85 / 208
幕間
85 体重の減った大樹
しおりを挟む
「見かけ倒しだったわね。」
私の前には巨大な魔物が倒れている。巨象と呼ばれている魔物だ。動きは遅く、光魔法で心臓部分を貫いたらあっさりと動かなくなった。しばらくすると巨象は霧のように消え、ドロップが残される。その中でも象牙は高く売れるらしい。けれどお金には困っていないので興味は無い。
「わたくしの仕事が無いというのは良いことではあるのですが・・・。リコッテ様、少しぐらい怪我をされてもいいんですのよ?」
そう話すのは回復魔法を得意とする魔術師サルミアキ。カンゾウがダンジョン踏破のために呼び寄せたのだ。しかし第二層の雑魚相手では怪我などしようが無い。現時点ではただの穀潰に近い。それを気にしての言葉なのだろうけど、下の階層に行けばいずれは働いてもらうことになる。
「あそこが第二層のボス部屋です。このまま向かわれますか?」
「当然! イチイチ戻ったりしたら時間の無駄よ。」
私はカンゾウに言った。彼は過保護すぎるきらいがある。慎重さの度が過ぎているのだ。おかげで時間を無駄に浪費してしまっている。
私はボス部屋の扉を開け、そのまま控え室を素通りし奥の扉を開けた。一度に戦える人数を制限するための仕組みらしいけれど、二重扉でまどろっこしい。
「大きな木ね。」
「大樹と呼ばれる魔物です。中途半端な攻撃ではすぐに治癒されてしまいます。」
ボス部屋の真ん中に立っている巨大な木。ジャングルのボスは植物系の魔物らしい。そのまま近づいていくと、ツルのようなものが無数にこちらに向かって伸びてきた。どの程度の治癒能力があるのか興味がある。私は試してみることにした。杖に光魔法の力をチャージする。そして薙ぎ払うようにそれを放った。
ブシュー
光魔法の力で無数のツルはあっという間に消滅していく。そしてそのまま大樹の枝まで到達し、その周辺ごと蒸発していく。
「いつ治癒が始まるの?」
私は待った。治癒能力を観察するためだ。しかし一向ににその気配が無い。
「どうやら治癒に必要な部位を削り取ってしまったようです。」
「あれでは修復は無理ですわ。待つだけ時間の無駄ですよ。」
二人が状況を伝える。しまった、軽く撫でたつもりだったのにやり過ぎたらしい。これ以上得るものは無さそうなので勝負を付けることにした。
攻撃力を失った大樹の前まで来た私は、闇魔法を木の内部へと流し込んでいく。大樹の葉が黄色、茶色、そして黒へと変わる。ハラハラと散り始め、幹の部分がしぼんでいく。強度を失った大樹はそのまま自分の重さに耐えきれずポキリと折れて倒れる。しばらくすると大樹はドロップを残して完全に消滅した。
「第二層じゃボスもこのレベルなのね。カンゾウ、宝箱の中身の回収は任せるわ。」
ソルトシールダンジョンへ来てから、苦戦らしい苦戦をまったくしていない。故郷の村に来た冒険者達からは、ダンジョンは死と隣り合わせの恐ろしい場所だと聞かされていた。しかし実際はあまりにも拍子抜けで、未だ恐ろしさの片鱗すら見えていない。
「第三層は多少は期待しても良いのかしら? そういえばそこには村があるのよね?」
「はい、冒険者達が作った村があります。」
「ダンジョンの中に作れるものなの?」
「もともと村を作るための領域がダンジョン内に設定されていたようなのです。詳しい仕組みが分からないのでそういうものだとしか。一つ確実なのは、下の階層へ向かうときの拠点になっているということです。」
「へえ、じゃあそろそろ会えるかもしれないわね。」
私は第三層へ続く階段を一歩ずつ下りていく。その一歩ごとに考える。さあ、どうしてやろうかしら。もうすぐ、もうすぐよ、アフタ。
私の前には巨大な魔物が倒れている。巨象と呼ばれている魔物だ。動きは遅く、光魔法で心臓部分を貫いたらあっさりと動かなくなった。しばらくすると巨象は霧のように消え、ドロップが残される。その中でも象牙は高く売れるらしい。けれどお金には困っていないので興味は無い。
「わたくしの仕事が無いというのは良いことではあるのですが・・・。リコッテ様、少しぐらい怪我をされてもいいんですのよ?」
そう話すのは回復魔法を得意とする魔術師サルミアキ。カンゾウがダンジョン踏破のために呼び寄せたのだ。しかし第二層の雑魚相手では怪我などしようが無い。現時点ではただの穀潰に近い。それを気にしての言葉なのだろうけど、下の階層に行けばいずれは働いてもらうことになる。
「あそこが第二層のボス部屋です。このまま向かわれますか?」
「当然! イチイチ戻ったりしたら時間の無駄よ。」
私はカンゾウに言った。彼は過保護すぎるきらいがある。慎重さの度が過ぎているのだ。おかげで時間を無駄に浪費してしまっている。
私はボス部屋の扉を開け、そのまま控え室を素通りし奥の扉を開けた。一度に戦える人数を制限するための仕組みらしいけれど、二重扉でまどろっこしい。
「大きな木ね。」
「大樹と呼ばれる魔物です。中途半端な攻撃ではすぐに治癒されてしまいます。」
ボス部屋の真ん中に立っている巨大な木。ジャングルのボスは植物系の魔物らしい。そのまま近づいていくと、ツルのようなものが無数にこちらに向かって伸びてきた。どの程度の治癒能力があるのか興味がある。私は試してみることにした。杖に光魔法の力をチャージする。そして薙ぎ払うようにそれを放った。
ブシュー
光魔法の力で無数のツルはあっという間に消滅していく。そしてそのまま大樹の枝まで到達し、その周辺ごと蒸発していく。
「いつ治癒が始まるの?」
私は待った。治癒能力を観察するためだ。しかし一向ににその気配が無い。
「どうやら治癒に必要な部位を削り取ってしまったようです。」
「あれでは修復は無理ですわ。待つだけ時間の無駄ですよ。」
二人が状況を伝える。しまった、軽く撫でたつもりだったのにやり過ぎたらしい。これ以上得るものは無さそうなので勝負を付けることにした。
攻撃力を失った大樹の前まで来た私は、闇魔法を木の内部へと流し込んでいく。大樹の葉が黄色、茶色、そして黒へと変わる。ハラハラと散り始め、幹の部分がしぼんでいく。強度を失った大樹はそのまま自分の重さに耐えきれずポキリと折れて倒れる。しばらくすると大樹はドロップを残して完全に消滅した。
「第二層じゃボスもこのレベルなのね。カンゾウ、宝箱の中身の回収は任せるわ。」
ソルトシールダンジョンへ来てから、苦戦らしい苦戦をまったくしていない。故郷の村に来た冒険者達からは、ダンジョンは死と隣り合わせの恐ろしい場所だと聞かされていた。しかし実際はあまりにも拍子抜けで、未だ恐ろしさの片鱗すら見えていない。
「第三層は多少は期待しても良いのかしら? そういえばそこには村があるのよね?」
「はい、冒険者達が作った村があります。」
「ダンジョンの中に作れるものなの?」
「もともと村を作るための領域がダンジョン内に設定されていたようなのです。詳しい仕組みが分からないのでそういうものだとしか。一つ確実なのは、下の階層へ向かうときの拠点になっているということです。」
「へえ、じゃあそろそろ会えるかもしれないわね。」
私は第三層へ続く階段を一歩ずつ下りていく。その一歩ごとに考える。さあ、どうしてやろうかしら。もうすぐ、もうすぐよ、アフタ。
0
あなたにおすすめの小説
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
無能と追放された結界師、三十路のおっさんですが17歳の辺境伯令嬢と婚約して人生逆転します
みかん畑
ファンタジー
無能と蔑まれ、Aランクパーティを追放された結界師フィン。
行き場を失った彼を拾ったのは、辺境伯の娘リリカだった。
国土結界の恩恵が届かない辺境で、フィンの結界は本当の価値を発揮していく。
領地再建、政治の駆け引き、そして少女のまっすぐな想い。
これは無能と呼ばれた男が、辺境で居場所を見つけ、やがて年の差婚へと至る物語。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します
黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。
断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。
ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている!
「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」
イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。
前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。
クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。
最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。
やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く!
恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』
月神世一
ファンタジー
マンションの5階でカレーを作っていたら、なぜかトラックが突っ込んできた件。
外科医を目指す医学生・中村優太(24)は、特製の絶品バターチキンカレーを食べる寸前、マンションの「5階」に突撃してきた理不尽なトラックによって命を落としてしまう。
目を覚ますと、そこはコタツでカップ麺を啜るジャージ姿の駄女神・ルチアナの部屋だった。
「飲み会があるから定時で帰りたい」と適当な理由で異世界転移をさせられそうになる優太だったが、怒りのガラポン抽選でユニークスキル【地球ショッピング】と【女神ルチアナこき使い権】を引き当てる!
かくして、ポンコツ女神を強制連行して剣と魔法の世界『アナステシア』に降り立った優太。
しかし、彼にはただのチートスキルだけではない、元SEALs直伝の「CQB(近接戦闘術)」、有段者の「薙刀術」、そして何より「現代医療の知識」があった――!
降り立った辺境のポポロ村で彼を待っていたのは、クセが強すぎる住人たち。
キャルル: マッハの飛び蹴りを放つ、ファミレス大好きなウサ耳村長。
リーザ: タダ飯とポイ活に命を懸ける、図太すぎる地下アイドル人魚。
ルナ: 善意で市場や生態系を破壊する、歩く大災害の天然エルフ。
ルチアナ: 優太のポイントでソシャゲ課金と酒を目論む、労働拒否の駄女神。
優太は【地球ショッピング】で召喚した現代物資と、自身のサバイバル能力&薙刀術で野盗や魔物を無双! さらには特製のスパイスカレーで異世界人の胃袋を完全に掌握していく。
そして、村人に危機が迫った時。
優太の「絶対に命を救う」という善意の心が、奇跡の黄金ガチャを引き起こす……!
「俺は医者だ。この村の命も、平和な日常も、俺の戦術(スキル)で全部守り抜く!」
現代の【医療・戦術・料理】×【理不尽ギャグ】×【異世界サバイバル】!
凶悪な「ワスプ薙刀」を振るい、ヤバすぎる仲間たちと送る、最強医学生のドタバタ辺境防衛ライフが今始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる