能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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四章 予想はよそう、第四層

69 取り過ぎる鳥

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 黒い雨が僕の元へ降り注ごうとするその瞬間、黒い空の一部にぽっかりと穴が空いた。パスパスパスっという音がして、周囲には針地獄が形成されていく。しかし僕のいる場所から半径1メートルにはまったく矢の雨は落ちてこない。

 僕の右肩に鳥が留まる。スバードだ。たぶん衝撃波っぽいのを出して、矢を吹き飛ばしたのだろう。助かった。

 安心したことによって周りを見る余裕が出来た。ウーナが相変わらず僕の周りをくるくる回っているのが目に入る。ウーナはあの雨あられ攻撃をもろに受けたのにかかわらず、まったくダメージを負っている気配が無い。硬すぎるだろう。

 そして正面に突撃したアイボウの方の状況を確認する。すでに勝負は付いていた。そこは骨と死肉のパラダイスだ。ゾンビ系もいつの間にか混じっていたようで、グッチャグチャとしか言いようがない凄惨な光景が広がっていた。いつもは踏みつぶしつつ、すぐに通り過ぎているからなんとも思わなかったけれど、ゾンビの臭いは結構キツい。まあ、魔物は倒した後すぐに消滅して消えるから、臭いも一緒に無くなるんだろうけど。

 僕は思った。一層違うだけで起こる魔物の戦力差だ。本当にこのダンジョンはバランスが崩壊している。その点はもう諦めているけれど本当に酷い。

 この状況で一つ良いことがある。それは核やドロップを回収する余裕があると言うことだ。ということで僕はひたすら核とドロップを回収し続けた。あまりに多すぎて取りこぼしまくっているけれど、拾えるだけ拾った。気分は清掃活動だ。周囲では再びアンアン達が湧きつつあるので、三匹に片っ端から殲滅するように命令した。

「大漁ぉ大漁ぉぉぉ♪」

 僕はオリジナルソング大漁の歌を歌いながら、落ちているものを拾い集めた。そんな中、少々ヤバいものを発見する。上等な漆黒のマントに身を包んだ、明らかに上級の魔物だと分かるものが横たわっている。そしてソイツは生きていた。
アイボウが取りこぼした?

 漆黒のマントを羽織ったソイツは、重力を無視してフワリと角度を変え立ち上がった。彫刻のように整った青白い顔の男。目は閉じており、口からは牙が出ていた。間違いなくコイツは吸血鬼・・・。そしてヤツは突然目を開く。

「うわぁぁぁぁ。」

 僕は叫んでしまった。その血に染まったような赤い眼光が、あまりにも僕に恐怖を与えたからだ。たぶん魔眼か何かだろう。もろにくらってしまった。足に力が入らず、今にも倒れてしまいそうなのに倒れることが出来ない。身動きが完全に塞がれている。

 死体に紛れて、あまりにヤバいのが混ざっていた。もしかしてアイボウが取りこぼしたのでは無く、今さっきスポーンしたのかもしれない。

 吸血鬼はどす黒いオーラを身に纏い僕に近づいてくる。あの黒いオーラがあるならマントはいらない気がする。オーラだけ纏って素っ裸で活動すれば良いのでは無いだろうか? そんなどうでも良いことを考えているのは、そのままだと恐怖で正気を保つのが困難だからだ。

 とうとう僕の吐いた息が魔物にかかるぐらいまで接近を許してしまった。吸血鬼の視線が僕の首筋に注がれる。せめて美女の吸血鬼ならロマンもあったんだけどなあ。僕は色々と諦めた。

 次の瞬間、吸血鬼はデュラハンにクラスチェンジした。さっきまで僕に熱い視線を送っていた首が無くなっている。そしてスバードが僕の肩に留まる。

 吸血鬼の頭は蹴られたサッカーぼるのように、回転しながら空を飛んでいた。スバードの羽カッターでスパッと切断されたのだろう。スバード、凄まじく使える鳥だ。

 ホっとしたのもつかの間、僕はディラハン状態の吸血鬼に身体を捕まれた。まだ生きている?! 凄まじい力で身体を締め付けられる。僕の身体の自由はまだ完全には戻っていない。いや、魔眼の効力が残っていないとしても、この状態をふりほどくことなど出来なかっただろう。僕はちらりとスバードを見る。困ったように旋回を続けていた。どうやら近すぎるらしい。きっと羽カッターを使うと、僕の身体もチョンパしてしまうのだろう。

 骨から嫌な音が聞こえる、どこかが折れたのか砕けたのか。苦しさも限界を超え、意識が遠のいていく。口からは泡が吹き出てくる。調子に乗りすぎた。ちょっと上手くいくと、いつも油断してこうなってしまう。次こそはと思い続けてこのざまだ。僕は何も成長していないな。そして意識は暗闇に沈み込んだ。
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