能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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九章 魔境の森だよ、第九層

182 ヒロインが披露する拾う仕事は疲労する

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 魔境の森に一人で特攻をかけるブレア。一応、いざとなったらサドンがサポートに入る事になっている。
 
 森に踏み込んだブレアに最初に襲いかかったのは、人間と同じくらいのサイズがある黒い塊だった。一瞬でブレアに近づくと、突然形を変形させ巨大化し、彼女を包み込むような体勢に入った。

 ブレアはそんな状況を意に介しもせず、バーサーカーを発動させた。その影響は100メートルほど離れていた僕のところまで、強力なエネルギー波のような形で到達する。

 僕はその直撃を受け体中にダメージが入る。ちょっ・・・ヤバい、この距離でけっこう深刻なダメージを受けているんだけど? 僕は立っていられず膝をついた。サドンとスコヴィルは全然大丈夫のようだ。ステータスが違いすぎる。

 ちなみにバーサーカーの力の解放を間近で受けた黒い塊は、その存在を確認するのが不可能になった。どうやら一瞬で蒸発したらしい。そして僕の視界に見えるのは、ガッツリとえぐり取られ、見事に開拓が進んだ魔境の森の入り口だった。

「アフタさん、今、防御魔法を使いますね。」

 僕の様子を察したスコヴィルの防御魔法が発動する。ぶっちゃけ、さっきのエネルギー波をもう一発食らったら、僕は死ぬかも知れない。既に体がギッシギシだ。とりあえず今のうちにライフポーション(中)を飲んでおこう。

 僕がポーションを飲んでいる間にブレアはどんどん前進していく。遠くから見ていると、まるで草刈り機だ。圧倒的な力で、森に潜む魔物もろとも木々をなぎ払い更地に変えていく。とんでもないパワーとしか言い様がない。あの近くにいたら、例えサドンやスコヴィルだったとしても、かなりのダメージを負うことになるだろう。
 
 スバードから送られてくるデータを確認すると、魔物の反応がごっそりと消えている。ハッキリ言って無茶苦茶だ。ユニークスキル・バーサーカーは欠点を考えるまでも無く、近くにいたら味方もタダでは済まないということだ。僕だけは遠くにいてもタダで済んでいないけどね。

 とにかくブレアは順調に魔境の森を切り開いている。普通に進んでいたら、絶対に面倒な戦いになっていたはずだ。それを力だけでねじ伏せている。ヒロインフラグを持った僕は、勇者の後をただ付いていけば良いだけなのだ。楽ちんだなヒロイン。でも気をつけないとヒロインは貧弱だから死んじゃうよ。
 
 そしてヒロインである僕の仕事は、その辺りに散乱してる核やドロップアイテムを回収することだった。楽ちんだと思ったけれど意外と忙しい。しかもまだ体がギッシギシ状態で痛い。ロキソニンかボルタレンが欲しい。

 僕達三人は、ある程度の距離を確保しつつブレアの後に続いた。しかしあの状態、一体いつまで保つんだろう? 僕がそう考えていると、ブレアの前進が止まった。さすがに活動限界が来たようだ。

 状況を察したサドンが援護に向かう。ふとブレアの周囲をよく見ると、肉眼では非常に見にくい蒸気のような歪みが確認できた。ブレアを囲むように複数、おそらくアレも魔物だと思われる。間に合うか、サドン?

 次の瞬間、状況に変化が起きた。一瞬で吹き飛ばされるサドン。まさか、サドンですら太刀打ちできない敵が? しかし僕は自分の思い違いに気づいた。サドンを吹き飛ばしたのは、バーサーカーを再発動させたブレアだった。そのスキル、何回使えるんだ?

 ふたたび人間草刈り機として、木々をなぎ払っていくブレア。ぶっちゃけブレアは強すぎる。リコッテ達と対峙したときにアレを使っていたら・・・タイミング次第で僕が真っ先に死んでいただろう。

 そして魔境の森をかなり進んだところで、清らかな泉がある場所へ到達した。スバードによるとこの周囲だけ魔物の気配が無い。

「休憩。」

 ようやくブレアが本格的に前進するのをやめた。僕達はブレアと合流する。ちなみにさっき吹き飛ばされていたサドンは無事だった。さすがは前衛担当だけのことはある。ただ、変なところをぶつけたらしく頭にコブが出来ている。サドンの脳細胞はいくつぐらい死んだかな? まあ、どうでもいいか。

 どうやらこの周辺は、システム的に用意された休息ポイントのようだ。サドンがのどが渇いたと言って泉の水を飲んでいる。生水を飲んでも大丈夫かとちょっと心配になったけれど、毒をくらっても死ななかった男だし、いちいち気にするのはやめておこう。

「どうやらこの泉の水は治癒効果があるようだね。」

 サドンはコブがあった場所をさすりながら言った。生水は薬だったらしい。
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