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五章 寒々ホワイト、第五層
112 こりごりな氷
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「アフタ、何か気になることがあるのかい?」
ボス部屋控え室でサドンが僕に聞く。気になることはあるけれど、何を確認すればいいのか分からない。
「今はいい。ボス戦に集中しよう。」
今のところ、僕はそう答えるしか無かった。
「そうですね、油断ならない相手です。作戦通りで頑張りましょう。」
スコヴィルが気合いを入れるポーズをとる。
今回、初めてボス戦をパーティーを組んで行う。しかも、いつもの反則すれすれの技を使用せずに真っ向勝負だ。第五層まで来て初めてこれって、もう笑うしか無いよね?
僕達はボス部屋へ突入する。部屋の真ん中にいたのは氷の精霊グラキエ。女性の姿をしていて、目を閉じ宙に浮いている。灼熱の氷を使うという訳の分からないヤツだ。今回のボス戦で僕が出すのはアイボウのみ。残念ながら事前の実験で、ウーナのレーザ砲撃が精霊には効かないことが判明している。そしてイナゴンズはグラキエの範囲攻撃に耐えられない。
サドンは剣に魔力をチャージしている。魔法剣だ。さすが万能タイプ。そしてスコヴィルは周囲に風の防御結界っぽい魔法を張った後、強力な魔法の詠唱に入っていた。今まで彼女の詠唱をしている姿を見たことは無かった。全ての魔法を瞬間で発していたのだ。その彼女が時間をかけるというのは、これから放たれる魔法の強力さを物語っている。
こちらが攻撃準備を開始したとき、グラキエが僕達をターゲットとして認識する。反応距離には入っていないはず。もしかして準備だけでも戦闘開始状態になるんだろうか? つまり僕がやっているいつもの仕掛け設置は、攻撃の準備行動と認識されていなかったということだ。
「さあグラキエ、一曲お相手願おう!」
サドンは自らが囮となるため氷の精霊に近づく。距離を詰めるのは一瞬だった。彼は剣を振・・・らない。あれ? 気がつくとグラキエの右腕が宙を舞っていた。既に攻撃した後だったらしい。全然動きが見えないので、もう少しゆっくりお願いしたい。
吹き飛んだ腕はキラキラと光を放ちながら、細かい雪のように散っていった。その光景に見とれていると、強烈な熱さで意識が引き戻される。グラキエが目を開いていた。灼熱の氷、それが周囲にまき散らされていく。
僕が死なずに済んだのは、スコヴィルの予め張っておいた結界のおかげだ。周囲の灼熱の氷の大部分をせき止めてくれている。しかしグラキエの近くにいたサドンは直撃だ。その・・・ハズなんだけど、平気な顔で今度は左腕を切断していた。何だ? サドンを覆うあの理不尽なフィールドは?
しかし流石は第五層のボス。目の前では驚くことが起きていた。サドンが切断したグラキエの腕が灼熱の氷を吸収して復元を始めていた。そしてサドンの理不尽フィールドが耐久力の限界を迎えたのか、ついに溶かされ始めている。いったん身を引くサドン。そこへグラキエが復元した手をサドンに向けた。何かよく分からないものがサドンに向けて飛んだ。剣でその何かを叩き切るサドン。剣の切っ先から蒸気のようなものが上がっている。
再びグラキエがサドンを狙い、何かを放とうとする。しかしその動作は中断する。グラキエの喉元へ食らいつくアイボウ。作戦通り気配を消して近づいていたのだ。そのままアイスブレスを放つ。物理の噛みつきは精霊にはダメージにならないけれど、アイスブレスは魔力を含んでいるので有効らしい。しかし氷の精霊に冷凍攻撃がどこまで通じるのかは不明だ。
アイボウの攻撃でダメージが入ったかどうか分からない。しかしグラキエの動きを止めることには成功した。そこへついにスコヴィルの魔法が放たれる。とんでもない威力の魔法だというのは事前に聞いていた。だから僕は身構えたのだ。しかし彼女の前に出現したのは、宙に浮いた水滴が一粒。それがゆっくりとグラキエに向かって飛んでいく。
サドンは隙を突いて、今度は足にダメージを与えていく。攻撃は全てクリティカルヒットとなり、両足を切断する形となった。切り裂きジャックもびっくりだ。宙に浮いているとはいえ、足を攻撃されるとバランスがとれなくなるらしい。ダメージがどの程度入っているか相変わらず不透明だが、確実に動きが鈍くなっている。そしてサドンが僕の視界から姿を消す。
「さあ、来るぞ。アフタ、スコヴィルの側ギリギリまで移動して待避だ!」
いきなり僕の横から声が聞こえた。サドンが隣にいる。移動の様子が全く見えないんだけど、もしかしてテレポートでもしているんだろうか?
とにかく僕はスコヴィルの側へ移動する。ゆっくり移動していた水滴が、そろそろグラキエに接触する。アイボウも僕の元へ戻ってきた。僕はアイボウを箱庭へ収納する。
スコヴィルはまだ詠唱を続けている。さっきとは違う種類の魔法のようだ。表情はかなり必死、いったい次は何をするつもりなんだろう? 心なしか、周囲の気圧が下がっているような気がする。
そしてついに水滴がグラキエと接触した。結果、なんと言えばいいんだろうか? 時が止まった。いや、止まってはいないか。とりあえず音が伝わってこない。周囲がホワイトアウトしている。動くことは出来るけれど呼吸が出来ない。なんだこの状態は? 何が起こっているのかさっぱり分からなかった。
ボス部屋控え室でサドンが僕に聞く。気になることはあるけれど、何を確認すればいいのか分からない。
「今はいい。ボス戦に集中しよう。」
今のところ、僕はそう答えるしか無かった。
「そうですね、油断ならない相手です。作戦通りで頑張りましょう。」
スコヴィルが気合いを入れるポーズをとる。
今回、初めてボス戦をパーティーを組んで行う。しかも、いつもの反則すれすれの技を使用せずに真っ向勝負だ。第五層まで来て初めてこれって、もう笑うしか無いよね?
僕達はボス部屋へ突入する。部屋の真ん中にいたのは氷の精霊グラキエ。女性の姿をしていて、目を閉じ宙に浮いている。灼熱の氷を使うという訳の分からないヤツだ。今回のボス戦で僕が出すのはアイボウのみ。残念ながら事前の実験で、ウーナのレーザ砲撃が精霊には効かないことが判明している。そしてイナゴンズはグラキエの範囲攻撃に耐えられない。
サドンは剣に魔力をチャージしている。魔法剣だ。さすが万能タイプ。そしてスコヴィルは周囲に風の防御結界っぽい魔法を張った後、強力な魔法の詠唱に入っていた。今まで彼女の詠唱をしている姿を見たことは無かった。全ての魔法を瞬間で発していたのだ。その彼女が時間をかけるというのは、これから放たれる魔法の強力さを物語っている。
こちらが攻撃準備を開始したとき、グラキエが僕達をターゲットとして認識する。反応距離には入っていないはず。もしかして準備だけでも戦闘開始状態になるんだろうか? つまり僕がやっているいつもの仕掛け設置は、攻撃の準備行動と認識されていなかったということだ。
「さあグラキエ、一曲お相手願おう!」
サドンは自らが囮となるため氷の精霊に近づく。距離を詰めるのは一瞬だった。彼は剣を振・・・らない。あれ? 気がつくとグラキエの右腕が宙を舞っていた。既に攻撃した後だったらしい。全然動きが見えないので、もう少しゆっくりお願いしたい。
吹き飛んだ腕はキラキラと光を放ちながら、細かい雪のように散っていった。その光景に見とれていると、強烈な熱さで意識が引き戻される。グラキエが目を開いていた。灼熱の氷、それが周囲にまき散らされていく。
僕が死なずに済んだのは、スコヴィルの予め張っておいた結界のおかげだ。周囲の灼熱の氷の大部分をせき止めてくれている。しかしグラキエの近くにいたサドンは直撃だ。その・・・ハズなんだけど、平気な顔で今度は左腕を切断していた。何だ? サドンを覆うあの理不尽なフィールドは?
しかし流石は第五層のボス。目の前では驚くことが起きていた。サドンが切断したグラキエの腕が灼熱の氷を吸収して復元を始めていた。そしてサドンの理不尽フィールドが耐久力の限界を迎えたのか、ついに溶かされ始めている。いったん身を引くサドン。そこへグラキエが復元した手をサドンに向けた。何かよく分からないものがサドンに向けて飛んだ。剣でその何かを叩き切るサドン。剣の切っ先から蒸気のようなものが上がっている。
再びグラキエがサドンを狙い、何かを放とうとする。しかしその動作は中断する。グラキエの喉元へ食らいつくアイボウ。作戦通り気配を消して近づいていたのだ。そのままアイスブレスを放つ。物理の噛みつきは精霊にはダメージにならないけれど、アイスブレスは魔力を含んでいるので有効らしい。しかし氷の精霊に冷凍攻撃がどこまで通じるのかは不明だ。
アイボウの攻撃でダメージが入ったかどうか分からない。しかしグラキエの動きを止めることには成功した。そこへついにスコヴィルの魔法が放たれる。とんでもない威力の魔法だというのは事前に聞いていた。だから僕は身構えたのだ。しかし彼女の前に出現したのは、宙に浮いた水滴が一粒。それがゆっくりとグラキエに向かって飛んでいく。
サドンは隙を突いて、今度は足にダメージを与えていく。攻撃は全てクリティカルヒットとなり、両足を切断する形となった。切り裂きジャックもびっくりだ。宙に浮いているとはいえ、足を攻撃されるとバランスがとれなくなるらしい。ダメージがどの程度入っているか相変わらず不透明だが、確実に動きが鈍くなっている。そしてサドンが僕の視界から姿を消す。
「さあ、来るぞ。アフタ、スコヴィルの側ギリギリまで移動して待避だ!」
いきなり僕の横から声が聞こえた。サドンが隣にいる。移動の様子が全く見えないんだけど、もしかしてテレポートでもしているんだろうか?
とにかく僕はスコヴィルの側へ移動する。ゆっくり移動していた水滴が、そろそろグラキエに接触する。アイボウも僕の元へ戻ってきた。僕はアイボウを箱庭へ収納する。
スコヴィルはまだ詠唱を続けている。さっきとは違う種類の魔法のようだ。表情はかなり必死、いったい次は何をするつもりなんだろう? 心なしか、周囲の気圧が下がっているような気がする。
そしてついに水滴がグラキエと接触した。結果、なんと言えばいいんだろうか? 時が止まった。いや、止まってはいないか。とりあえず音が伝わってこない。周囲がホワイトアウトしている。動くことは出来るけれど呼吸が出来ない。なんだこの状態は? 何が起こっているのかさっぱり分からなかった。
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