能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

文字の大きさ
91 / 208
五章 寒々ホワイト、第五層

91 浮浪している風呂の光景

しおりを挟む
「ピコーン。」

 僕は閃きの呪文を唱えた。・・・この聖樹の帽子、頭の中にピコーンが響いたのは一度だけで、実際は僕が無い知恵を絞り出している気がする。もしかしてプラシーボ効果しか無いんじゃ? 名付けてプラシーボウシ。そんな疑いを持った時点で、その効果すら怪しくなってしまった。

 まあいい、兎にも角にもやれることをやるだけだ。僕はアイボウの方を見る。アイボウは僕の視線を受け、短いしっぽをバタバタと振っている。これからやろうとしている所行を考えると心が痛む。僕はノートPCを取り出しジャンク工場に新しい設計を送る。どうやらそれは可能なようだ。

「アイボウ、これから君を改造する。」

 そう、僕がやろうとしているのはアイボウのパワーアップだ。可能だというのは分かったけれど、その結果がどうなるのかは未知数だ。しかしこのままの戦力で第五層を突破するのは到底不可能だというのは分かる。僕自身が強くなる見込みが無い以上、ジャンク達に強くなってもらう必要があるのだ。

 魔法の袋から転送装置を取り出しアイボウを乗せる。アイボウは機械系の魔物だ。けっして生き物では無い。しかし・・・なんだこの心の痛みは? そういえばアイボウと同じような姿をしている某国産メーカーの犬型ロボットは故障したとき、修理に出す人達はそれを修理と呼ばず治療と言うらしい。理性では命が宿っているわけでは無いと分かっているはず。しかし感情的には家族と同じなのだ。壊れたテレビを修理に出すのとは違うのだ。

 アイボウは僕の悲しそうな顔を見て、短い尻尾を振りながら近づいてきてクンクンする。たぶん励まそうとしているのだろう。そんなアイボウを見ると、ますます胸の痛みが強くなるばかりだ。意を決して転送装置を起動させる。そしてアイボウは尻尾を振ったまま消えていった。

「うぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕は泣いた。しかしまだ終わりでは無い。追加素材として白狼の核、白狼の毛皮、白狼の爪を転送する。先の戦闘で得た貴重なドロップだ。そして工程完了時間を確認する。7時間・・・意外に短い。

 その間、僕は休息を取ることにした。スノーモービルに乗ってはいたけれど、吹雪の中の移動は想像以上に体力が持って行かれた。地味な服が無ければたぶん僕は凍え死んでいる。地味な服の第五層での重要性は魔法オヤジから買った装備を超える。それを考えると、買ったときは高いと思ったこの服は格安だったのだ。

 食事を取ったあと、少し仮眠を取ろうと横になる。疲れてはいるのだけど、アイボウのことが気になってなかなか寝付けない。それでも目を閉じてじっとする。眠れないとしても目を閉じて横になるだけで、実はけっこう疲労は回復するものなのだ。



 また、始まった。リコッテの夢だ。現実でも悪夢みたいなのに、寝ても悪夢か・・・。僕は何故リコッテの夢を見るのだろう? 恐らくこれは正夢というヤツなんだろうけど、なんだか意図的なものを感じるのだ。誰かが僕にこれを見せようとしているような気がしてならない。目的はまったく分からないけれど。

 リコッテはまだ始発の町にいるようだ。宿から出て・・・どこに行くんだろう? 日も傾いているし、ラフな格好をしているから町の外に行くわけでは無いようだ。

 うん? この方向は凄く覚えがある。そうそう、僕が作った浴場だ。そうか、リコッテは風呂に入るために浴場を目指しているようだ。良かった、これならしばらくは追いついてこない。じっくり寄り道をしていて欲しい。

 そのままリコッテは更衣室に入っていく。そして・・・。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 僕は叫んだ。マズイ、マズイぞ、それはマズイ。当然のごとく僕の叫びはリコッテには聞こえない。そうこうしているうちに服を脱ぎだすリコッテ。この夢、恐ろしいことに目を瞑るとか、視線を反らすとかいう機能が無い。ピンチ、ピンチだ。どうするんだよ?

 既にリコッテは下着姿になっていた。うむ、相変わらず胸は成長していないな・・・て、ヤバイから。これ以上は本当にヤバイ。何とか夢から抜け出さないと。

 僕は自分の身体を覚醒させようと、一生懸命身体の制御権を取り戻そうとする。しかし感覚が戻ってこない。だか自分自身を動かすことは出来ないし、目を覚ますことも出来ない。

 なんでこんな事に・・・。いったい、どうすりゃいいんだ?
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無自覚チートで無双する気はなかったのに、小石を投げたら山が崩れ、クシャミをしたら魔王が滅びた。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなんです!

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ、平凡な人生を終えたはずのサラリーマン、ユウキ。彼が次に目覚めたのは、剣と魔法の異世界だった。 「あれ?なんか身体が軽いな」 その程度の認識で放った小石が岩を砕き、ただのジャンプが木々を越える。本人は自分の異常さに全く気づかないまま、ゴブリンを避けようとして一撃でなぎ倒し、怪我人を見つけて「血、止まらないかな」と願えば傷が癒える。 これは、自分の持つ規格外の力に一切気づかない男が、善意と天然で周囲の度肝を抜き、勘違いされながら意図せず英雄へと成り上がっていく、無自覚無双ファンタジー!

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

精霊のお仕事

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】 オレは前世の記憶を思い出した。 あの世で、ダメじゃん。 でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。 まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。 ときどき神様の依頼があったり。 わけのわからん敵が出てきたりする。 たまには人間を蹂躙したりもする。? まあいいか。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...