異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた

ふぉ

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本編 魔神の誕生と滅びの帝都

51 運び込まれる箱

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 想定していなかった事態が起きた。
 弓が次々に壊れたのだ。
 想定以上の力をかけたのだから当然だろう。
 当然なのだが、俺は弓の耐久力なんてこれっぽっちも計算に入れていなかった。
 今更ながらにさくっと材質と構造から耐久度を割り出したら、余裕でぶっ壊れる力がかかっていた。

 さっきの攻撃で削れた敵兵力は百というところか。
 さあ残り千九百。
 楽しくなってきたぜ。

 そんな時、フェルベルドが非戦闘部隊に指示を出していた。
 何かを持ってこいと言っているようだ。

「オヌシのあの魔法はどのぐらい維持できるのじゃ?」

 突然すぐ隣からケルガの声がした。
 いつからいたのかさっぱり分からない。
 コイツ、本当にただの参謀なのか?

「小一時間ぐらいは保(も)つはずだ。
 砦周囲の魔力を吸いながら力を維持しているんだが、俺自身が魔力を感じされないのでおおよそだ。」

 ちなみに探知魔法では、空気中の薄い魔力を量ることは出来ない。
 この辺りはいずれ改善していく必要があるだろう。

「では、何とかなるかもしれんのぉ。」

 ケルガが言った。
 そしてフェルベルドが指示していた武器が運び込まれてくる。
 大弓(だいきゅう)、しかも金属製。
 それが次々に配られていく。

「あれは?」

 俺はケルガに聞いた。

「昔とある弓の名人がおってな、それはそれは凄まじい力で強弓を放つ男じゃった。
 それを見たとある貴族が軍の金を使って、その男が使っていた弓と同じ物を作らせたのじゃ。
 大量にな。
 けれど作ったは良いが、堅すぎて誰も扱えない。
 処分に困っていた不良在庫となり押し付け合いの末、この砦の倉庫に放り込まれておったのじゃ。」

 どうしようも無い話だ。
 そしてさらなる不良在庫と思われる鉄の矢が箱で運び込まれてくる。
 鉄の矢と聞くと強そうではあるが、鏃(やじり)の部分ならともかく、シャフトまで鉄で作ると、重すぎて人間の筋力ではまともに飛ばすことは出来ない。
 しかも矢の長さが、通常の1.5倍になっている。

 フェルベルドが兵士達に大弓の装備を指示する。
 兵士達は弓を装備し弦を引く。
 弓がしなる。
 どうやら魔法の効果で扱えるようになっているらしい。

 兵士達の準備を確認し、フェルベルドが号令をかける。

「撃てぇ!」

 鉄の矢が魔物達に向かって飛んでいく。
 慣れていないせいもあって、一部トンチンカンな方向へ飛んで行ってしまったものもあるが、到達した矢はオークの盾を軽々と貫通しさらに数匹の魔物を貫いていく。
 凄まじい威力だ。

 状況が不利になった敵側に何らかの指示が出たようだ。
 生き残っているオーク達が盾を捨て、速度を上げて一気に突入してくる。
 さらにハシゴと持ったゴブリン達が後に続く。

「第二波、準備!」

 フェルベルドが号令をかける。
 大弓を持った兵士達が弦を力一杯引き絞る。
 一発目よりも様になっている。

「撃てぇ!」

 再び放たれる鉄の矢。
 砦に向かって突撃してくる魔物達は格好の的となって貫かれていく。

 俺はその突撃の中心に向かって、風と炎を合成した魔法を放つ。
 音が大きく、圧縮空気の衝撃が激しいだけの、魔力消費の少ない張りぼて魔法だ。

 すでに先頭を行く味方は、鉄の矢の餌食となっている。
 そんな中、突如、自軍の中で爆発音と衝撃が発生したらどうなるか。
 魔物達は大混乱となった。
 特にハシゴを持っていたゴブリン達の狼狽ぶりが酷かった。
 あっさりとハシゴを捨て、四方八方へ散ろうとした。

「撃てぇ!」

 砦から響くフェルベルドの号令。
 「撃てぇ」を「待てぃ」に変えたら、どこかの芸人と同じになるんじゃないかと、下らないことが頭をよぎった。
 隊列が乱れ、鉄の矢というあの世への片道切符を手にする魔物達。

「どうやら勝負は付いたみたいだな。」

 俺の言葉に黙って頷くケルガ。
 今回の勝利は、どうしようもない不良在庫を作ってくれた、名も知らぬ貴族に捧げよう。
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