能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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五章 寒々ホワイト、第五層

113 書く言う言葉は核融合

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「アフタさん、終わりました。」
 目の前には魔法超強化スキルを持つ魔術師スコヴィルがいた。かなり疲れた顔をしている。

 僕は周囲を見渡す。何も無い。壁すら吹き飛んで大きく削れている。溶かされていると言った方が正しいかも知れない・僕達がいる場所以外何も無くなっている。床すら無い。いやたぶんどこかに底はあるんだろうけど、もはや光の届く範囲には何も無い。いや待てよ、そもそもボス部屋の光源ってどうなってるんだろう?

「さすが、疾風水神のスコヴィル。これほどとは恐れ入ったよ。」
 サドンがこれは参ったという顔をしている。

「作戦ではスコヴィルさんの魔法でトドメだったから予定通りなんですが・・・さっきの魔法は何なんですか?」
「水同士をぶつけ合う魔法らしいです。私の使える水系最強の魔法で超強化発動中しか使えません。原理は・・・よく分からないです。」
 彼女は疲れた表情をしつつも説明する。

「水をぶつけてそんな威力が出るはずが・・・。」
 少し考えて僕は驚愕の結論を導き出した。

「えっと、もしかして水の中の・・・水素の原子核をぶつけたりとか・・・。」
「よく分からないですが、そうかもしれません。」
「それ、衝突核融合・・・。」

「あの魔法はどちらかというと、防御の方が重要なんです。これも原理はよく分からないんですが、風の魔法で空間を裏返すというものです。必ずセットで使うようにと、私に魔法を教えてくれた人が言っていました。」
 誰だ、その人? 原理も分からない人間に核融合魔法を教えるなよ・・・。

「なかなか面白かったよ。まさか目の前で核融合が見られるとは。さて、この状況だと部屋が復元するまでしばらく待ちだね。」
 サドンは楽しそうだ。僕はあまりの恐ろしさに、ちょっと膝がガクガクしている。クリティカルスキルがチート過ぎると思ったけれどまだマシだ。核融合魔法の方がよっぽどマズイ。

「あの、アフタさん・・・。」
 スコヴィルが恐る恐るという感じで話しかけてきた。
「もしかして私とパーティーを組むのは・・・やめたいと思いましたか?」

 もしかしてスコヴィルパーティーが解散したのはコレが原因なのだろうか? 確かにこの威力を見たら、冒険をやめたくなる人も出るかも知れない。

「ちょっと驚きましたけど、そんなことは思いませんよ。第十層までいくなら、このぐらいの魔法があってちょうどいいぐらいです。」
「そうだね、これから敵はますます強くなる。もしかしたら今の魔法ですら通用しない相手がいるかも知れない。」
 いやサドン、もし核融合魔法が効かない相手がいたとしたら、僕はダンジョン踏破を諦めるぞ。

 そしてしばらく待っているとボス部屋が光り出し、何事も無かったかのように床や壁が復元する。そして宝箱と階段が出現した。

 サドンが格好良く宝箱を開く。なるほど、ああやって開けると格好良く開けられるんだと感心する動きだった。いや、宝箱を格好良く開けることに意味があるかどうかの是非は考えてはいけない。

 中にはアイテムが三つ入っていた。一つは透き通る刃を持つ剣だ。これは剣が主力のサドンが持つべきだろう。
「僕がもらっていいのかい?」
「使いこなせる人が持つのが一番だよ。僕の剣は腰に下げているだけで全く使ってないし。」
 そう、僕は伸びる剣をずっと腰に装備していたのだ。でも存在を忘れるほど、まったく使っていない。抜いたら錆びてましたとかありそうで怖い。

 次の一つは虹色の宝石がはめ込まれている杖だった。これはどう考えても魔術師に渡すべきだろう。
「ありがとうございます。どんな効果があるか分かりませんが、大切にしますね。」

 そして最後の一つ。まあ順当に行くと僕がもらっていいよね。いったいなんだろう? 僕は最後のアイテムを取り出した。

「ラバーカップ・・・。うえぇぇぇ?」

 そう、僕が今手にしているのは、それにしか見えなかった。ラバーカップと言ってもピンと来ない人もいるかも知れない。誰でも分かる言い方をすると「トイレのスッポン」だ。便器が詰まったときに重宝するアレだ。

 二人とも何も言わない。いや、言えないのだろう。自分たちはなにか凄そうなものをもらってしまった手前、何も言えないのだ。僕はラバーカップを天に翳す。

 しかし何も起こらなかった。

 さあ、とにかく第五層クリアだ。まだまだ先は長い。
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