能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

文字の大きさ
147 / 208
七章 遺跡と迷宮、第七層

147 床にゆかりがある男

しおりを挟む
 氷の城、こんな巨大な建物は初めて見る。そしてこの全てが氷で出来ているというのだから驚くしかない。私たちは開け放たれた巨大な門を通り中へと入った。

「あ、冷たくないっす。」

 カッチェが床に頬を擦り付けながら言う。せめて床ではなく柱とか壁にすればいいのに、なぜ床で感触を確かめようと思ったのだろう? 私も手近な柱の感触を確かめてみる。確かに冷たくない。いや、冷たくないどころか温度を感じない。なんとも言えない感触だ。ただ手触りはツルッとしている。床もアイゼンを付けていなければ滑ってしまうほどだ。

「なんだかお茶が楽しめそうな場所があるわね。」

 目の前にはテーブルと椅子が用意され、外からの光が空間全体を明るくしている。いったい何故こんなものがあるのだろう?
 
「お茶、いいっすね。魔物の気配は無いっすよ。」
「どうやらこの先にボス部屋の扉があるようです。」
「一応目的地には着いたのね。じゃあ、いったん休憩にするわ。」

 私たちは魔法の袋からティーセットを取り出してお湯を沸かす。そういえばまだ保存食として購入したチョコレートが残っているはずだ。私がチョコを取り出すとカッチェがそれをじっと見ていた。
 
「食べたいの?」
「くれるんっすか? 一生ついて行くっす!」

 私がチョコを割って渡すとカッチェが飛び上がって喜ぶ。チョコレートごときで一生ついてこられても困る。そういえばアフタから、きび団子という食べ物を与えて動物を家来にするという話を聞いたことがある。一食分にも満たない食べ物をもらっただけで、身の危険を冒してまで戦うというのは、命の大安売りにもほどがあるだろう。

 そしてティータイムは終わる。とうとう第五層のボス、グラキエとの戦いだ。カンゾウがボス部屋の扉を開ける。さらにボス部屋の控え室に入り奥の扉を開く。
 
 ボス部屋の中心には青白い女性の姿をした魔物だった。あれがグラキエ。私は攻撃の準備に入る。
 
 サルミアキは防御魔法の詠唱に入った。私を含め魔術師は、この間は無防備に近い状態となる。私たちに敵の目標が向かないように、カンゾウが正面から突撃をかける。
 
 グラキエに向かうカンゾウの先に、霧のようなものが浮かんでいる。当然それに気づいたカンゾウは直前で踏みとどまる。距離をあけた状態のカンゾウはグラキエに何かを投げた。投げたものは氷が溶けるかのように、一瞬で消え去った。もしかしてあの霧のようなものが灼熱の氷なのだろうか?
 
「ハァァァァ!!!!」

 カンゾウは刀を一閃する。すると霧が避け、グラキエまでの道が出来る。すかさず突撃するカンゾウ。そして刀の間合いに入る。四・・いや五閃、グラキエに刀の攻撃が入る。するとグラキエの周囲にさっきよりも濃い霧が出現する。カンゾウはすぐに距離を開けて回避する。
 
 グラキエはカンゾウに切られた傷から、黒い蒸気のようなものが出ている。命を吸う妖刀、龍悪(りょうあ)。魔法しか効かないはずのグラキエに、なんらかのダメージを与えているようだ。
 
 ボン!
 それは突然だった。グラキエの頭が爆発したのだ。
 
「やってきたっす。純度の高い魔晶石を暴発させたっす。」

 カッチェの攻撃だ。カンゾウに意識が行っている間にグラキエの頭に爆発物を仕掛けてきたのだ。全然分からなかった。やはり気配を消すのは恐ろしいスキルだ。ちなみに高純度の魔晶石は一個で400万シュネほど。さすがに多用は考え物だ。
 
 しかしグラキエは倒れない。爆発した頭部がキラキラと光を放ちながら修復されていく。それと共に周囲にあの霧がまき散らされていく。幸いなことにサルミアキが作った結界魔法のおかげで、私のいる場所には全く霧が入ってこない。この結界は敵の攻撃を防ぎ、味方の攻撃を通す優れものだ。
 
 グラキエは動きを止めている。頭部を元に戻すのに忙しいのだろう。これはチャンスだ。そしてちょうど私の魔法が完成する。いつもの光魔砲だ。
 
「全員、放出経路から待避! いけぇぇぇぇ!!!」

 私の放った光魔砲が霧をものともせず貫いていく。そしてグラキエに直撃、全てが光に変わる。一瞬だけ修復の光が混ざったような気がするけれど、それすらも私の魔砲は叩き潰す。音は無く、ただ光だけが溢れていく。
 

「・・・終わったのかしら?」
「そのようですな。」
「相変わらず終わるときはあっさり終わるわね。」
「リコッテ様の魔法が無ければ、もっと時間がかかったでしょう。そして下手に時間をかければ違う攻撃が行われていた可能性もあります。問答無用で捻り潰す力があればこそです。」

 私の魔法は第五層のボスも瞬殺した。さて、次も同じ手が通用するのだろうか?
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

無能と追放された結界師、三十路のおっさんですが17歳の辺境伯令嬢と婚約して人生逆転します

みかん畑
ファンタジー
無能と蔑まれ、Aランクパーティを追放された結界師フィン。 行き場を失った彼を拾ったのは、辺境伯の娘リリカだった。 国土結界の恩恵が届かない辺境で、フィンの結界は本当の価値を発揮していく。 領地再建、政治の駆け引き、そして少女のまっすぐな想い。 これは無能と呼ばれた男が、辺境で居場所を見つけ、やがて年の差婚へと至る物語。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

処理中です...