能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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四章 予想はよそう、第四層

84 光線による交戦

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 第四層のボス戦を開始してから4時間が経過した。そろそろ暖房の燃料と供給している酸素が切れる。しかしいつもの揺れは起こらない。つまりボス部屋をサウナ化するだけではマザコンは倒せないようだ。

 僕は奥の扉を少しだけ開けてイナゴンを再投入する。少し開いただけなのに、ムワっと加熱された空気が控え室に漏れてきた。アツ、完璧にサウナだ。

 僕はふと、日本のとあるスポーツジムのサウナを思い出した。あそこは室温が120度という頭のおかしい温度に設定されている。ロッカーのキーなどの金属を持ち込むと火傷が確定だ。もし持ち込むのなら手の中に握っておく等の対処を取る必要がある。また、汗は身体から出てきた早々に蒸発し、目を開いていると水分がすぐに持って行かれる。だから中では瞑想するしかない。鼻で呼吸すると粘膜がヒリヒリし、口で呼吸すると肺が悲鳴を上げる。本当に恐ろしい空間だった。

 今のボス部屋はそんな状態だ。その中をイナゴンは進み、ボスの攻撃反応範囲に到達した。先ほどと同じように光線による攻撃が放たれる。それを先行回避するイナゴン。どうやらマザコンの攻撃能力は無くなってはいないようだ。

 次の光線が放たれた。それもイナゴンは回避する。今回は二撃目も躱すことが出来た。さらに光線が放たれる。そして回避。

 間違いない! 予想通り、動きが鈍っている。廃熱が出来ないのでCPUのクロックを落としているのだろう。殺るなら今だ。

 僕はボス部屋に全てのジャンクを投入する。全員の力を合わせマザコンを総攻撃だ。そして僕は控え室から扉をそっと閉める。全員に僕が含まれていないのかって? もちろん含まれていないよ。

 僕は控え室から戦闘状況を確認する。スバードがそのスピードを生かして、マザコンの攻撃を引きつける。その隙を突いてアイボウがビーム兵器の射出口を破壊していく。イナゴンズは装甲に張り付いて、ジワジワとその部分を削っている。おそらく穴が出来たら中に侵入するつもりだろう。そしてウーナが目からレーザーを使い、端っこのトンチンカンな場所に穴を開けようとしている。

 時々イナゴンズの個体がビームの直撃を受け消滅する。現時点での被害は5、まだまだやれる。

 そこそこなダメージがマザコンに入ったところで相手の攻撃方法が変わる。マザコン内部から卓球ボール大の丸い物体が数十個、突然射出された。それらは意思を持つかのように、空中を自在に移動する。

 まず狙われたのはアイボウだ。高速で飛んでくるボールの初撃こそ避けることに成功したものの、二撃目が身体を掠り、三撃目で直撃した。その威力で吹き飛ばされるアイボウ。しかしすぐに立ち上がり、次の攻撃に対応しようとする。

 スバードは現時点で全弾避けてはいるものの、かなりギリギリの状態だ。それよりもイナゴンズがピンチだ。ボールは装甲に張り付いているイナゴンズを次々に押しつぶしていく。既に被害が30を超えた。

 防御に精一杯で攻撃に転じることが出来ない。自動的に動くボールは、おそらくレーザー兵器のようなマザコンの演算能力を必要としないのだろう。それぞれが自立して攻撃目標を定めているように見える。

 アイボウは既に何発もボールの攻撃を受けている。見た感じではそれほどの損傷が無いんだけど、動きは確実に鈍くなっている。もしかしたらこちらのジャンクも高温環境での活動限界が近いのかもしれない。

 さっきまでの優勢とは打って変わって、だんだんと劣勢の色を見せ始めた。マズイ、このままではマズイ。僕の見通しが甘かった。これは一度、撤退も視野に入れて考えるべきだろう。

 少し悩んだが僕は決断した。撤退して作戦を練り直す。今回は駄目だったけれど、マザコンはやり方次第ではなんとかなる。僕は撤退命令を入力する。そしてそれを発信しようと思った瞬間、何故か決着が付いた。マザコンの光がふっと消えて、自律型ボールからの攻撃が止んだ。

 何が起きたのかしばらく理解できなかった。ふと気がつくと、ウーナが口に何か咥えている。あれって・・・核(コア)?

 人知れずマイペースで穴を開け、いつの間にかマザコンから核を引き抜いたのだ。僕は今回、ウーナを役立たず認識していた。実はやるヤツだったのだ。

「ウーナ、ゴメンよ。」

 僕は謝った。しばらくするとマザコンは霧のように消え去り、そして階段と宝箱が出現した。一時は撤退も考えたものの、どうやら勝利したようだ。僕はボスがいなくなったボス部屋に入る。中の温度はリセットされていた。ボスが倒されたことにより初期化されたのだろう。

 こうして第四層のボス、マザコンの討伐に成功した。毎度ながらボスを倒した後はやり遂げた感動よりも、いつの間にか終わってしまったという感覚が大きい。

 まあ、とにかく今回も勝ったのだ。

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