能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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五章 寒々ホワイト、第五層

103 風呂を覗くことになるまでのフロー

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 46日目。さあ、新しい朝だ。

 僕はスコヴィルを朝食に誘うため彼女の部屋をノックした。返事が無い、タダのしかば・・・じゃない。仕方が無いので部屋に入ってベッドを覗き込んだ。寝顔を見ようとかいう卑しい気持ちは一切無い。

「あれ、いない?」

 どうやら先に起きていたようだ。僕は彼女を探して歩き回る。箱庭は庭を含めてそれほど広くは無い。すぐに見つかると思ったのだけど、何故か見つからなかった。ここから出るには僕が持っている水晶が必要で、誰か一人だけが転移することは出来ない。つまり箱庭のどこかにいるはずなのだ。推理ものの小説のように、その前提をひっくり返すようなトリックは・・・方法はあるけど、わざわざそんなことはしないはずだ。

 僕はちょっと怖くなった。今までのが全て妄想で、実は僕はソロのままなんじゃないのか? そんなことを考えながら、いつもはほとんど使っていない扉を開ける。倉庫・・・いない。そして別の扉を開けた。

「え? アフタさん・・・。」

 彼女はそこにいた。そして何故か裸だった。いや違う。何故かというのは考えるまでも無い。風呂に入るのに服を着たままなんていう方がおかしいのだ。

「あ・・・すみません。」
 僕はそっと浴室の扉を閉めた。

 あああああああ!!!!!
 やっちまったぁぁぁぁぁ!!!!!!

 マズイ、マズイぞ。そういえば昨日、設備の話をしたときに風呂の件も伝えてあった。彼女がそれを聞いて入らないはずが無い。なんてこった、なんてこった、なんてこったぁぁぁぁぁ!!!! 早々にパーティー解消? 僕覗きの犯罪者? これはギルドカードに記録されるのか? もう冒険者ギルドに行けないぞ。

「あの、アフタさん、お風呂使わせてもらいました。給湯設備がきちんとしていて使いやすかったです。」
「あ・・・気に入ってもらえて幸いです。それとスミマセン。」

 彼女は怒ってはいないようだ。ちょっと苦笑気味、これはどう解釈すればいいんだろう? 僕自身は箱庭の浴室はまったく使っていなかった。せいぜいタオルで身体を拭く程度だ、僕が不潔なわけじゃ無いよ? お湯を沢山使う風呂は、魔晶石の消費が大きいから節約していたのだ。まあ、お金はあるし、後で魔晶石を買い足しておけば問題は無い。風呂好き魔術師スコヴィルに風呂に入るななんて言えるはずが無い。

「そういえば、さっきは何か用事があったんですよね?」
「は、はい、そうです。朝食を食べに行きませんか?」
「行きましょう。」

 そして僕達は朝食を食べるため街に移動した。今回は彼女がお勧めしているレストランに入った。このレストランの店長は、隣にあるパン屋の店長と兄弟らしい。そこから作りたてのパンが卸されていて、ホッカホカで食べることが出来るという。なるほど、この街にはそういうのもあったんだ。

「やっぱり作りたてのパンは美味しいですね。」
 そう言いながら彼女は今、パスタを口に入れている。パンとパスタのセットだからなんだけどね。それとソーセージとスープとサラダも付いている。これだけ出して1900シュネ。凄まじいぐらいに安いと思えるのは、第三層のせいだろう。

 一通り食べ終わったところで彼女は言った。
「それではミーティングをしましょう。」
「ミーティング?」
「本来はその日の終わりに反省と次の日の予定を決めるんですが、昨日は色々とあったので・・・。」

 そうか、パーティーを組んだらミーティングぐらいするよね。ソロで過ごしてきた僕には、そんなことは頭の片隅にすら存在していなかった。言われなければ一生気がつかなかったかも知れない。

「まずそれぞれの意思確認をしましょう。これをきちんとしておかないと、パーティーが崩壊することに繋がりかねません。」
 彼女の表情は真剣だ。それは彼女の経験に基づいてのことなのだろう。

「私の最終目標はダンジョン踏破をし、元の世界に戻ることです。アフタさんは?」
 聞かれて、その答えを即答することが出来なかった。ダンジョン踏破は確かに目標だ。しかし僕にはその先が無い。

「ダンジョン踏破はスコヴィルさんと同じです。ただ、そこから先は考えていません。」
 僕は正直に答えた。

「アフタさんは元の世界に戻る意思は無いんですか?」
「記憶が無いので、戻りたいかどうかというのが自分で分からないんです。もう少し正確に言えば、元の世界の記憶はあると言えばあるんですが、自分が誰だったのか、それに関連する部分だけすっぽり抜け落ちているんです。」
「分かりました。では逆に、この世界に残りたいという意思はありますか?」

 彼女の問いは、僕がずっと考えるのを避けてきたことのような気がする。目的・・・いや違う、意思が曖昧なのだ。僕が質問に答えられないでいると彼女は静かに言った。

「一緒に帰りませんか?」

 僕は・・・答えを出さなければならないのだろうか?
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