能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

文字の大きさ
131 / 208
六章 熱血沸騰、第六層

131 死線をくぐり抜けるかのごとき視線

しおりを挟む
 僕は時計を見る。午前8時だ。ちょっと意識が飛んでいた。少し頭が痛い。ロキソニンが主成分の頭痛薬を飲んだ。

 そうだ面会時間を調べていなかった。ええっと午前10時からか。一応、姉が泊まり込みで付き添っている。何か持って行った方がいいのかな?

 僕は外出するために着替える。外に出るのは本当に何年ぶりだろう? 僕は何年も履いていないスニーカーの中を確認する。コックローチの墓場と化していたらトラウマものだ。・・・どうやら大丈夫らしい。カビも生えていない。

 準備が整い玄関の扉に手をかける。何故か手にはじっとりと汗をかいている。取っ手を掴んだままの姿勢で時間だけが経過する。手に力が入らない。玄関の扉を開けるぐらい、そんなに力はいらないはずだ。通販で買った荷物が届いたときは平気で開けられるんだ。何をやっているんだ僕は。さあ、出かけるぞ。

「クソ!」

 僕は部屋に溜まったゴミに目を向ける。外に出られない理由など無い。逆に理由が無いから外出しなかっただけなのだ。姪が入院している。今は理由がある。それなのに何故、今は扉を開けることすら出来ないんだろう? 

「うぉぉぉぉ!!!!」

 僕は叫びながら玄関の扉を開ける。そのままの勢いで外に出た。ここはアパートの二階。久々に出た外は眩しくて、空気がヒンヤリとしていた。ここから見る景色はこんなに広かっただろうか? そしてたぶん隣の住人であろう人と目が合う。彼も出かけるところだったようだ。

 隣の住人はペコリと会釈すると、僕の前を通過していく。その時、再び部屋に舞い戻りたい気持ちでいっぱいだった。駄目だ、今戻ったら本当に二度と出られなくなる。

 そして僕は病院を目指した。


「あ、あ、の、面会を。」
 病院の受付で僕は不審者となっていた。親類以外の人間と最後に話したのは何年前のことだろう? 僕にその記憶は残っていない。
「こちらに記入をお願いします。」
 受付の女性が面会理由を記入する紙を差し出す。何故か握ったボールペンが震える。何とか書き終え、それを提出する。

「あ、辛(しん)。こっち。」
 突然誰かが僕を呼んだ。この声は姉だ。そして僕は風海の所へ案内された。

 姉の顔色は悪い。しばらく顔を見ていなかったけど、けっこう老けた? もともと年が離れた姉だけど、精神的にも肉体的にも疲労しているせいで、ますますそう見えるのかも知れない。

 僕は風海の病室に入る。彼女は眠っていた。ここが病院のベッドでなかったら、普通に眠っているようにしか思えない。顔色も悪くない。普通に寝息を立てている。姉の話だと意識が戻らないだけで、身体には何の異常も無い健康状態らしいのだ。

 僕は姉にネットの噂のことを話した。もちろん眉唾な話だというのは念を入れて説明した。その上で姉に一つ頼み事をした。風海の部屋を調べさせて欲しいと。特にPCに残っている履歴を確認すれば、何か分かるかも知れないからだ。

 姉は僕をIT系の専門家だと思っている。あくまで多少プログラムが組めて素人にしては詳しい程度だ。専門家に敵うものではない。しかし姉は僕に望みを託した。何か分かったら教えて欲しいと。姉はワラにもすがる気持ちなのだろう。

 僕は姉から鍵を受け取る。しばらくすれば義兄が帰ってくるから、鍵はその時渡して欲しいと言うことだった。義兄は会社を早退して、一度家に寄ってから着替えをここに持ってくる予定らしい。娘がこんな状況でも会社を休めないとは、サラリーマンとはなんと不自由な生き方だろう。

 そして僕は姉の家に向かう。移動中僕はずっと下を向いていた。とにかく人と目を合わせないためだ。時々人とぶつかりそうになる。その度に、ボソッとスイマセンと謝った。そんな自分が情けなかった。

 姉の家に到着し、預かった鍵で玄関の扉を開ける。僕が高校生だった頃この家に招待されて、姉と義兄と風海と僕で食事を食べた記憶がある。幼かった風海と、ボードゲームやトランプなどで遊んだ思い出が昨日のことのように蘇ってきた。

 僕は風海の部屋に入ってPCを確認する。薄型のノートPCだ。可愛らしいシールが貼られている。PCに装飾するのは熱が籠もるからお勧めできない。

 僕はPCを起動する。ログオン画面が出た。当然パスワードが分からないと先に進めない。オートログオン出来ると楽だったんだけど、一応認証が有効になっているようだ。ちなみにWindows系はログオン、Unix系はログインという言い方が標準的に使われている。

 僕はノートPCに自分のUSBメモリを挿した。そしてそこから僕が用意したOSを起動する。一般で使われているPCなんてセキュリティーは無いも同然だ。自分が管理者権限を持つOSを別に立ち上げてしまえば、ストレージの中は読み放題だ。

 そして僕は風海のユーザプロファイルを確認する。意識不明になるまでの足取りを追うためだ。見られたくない情報もあるだろう。僕は心の中で謝りながら内容を確認していく。やはりあのゲームに関するサイトに対するアクセスが多い。その他ショッピングサイトか。

 ん? これはもしや・・・BL系。かなり過激な・・・。どこに突っ込んでるんだ? いやそういうツッコミはやめよう。

 見なかった、僕は何も見なかったぞ!

 そしてゲーム本体を確認する。IDとPASSはPCに記憶する設定になっている。つまりそのままログイン出来る。僕はゴクリとツバを飲み込みゲームにログインした。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます! ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

無能と追放された結界師、三十路のおっさんですが17歳の辺境伯令嬢と婚約して人生逆転します

みかん畑
ファンタジー
無能と蔑まれ、Aランクパーティを追放された結界師フィン。 行き場を失った彼を拾ったのは、辺境伯の娘リリカだった。 国土結界の恩恵が届かない辺境で、フィンの結界は本当の価値を発揮していく。 領地再建、政治の駆け引き、そして少女のまっすぐな想い。 これは無能と呼ばれた男が、辺境で居場所を見つけ、やがて年の差婚へと至る物語。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

処理中です...