝てない自信がある。この階層はたぶんロボットばかりなんだろう。そしてロボット相手に火炎放射器なんて意味が無い。装甲が溶け始めるよりも前に、僕は攻撃を受けて死ぬだろう。

 しばらく廊下を歩いていると、「ギーギーカツンカツン」という音が聞こえる。まあ十中八九、警備ロボットとかなんだろうなあ。僕は隠匿の指輪を発動させ姿を確認する。

「センコウ・・・シャ・・・」

 僕は慌てて口を塞ぐ。その姿はあまりにも衝撃的だった。アレか、アレなのか・・・。たぶん股の間にキャノンを持っているアイツだ。

 ちょっと待て。移動中に遭遇した小型犬、思い出してみるとアイツも何かに似ていなかったか? アイ・・・ヤバイマズイイケナイ。とにかく今を乗り切らないと。
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