52 / 52
本編 魔神の誕生と滅びの帝都
52 俺達の恥ずかしい冒険は恥増ったばかりだ!
しおりを挟む
「どうぞ。」
イリンが俺に水の入ったカップを差し出してくる。
「ああ、悪いな。」
俺はそれを受け取るとゴクゴクと飲んだ。
働いた後の一杯は格別だ。
イリンは俺が水を飲むのを見届けると、他の兵士にも水を配り始める。
彼女はいつの間にか雑用を引き受けているようだ。
今回の戦闘では特に被害は出なかった。
いや、正確に言うと一部被害が出ている。
大弓の扱いに失敗して耳や指を吹き飛ばしてしまった者が幾人か出ているようだ。
魔法で筋力が上がったとはいえ、技量を無視して力押ししたのだ。
弦を離したときに指が引っかかったり、耳を挟んだりしてしまったのだ。
恐るべし弦のパワー。
俺は疲労回復の疑似魔術回路を自分に展開した。
念のため、ある程度のテレキネシスの使用に耐えうる程度には回復しておく必要がある。
突然大軍を率いて敵が戻ってくるとも限らないからだ。
ただし砦に含まれる魔力が戻るまでどの程度かかるか未知数だ。
出来ればこのまま戻ってこないことを祈るばかりだ。
「お疲れ様です、ギスケ。」
エスフェリアだ。
後ろにはアグレスが控えている。
「よく来られたな。
引き留められなかったのか?」
最重要人物であるエスフェリアは、砦の奥の一番安全な場所に隔離されていたのだ。
「ギスケのそばにいる方が安全だという話を懇々としたら、ようやく納得してくれました。」
エスフェリアの周りには、騎士達が護衛に付いている。
もともと死兵となっている騎兵部隊なので、護衛でもしていないと給料泥棒となってしまうだろう。
「たまたま大弓があったから勝てたが、無かったらどうなっていたことやら。」
実際、あれが無かったら砦は落とされていた可能性が高い。
「たまたまではありませんよ。」
エスフェリアがにっこりと微笑む。
「まさかとは思うが、ここにアレを運び込ませたのは?」
「武器の置き場所に困っていた方がいるようでしたので、良い保管場所を紹介しただけです。」
もしかして以前にエスフェリアが書いていた書状がそれなのか?
「大弓が無いパターンだとどうなるんだ?」
俺はエスフェリアに聞いた。
「犠牲は出ますが、ギスケの機転で勝利しますよ。
今回はできる限りの最善を目指しています。」
あの状況でどんな機転を働かせたのか、全く想像できないんだが。
どれだけ優秀なんだよ、死に戻り前の俺。
「少々、以前の周回と敵の動きが異なってしまってはいますが、恐らくこの後に砦が攻められることは無いはずです。
この後は実質的に別の戦いが待っています。」
「別の戦い?」
「第二皇子派との権力争いです。
そして周辺諸国からの介入を退けなければなりません。」
「魔王との戦いはどうなるんだ?」
「この後、魔王アストレイアは魔領に引き返します。
理由は明確ではありません。
いくつかの推測の中で一番可能性が高いのは、出産の為という理由です。」
「出産?」
「魔王種は子供を産むために、大量の人間の魂を必要とするそうです。」
「今回攻めてきたのはそれが理由なのか?」
「確実なことは言えませんが、その可能性が高いのです。」
子供を産むのに人間を大量にぶっ殺さなければならないって、魔王種ってのはとんでもない種族だ。
こうして俺はエスフェリアの策略に乗せられ、ずるずると深みにはまっていくことになる。
魔族との戦いをするのかと思ったら、次の相手は人間だという。
このときの俺は知る術(すべ)が無かったが、今度は隣接世界からこの世界を滅ぼそうとする敵と戦うことになる。
そして神の世界というところからも、人間を奴隷にするために敵がやってくるのだ。
さらに俺が元の世界に置いてきた演算ライブラリGISUKEの巻き起こした騒動で、ますます厄介なことになるのだった。
混沌とした戦いの日々は、まだ始まってもいなかった。
------------------------
一章終了です。
今回は色々と書き方に失敗しました。
反省を生かすために、いったん別作品の執筆を試したいと思います。
ということで別作品が書き終わるまで、長期休載となります。
イリンが俺に水の入ったカップを差し出してくる。
「ああ、悪いな。」
俺はそれを受け取るとゴクゴクと飲んだ。
働いた後の一杯は格別だ。
イリンは俺が水を飲むのを見届けると、他の兵士にも水を配り始める。
彼女はいつの間にか雑用を引き受けているようだ。
今回の戦闘では特に被害は出なかった。
いや、正確に言うと一部被害が出ている。
大弓の扱いに失敗して耳や指を吹き飛ばしてしまった者が幾人か出ているようだ。
魔法で筋力が上がったとはいえ、技量を無視して力押ししたのだ。
弦を離したときに指が引っかかったり、耳を挟んだりしてしまったのだ。
恐るべし弦のパワー。
俺は疲労回復の疑似魔術回路を自分に展開した。
念のため、ある程度のテレキネシスの使用に耐えうる程度には回復しておく必要がある。
突然大軍を率いて敵が戻ってくるとも限らないからだ。
ただし砦に含まれる魔力が戻るまでどの程度かかるか未知数だ。
出来ればこのまま戻ってこないことを祈るばかりだ。
「お疲れ様です、ギスケ。」
エスフェリアだ。
後ろにはアグレスが控えている。
「よく来られたな。
引き留められなかったのか?」
最重要人物であるエスフェリアは、砦の奥の一番安全な場所に隔離されていたのだ。
「ギスケのそばにいる方が安全だという話を懇々としたら、ようやく納得してくれました。」
エスフェリアの周りには、騎士達が護衛に付いている。
もともと死兵となっている騎兵部隊なので、護衛でもしていないと給料泥棒となってしまうだろう。
「たまたま大弓があったから勝てたが、無かったらどうなっていたことやら。」
実際、あれが無かったら砦は落とされていた可能性が高い。
「たまたまではありませんよ。」
エスフェリアがにっこりと微笑む。
「まさかとは思うが、ここにアレを運び込ませたのは?」
「武器の置き場所に困っていた方がいるようでしたので、良い保管場所を紹介しただけです。」
もしかして以前にエスフェリアが書いていた書状がそれなのか?
「大弓が無いパターンだとどうなるんだ?」
俺はエスフェリアに聞いた。
「犠牲は出ますが、ギスケの機転で勝利しますよ。
今回はできる限りの最善を目指しています。」
あの状況でどんな機転を働かせたのか、全く想像できないんだが。
どれだけ優秀なんだよ、死に戻り前の俺。
「少々、以前の周回と敵の動きが異なってしまってはいますが、恐らくこの後に砦が攻められることは無いはずです。
この後は実質的に別の戦いが待っています。」
「別の戦い?」
「第二皇子派との権力争いです。
そして周辺諸国からの介入を退けなければなりません。」
「魔王との戦いはどうなるんだ?」
「この後、魔王アストレイアは魔領に引き返します。
理由は明確ではありません。
いくつかの推測の中で一番可能性が高いのは、出産の為という理由です。」
「出産?」
「魔王種は子供を産むために、大量の人間の魂を必要とするそうです。」
「今回攻めてきたのはそれが理由なのか?」
「確実なことは言えませんが、その可能性が高いのです。」
子供を産むのに人間を大量にぶっ殺さなければならないって、魔王種ってのはとんでもない種族だ。
こうして俺はエスフェリアの策略に乗せられ、ずるずると深みにはまっていくことになる。
魔族との戦いをするのかと思ったら、次の相手は人間だという。
このときの俺は知る術(すべ)が無かったが、今度は隣接世界からこの世界を滅ぼそうとする敵と戦うことになる。
そして神の世界というところからも、人間を奴隷にするために敵がやってくるのだ。
さらに俺が元の世界に置いてきた演算ライブラリGISUKEの巻き起こした騒動で、ますます厄介なことになるのだった。
混沌とした戦いの日々は、まだ始まってもいなかった。
------------------------
一章終了です。
今回は色々と書き方に失敗しました。
反省を生かすために、いったん別作品の執筆を試したいと思います。
ということで別作品が書き終わるまで、長期休載となります。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる