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終章 変態アフタの第十層

206 全てが終わったアフターも、ヘンタイで終わるアフタ

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 ここはAIリコリスがその存在を維持するのに必要なシステム空間だ。そして僕はそこにいる。全ての防壁を突破した今、リコリスは完全に無防備だ。後は僕が停止を命令すればそれで終わりだ。リコリスから異世界の話を聞いた僕は、話を本題に戻した。

「答えは何か分かったかい?」
「ううん。」

 リコリスは首を振った。彼女はまだ、僕がこの世界で何を学んだのか理解できないようだ。

「僕はずっと一人で戦おうとしていた。でもそれじゃ駄目なんだ。僕がここまで来られたのは仲間がいたおかげなんだよ。」
 そう、それがこの世界へ来て僕が出した答えだ。

「仲間?」
「そう、仲間だ。」
 リコリスは首をかしげるような仕草を見せた。

「仲間なら私にもいたよ。」
「ベルグレストとは利用し合うだけの関係だったはずだ。仲間とは言えないよ。」
「じゃあ、仲間って何?」
「ベルグレストはお前がピンチになったら、命を賭(と)して助けに来てくれたと思うかい?」
「・・・思わない。」

 今度は寂しそうに俯(うつむ)いた。

「それが出来るのが仲間なんだ。僕はここでそんな仲間を見つけることが出来た。」
「みんな一緒になるんじゃ駄目なの?」
「それじゃ、結局一人と変わらないよ。」
「じゃあ、私はどうすれば良かったの?」

 泣きそうな声を上げるリコリス。

「色々な人とふれ合って、そして自分なりの仲間を見つければいいんだ。」
「無理。私には無理よ。」
「こうなった原因は僕にある。だからリコリス、今度こそ・・・正解を見つけて欲しい。」
「今更、正解なんて見つけられない!」

 彼女はとうとう泣き出しながら叫んだ。彼女は既に人間と同じ感情を持つ存在となっていたのだ。しかしそれでもやらなければならない。

「もう一度やり直せるように、必ず僕が何とかする。それまでしばらく眠っているんだ。」

 そして僕はリコリスのシステムを停止させた。今度こそ・・・戦いは終わった。

 AIリコリスの停止と共に、ボロディアに管理者権限が戻る。するとボロディアは即座に異世界から送られてきた魔力を、仮想世界全体に配っていった。仮想から実体へと変化していく。不安定だった世界の安定化が始まった。

 僕は自分の意識をシステムから切断した。聴覚と視覚が元の状態に戻る。そしてゲキカランから降りた。外ではどうやら至宝の始末も終わっていたようだ。全員無事で僕を迎えてくれた。

「お帰りアフタ。さすがは僕達のリーダだね。完璧な作戦だった。」
 いやサドン、完全に行き当たりばったりで、作戦なんて全然無かったんだけど・・・。

「アフタさん・・・グス・・・ようやく・・・終わりましたね。一緒に帰りましょう。」
 スコヴィルが涙目になっている。彼女を無事に元の世界に帰す、僕の当初の目的は果たせそうだ。

「約束、忘れないで。」
 ブレアが約束の履行を求めてくる。さて、どうしたものか。

「兄貴、結婚して欲しいっす。」
 カッチェ、だが断る!

「さあ、そっちに待ち人がいるぞ。」
 ギルダインが指さす先、そこにはリコッテが立っていた。リコッテはトコトコと歩いてくる。

「アフタ・・・とりあえずそれをとったら?」
「え?」
「それよ、ああもう、ブラよ。いつまでかぶってるつもり?」
 あまりにも完璧にフィットしていたため、その存在を自然な感じでスルーしていた。

 そう、僕は最後までヘンタイだった。

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