能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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五章 寒々ホワイト、第五層

111 青い光がテラスを照らす

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 サドンが放つ強烈な言葉。AIギスケを作ったのは僕かどうか。ぶっちゃけ、身に覚えは・・・ある。

「正直は話、記憶が断片的に欠けているから分からないが答えだよ。ただ、自分で言うのも何だけど、その可能性は否定できない。というより、肯定要素がいくつかある。」
「そうか・・・分かった。それだけ答えてくれれば十分さ。この話はいずれ思い出したらでいい。」
 サドンは目を閉じて何かを考えている。そして再び目を開いて僕を見た。

「どうせ分かることだから今のうちに話しておく。この世界は既に仮想世界じゃない。元仮想世界で、今は異世界という現実世界だ。だからPC以外の人間も当然生きている。」
「うん・・・まあそんな気はしていたし、別に大丈夫だよ?」

 ちょっとだけ驚いたけれど、なんとなくそんな気はしていた。だからそこまでの衝撃は無い。それなのにサドンが言葉を発したときの表情はとても深刻だった。いつもの軽い感じとはほど遠い。いったい何が言いたいのだろう? 今のうちに話しておくという言い回しが気になる。

「そうか、まあ今はそれを頭の片隅に入れておいてくれるだけでいい。次はリコッテの件だ。彼女は君にとって何だ?」
「え? ただの幼なじみで、ちょっと苦手かな。」
「彼女と敵対したら戦えるかい?」
「いや、ちょっと待って。戦う? そんなことになったら逃げるよ、かなうはずが無いし。」

 さっきからサドンが何を言いたいのかさっぱり分からない。僕がAIの開発者だったとしてこの世界が仮想世界では無いことと、リコッテの件の繋がりが全く見えない。

「出来れば覚悟はしておいて欲しい。彼女は十中八九、ソルトシールダンジョンの守護者になる。」
「前にも言っていた気がするけど、守護者っていったい?」
「ダンジョンのラスボスといえば分かりやすいかな。」
「は?」
「彼女はたぶん大賢者リコリースの役割を継承している。はっきり言ってしまえば、君を追いかけてボリハ村を出たのが原因だ。」
「いったい・・・何を?」

 サドンは鋭い視線を僕に投げかける。イケメンのそういう表情はシャープで怖い。しかし怯んでいる場合じゃ無い。

「大賢者リコリースはそれを阻止するために、村を世界から隔離したんだ。国境(くにざかい)の要所にあったにも関わらず、外から来る人間はマレだったろう?」

 あまりの話に頭の理解が追いつかない。いや、実は理解は出来ている。しかし受け入れたくないのだ。

「アフタ、君はいつこの世界に来たんだい?」
「えっと、少なくとも9年以上前。」
「はあ、やっぱりそうか。」
 何がやっぱりなんだ? 僕もなんかおかしいとは思ってたけど。

「間違い無く、君は他のPCよりも後からこの世界に来ている。」
 いやいやいや、半年のスコヴィルより後なんてあり得ない。
 
「ボリハ村は時間の流れが他と違うのさ。思い当たる節は無いかい?」
「村を出てから一度も戻ってないんだから思い当たる事なんて無・・・くもない。」
 リコッテだ。彼女の成長具合、たぶんおかしい。

「今、ボリハ村は大貴族の荘園すら圧倒する一大経済圏に成長している。君が村にいたときからそんな感じだったのかい?」
「ぱっとしないただの農村だったはず。」

「リコッテとは戦いたくない、そういうことでいいのかい?」
 サドンの言葉に僕は力強く頷いた。リコッテは怖いけれど、嫌いでは無いのだ。戦うなんてあり得ない。

「僕はアフタを敵に回したくは無い。守護者よりも厄介だからね。ならやることは一つ。リコッテよりも早く第十層に到達すること。そしてソルトシールダンジョンの至宝を手にするんだ!」
 確かにそれならリコッテと戦わずに済む。ラスボスが配置につく前にクリアしてしまえば勝利が確定するのだ。しかし僕がリコッテよりも厄介というのは買いかぶりもいいところだろう。もし首狩りのサドンと戦ったら、瞬殺される自信がある。

 一応は道筋が決まったけれど、心なしか引っかかるものがある。何か見落としている気がするのだ。

「サドン、なにか重要なことを言い忘れてない?」
「さて、他に何かあったかな?」

 僕のカマかけに平然と答えるサドン。駄目だ、何か隠しているのかどうか読み取れない。

「ちなみにダンジョンは既に三つが攻略されている。双子の呪いと言われる戦争の発端になったものが二つ。もう一つはついこの間、ボロディアが踏破した。そして彼は次のダンジョンを攻略中だ。重要なことというと、このぐらいかな。」

 確かに重要な情報だけど、僕の心の引っかかりはずっとそのままだ。

「さて、方針は決まったことだし、第五層をサクッと攻略しようじゃないか。」

 サドンはテラスの先にある扉を指差した。
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