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本編 魔神の誕生と滅びの帝都
36 無念の胸と無の境地
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宮殿の様子が慌ただしい。
魔族との戦いに備えて準備が始まっている。
俺の立場は宮廷魔術師サイアグの弟子で皇女エスフェリアの近衛ということになっている。
そしてこの騒ぎでサイアグが多忙を極めているため、俺はエスフェリアの護衛の仕事をするのみとなっている。
周りがこれだけ忙しいのに、俺はぶっちゃけ暇だ。
しかし申し訳ない気分にはならない。
何故ならそもそも俺は異世界人であり、確かに一宿一飯の恩義が積み重なってはいるが、それは迷惑料だ。
俺はエスフェリアの警護をしているふりをしながら、サイアグから読んでおけと言われた書物に目を通していた。
エスフェリア自身も、彼女の張り巡らせた目からの報告受けたり、書類に目を通したりしている。
アグレスが主体でスパイ網の根を宮殿内に張っているようだ。
恐るべしアグレス、胸が少々大きめなだけの女では無い。
ちなみに胸の大きさを正確に測定すると一応セクハラになりそうだから、スキルを発動して計算してしまわないように脳内で封じている。
時として無意識でやってしまうことがあるから、なかなか危険なのだ。
そんな中、俺は聖騎士長ゼギスから呼び出しを受けた。
叙勲式の時以外では面識が無いのだが、いったい何の用だろう?
俺はゼギスの執務室へ向かう。
一応ノックして中に入ると、ゼギスの他に人物が一人いた。
禿げ上がった頭が特徴的な老練な感じの聖騎士だ。
俺の顔を見た禿げの聖騎士は、ニヤリとニヒルな笑顔を向けた。
どう反応すればいいんだ?
結局、意図が読めなかった俺は黙って禿げの騎士を見た。
そして禿げの騎士は、特に俺に何かを語るわけでも無く部屋を出て行った。
「ギスケ、わざわざすまないな。」
禿げの騎士が出て行ったところで、ゼギスが話しかけてきた。
「こんなクソ忙しいときに呼び出したんだ。
何か重要な用があるんだろ?」
「いや、そうでもない。
非常に個人的なことだよ。」
「個人的なこと?」
「娘のことだ。
イリンのことは分かっているだろう?」
「ああ、もちろん。
色々と世話になった。
この国の人間の中では、感謝リストの最上位にいる。」
「そうか・・・。
イリンは君のことを色々と話してくれたよ。
あんなに楽しそうに話すのは、妻が亡くなって以来無かった。
知っているとは思うがイリンは今、グラビデン砦にやった。
もし再び会うことがあれば、イリンを頼めないか?」
「何故俺に頼む?」
「直感という奴かな。
伊達に聖騎士長なんぞやっているわけではない。
私は直感だけには自信があるのだよ。
だからこの後の戦いがいかに厳しいものになるかは分かっている。
そしてイリンは君のそばにいた方が、笑顔でいられる。」
結果を知っている俺は、ゼギスに「自分で笑顔にしてやれよ」と言う言葉を返すことが出来なかった。
「分かった。
できる限りのことはしよう。
だが、勘違いはするなよ。
あんたの頼みだからじゃ無い。
俺がそうしたいからするだけだ。」
「ああ、そうだな。
その方がいい。
それから、こう伝えてくれ。
『お前は強くなる、そして聖騎士長ゼギスよりも強くなれ』と。」
「そこは『愛している』とかじゃないのか?」
定番だよな。
「それはいつも言っているから大丈夫だ。」
「へえ・・・そうか。」
とんでもなく溺愛しているようだ。
「時間を取らせて悪かった。
この後は君の仕事をきっちりと果たすといい。
私が言うまでも無く理解しているだろうが、一筋縄ではいかないぞ。」
そして俺はゼギスの執務室を後にした。
魔族との戦いに備えて準備が始まっている。
俺の立場は宮廷魔術師サイアグの弟子で皇女エスフェリアの近衛ということになっている。
そしてこの騒ぎでサイアグが多忙を極めているため、俺はエスフェリアの護衛の仕事をするのみとなっている。
周りがこれだけ忙しいのに、俺はぶっちゃけ暇だ。
しかし申し訳ない気分にはならない。
何故ならそもそも俺は異世界人であり、確かに一宿一飯の恩義が積み重なってはいるが、それは迷惑料だ。
俺はエスフェリアの警護をしているふりをしながら、サイアグから読んでおけと言われた書物に目を通していた。
エスフェリア自身も、彼女の張り巡らせた目からの報告受けたり、書類に目を通したりしている。
アグレスが主体でスパイ網の根を宮殿内に張っているようだ。
恐るべしアグレス、胸が少々大きめなだけの女では無い。
ちなみに胸の大きさを正確に測定すると一応セクハラになりそうだから、スキルを発動して計算してしまわないように脳内で封じている。
時として無意識でやってしまうことがあるから、なかなか危険なのだ。
そんな中、俺は聖騎士長ゼギスから呼び出しを受けた。
叙勲式の時以外では面識が無いのだが、いったい何の用だろう?
俺はゼギスの執務室へ向かう。
一応ノックして中に入ると、ゼギスの他に人物が一人いた。
禿げ上がった頭が特徴的な老練な感じの聖騎士だ。
俺の顔を見た禿げの聖騎士は、ニヤリとニヒルな笑顔を向けた。
どう反応すればいいんだ?
結局、意図が読めなかった俺は黙って禿げの騎士を見た。
そして禿げの騎士は、特に俺に何かを語るわけでも無く部屋を出て行った。
「ギスケ、わざわざすまないな。」
禿げの騎士が出て行ったところで、ゼギスが話しかけてきた。
「こんなクソ忙しいときに呼び出したんだ。
何か重要な用があるんだろ?」
「いや、そうでもない。
非常に個人的なことだよ。」
「個人的なこと?」
「娘のことだ。
イリンのことは分かっているだろう?」
「ああ、もちろん。
色々と世話になった。
この国の人間の中では、感謝リストの最上位にいる。」
「そうか・・・。
イリンは君のことを色々と話してくれたよ。
あんなに楽しそうに話すのは、妻が亡くなって以来無かった。
知っているとは思うがイリンは今、グラビデン砦にやった。
もし再び会うことがあれば、イリンを頼めないか?」
「何故俺に頼む?」
「直感という奴かな。
伊達に聖騎士長なんぞやっているわけではない。
私は直感だけには自信があるのだよ。
だからこの後の戦いがいかに厳しいものになるかは分かっている。
そしてイリンは君のそばにいた方が、笑顔でいられる。」
結果を知っている俺は、ゼギスに「自分で笑顔にしてやれよ」と言う言葉を返すことが出来なかった。
「分かった。
できる限りのことはしよう。
だが、勘違いはするなよ。
あんたの頼みだからじゃ無い。
俺がそうしたいからするだけだ。」
「ああ、そうだな。
その方がいい。
それから、こう伝えてくれ。
『お前は強くなる、そして聖騎士長ゼギスよりも強くなれ』と。」
「そこは『愛している』とかじゃないのか?」
定番だよな。
「それはいつも言っているから大丈夫だ。」
「へえ・・・そうか。」
とんでもなく溺愛しているようだ。
「時間を取らせて悪かった。
この後は君の仕事をきっちりと果たすといい。
私が言うまでも無く理解しているだろうが、一筋縄ではいかないぞ。」
そして俺はゼギスの執務室を後にした。
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