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五章 寒々ホワイト、第五層
91 浮浪している風呂の光景
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「ピコーン。」
僕は閃きの呪文を唱えた。・・・この聖樹の帽子、頭の中にピコーンが響いたのは一度だけで、実際は僕が無い知恵を絞り出している気がする。もしかしてプラシーボ効果しか無いんじゃ? 名付けてプラシーボウシ。そんな疑いを持った時点で、その効果すら怪しくなってしまった。
まあいい、兎にも角にもやれることをやるだけだ。僕はアイボウの方を見る。アイボウは僕の視線を受け、短いしっぽをバタバタと振っている。これからやろうとしている所行を考えると心が痛む。僕はノートPCを取り出しジャンク工場に新しい設計を送る。どうやらそれは可能なようだ。
「アイボウ、これから君を改造する。」
そう、僕がやろうとしているのはアイボウのパワーアップだ。可能だというのは分かったけれど、その結果がどうなるのかは未知数だ。しかしこのままの戦力で第五層を突破するのは到底不可能だというのは分かる。僕自身が強くなる見込みが無い以上、ジャンク達に強くなってもらう必要があるのだ。
魔法の袋から転送装置を取り出しアイボウを乗せる。アイボウは機械系の魔物だ。けっして生き物では無い。しかし・・・なんだこの心の痛みは? そういえばアイボウと同じような姿をしている某国産メーカーの犬型ロボットは故障したとき、修理に出す人達はそれを修理と呼ばず治療と言うらしい。理性では命が宿っているわけでは無いと分かっているはず。しかし感情的には家族と同じなのだ。壊れたテレビを修理に出すのとは違うのだ。
アイボウは僕の悲しそうな顔を見て、短い尻尾を振りながら近づいてきてクンクンする。たぶん励まそうとしているのだろう。そんなアイボウを見ると、ますます胸の痛みが強くなるばかりだ。意を決して転送装置を起動させる。そしてアイボウは尻尾を振ったまま消えていった。
「うぁぁぁぁぁ!!!!」
僕は泣いた。しかしまだ終わりでは無い。追加素材として白狼の核、白狼の毛皮、白狼の爪を転送する。先の戦闘で得た貴重なドロップだ。そして工程完了時間を確認する。7時間・・・意外に短い。
その間、僕は休息を取ることにした。スノーモービルに乗ってはいたけれど、吹雪の中の移動は想像以上に体力が持って行かれた。地味な服が無ければたぶん僕は凍え死んでいる。地味な服の第五層での重要性は魔法オヤジから買った装備を超える。それを考えると、買ったときは高いと思ったこの服は格安だったのだ。
食事を取ったあと、少し仮眠を取ろうと横になる。疲れてはいるのだけど、アイボウのことが気になってなかなか寝付けない。それでも目を閉じてじっとする。眠れないとしても目を閉じて横になるだけで、実はけっこう疲労は回復するものなのだ。
また、始まった。リコッテの夢だ。現実でも悪夢みたいなのに、寝ても悪夢か・・・。僕は何故リコッテの夢を見るのだろう? 恐らくこれは正夢というヤツなんだろうけど、なんだか意図的なものを感じるのだ。誰かが僕にこれを見せようとしているような気がしてならない。目的はまったく分からないけれど。
リコッテはまだ始発の町にいるようだ。宿から出て・・・どこに行くんだろう? 日も傾いているし、ラフな格好をしているから町の外に行くわけでは無いようだ。
うん? この方向は凄く覚えがある。そうそう、僕が作った浴場だ。そうか、リコッテは風呂に入るために浴場を目指しているようだ。良かった、これならしばらくは追いついてこない。じっくり寄り道をしていて欲しい。
そのままリコッテは更衣室に入っていく。そして・・・。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
僕は叫んだ。マズイ、マズイぞ、それはマズイ。当然のごとく僕の叫びはリコッテには聞こえない。そうこうしているうちに服を脱ぎだすリコッテ。この夢、恐ろしいことに目を瞑るとか、視線を反らすとかいう機能が無い。ピンチ、ピンチだ。どうするんだよ?
既にリコッテは下着姿になっていた。うむ、相変わらず胸は成長していないな・・・て、ヤバイから。これ以上は本当にヤバイ。何とか夢から抜け出さないと。
僕は自分の身体を覚醒させようと、一生懸命身体の制御権を取り戻そうとする。しかし感覚が戻ってこない。だか自分自身を動かすことは出来ないし、目を覚ますことも出来ない。
なんでこんな事に・・・。いったい、どうすりゃいいんだ?
僕は閃きの呪文を唱えた。・・・この聖樹の帽子、頭の中にピコーンが響いたのは一度だけで、実際は僕が無い知恵を絞り出している気がする。もしかしてプラシーボ効果しか無いんじゃ? 名付けてプラシーボウシ。そんな疑いを持った時点で、その効果すら怪しくなってしまった。
まあいい、兎にも角にもやれることをやるだけだ。僕はアイボウの方を見る。アイボウは僕の視線を受け、短いしっぽをバタバタと振っている。これからやろうとしている所行を考えると心が痛む。僕はノートPCを取り出しジャンク工場に新しい設計を送る。どうやらそれは可能なようだ。
「アイボウ、これから君を改造する。」
そう、僕がやろうとしているのはアイボウのパワーアップだ。可能だというのは分かったけれど、その結果がどうなるのかは未知数だ。しかしこのままの戦力で第五層を突破するのは到底不可能だというのは分かる。僕自身が強くなる見込みが無い以上、ジャンク達に強くなってもらう必要があるのだ。
魔法の袋から転送装置を取り出しアイボウを乗せる。アイボウは機械系の魔物だ。けっして生き物では無い。しかし・・・なんだこの心の痛みは? そういえばアイボウと同じような姿をしている某国産メーカーの犬型ロボットは故障したとき、修理に出す人達はそれを修理と呼ばず治療と言うらしい。理性では命が宿っているわけでは無いと分かっているはず。しかし感情的には家族と同じなのだ。壊れたテレビを修理に出すのとは違うのだ。
アイボウは僕の悲しそうな顔を見て、短い尻尾を振りながら近づいてきてクンクンする。たぶん励まそうとしているのだろう。そんなアイボウを見ると、ますます胸の痛みが強くなるばかりだ。意を決して転送装置を起動させる。そしてアイボウは尻尾を振ったまま消えていった。
「うぁぁぁぁぁ!!!!」
僕は泣いた。しかしまだ終わりでは無い。追加素材として白狼の核、白狼の毛皮、白狼の爪を転送する。先の戦闘で得た貴重なドロップだ。そして工程完了時間を確認する。7時間・・・意外に短い。
その間、僕は休息を取ることにした。スノーモービルに乗ってはいたけれど、吹雪の中の移動は想像以上に体力が持って行かれた。地味な服が無ければたぶん僕は凍え死んでいる。地味な服の第五層での重要性は魔法オヤジから買った装備を超える。それを考えると、買ったときは高いと思ったこの服は格安だったのだ。
食事を取ったあと、少し仮眠を取ろうと横になる。疲れてはいるのだけど、アイボウのことが気になってなかなか寝付けない。それでも目を閉じてじっとする。眠れないとしても目を閉じて横になるだけで、実はけっこう疲労は回復するものなのだ。
また、始まった。リコッテの夢だ。現実でも悪夢みたいなのに、寝ても悪夢か・・・。僕は何故リコッテの夢を見るのだろう? 恐らくこれは正夢というヤツなんだろうけど、なんだか意図的なものを感じるのだ。誰かが僕にこれを見せようとしているような気がしてならない。目的はまったく分からないけれど。
リコッテはまだ始発の町にいるようだ。宿から出て・・・どこに行くんだろう? 日も傾いているし、ラフな格好をしているから町の外に行くわけでは無いようだ。
うん? この方向は凄く覚えがある。そうそう、僕が作った浴場だ。そうか、リコッテは風呂に入るために浴場を目指しているようだ。良かった、これならしばらくは追いついてこない。じっくり寄り道をしていて欲しい。
そのままリコッテは更衣室に入っていく。そして・・・。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
僕は叫んだ。マズイ、マズイぞ、それはマズイ。当然のごとく僕の叫びはリコッテには聞こえない。そうこうしているうちに服を脱ぎだすリコッテ。この夢、恐ろしいことに目を瞑るとか、視線を反らすとかいう機能が無い。ピンチ、ピンチだ。どうするんだよ?
既にリコッテは下着姿になっていた。うむ、相変わらず胸は成長していないな・・・て、ヤバイから。これ以上は本当にヤバイ。何とか夢から抜け出さないと。
僕は自分の身体を覚醒させようと、一生懸命身体の制御権を取り戻そうとする。しかし感覚が戻ってこない。だか自分自身を動かすことは出来ないし、目を覚ますことも出来ない。
なんでこんな事に・・・。いったい、どうすりゃいいんだ?
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