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第1章
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「今宵は月も綺麗に出ております。てっきり例の催しをなさるのだとばかり思っておりましたのですが」
「例の催し…?」
「はい。エルフ族による舞の催しでございます」
エルフの舞……?
一体何をしていたのかしら、前の私って。
そう思いながら侍女たちに隅々まで綺麗にして貰い湯船に肩まで浸かっているとマロンが慌てた様子で風呂場に入って来た。
なんだか表情が堅苦しいように見える。
「アレーレ様、ご入浴中に大変申し訳あり在りません。実は突然ヨーク公爵の御嫡男様がお見えになりましてアレーレ様とお会いしたいと、今大広間にてお待ちしております」
ヨーク公爵の嫡男……?
誰だったかしら、私遭ったことあるわよね、前の私って。
なんだかマロンの表情が強張っているのが可哀そうになりマロンに落ち着くよう声を掛けた。
すると傍にいた侍女たちが驚いた表情をして私を見つめた。
何かまずい事でも口走ったのかしら。
「サロン、そろそろ出ることにするわ。客人を待たせるのは気が引けます」
「か、畏まりました。直ぐに準備をっ」
「それからマロンは私と一緒に来るのですよ、いいですわね?」
「はいっ! アレーレ様っ」
何だか変な態度だわね。
私ってもっと凄い剣幕で怒鳴り散らしてたりしたのかしら。
まぁいいわ、早く公爵の嫡男とやらの所に出向かなくっちゃ。
そう思い湯船から出るとシルク生地の肌触りの良いタオルを持ったモロとソロが丁寧に体についた水滴をふき取ってくれた。
サロンは客人用にと新しいドレスを用意して脱衣所で待機している。
長い髪に付着した水滴をふき取って貰うとサロンが手際よく私にドレスを着させてくれた。
この世界に来たばかりだというのに何故か勝手に体がすんなり動く、これは前のアレーレの記憶なのだろうか。
「さぁ、参りましょう」
優雅に美しくを頭に浮かべながら堂々と歩き付き人としてマロンを連れ大広間に行くと大きなソファに座るイケメン男子が立ち上がりお辞儀をしていた。
私はそのままイケメン男子の目の前で立ち止まると一礼し彼の真正面のソファに腰かけた。
彼も同じようにソファに腰掛ける。
「突然お邪魔し大変な無礼をお許しください。アレーレ嬢」
開口一番彼がそう言って私に頭を下げた。
別に寝る前だったし東京じゃこの時間テレビを観ててあははと笑う時間帯なのだけれど、ここはそういう世界じゃないのよね。
ここはバシッと言ってやろうかしら。
「突然こんな夜更けにどうなされたのです。アンドレ―様」
頭にフッと彼の名が浮かんだ。
これも又以前のアレーレの記憶なのだろうか。
それしてもこの貴族って言うのはいちいち面倒くさいったらあらしないと思ってしまう。
「はい。実はアレーレ嬢の御父上から私の父へ今回の婚儀についてお話がありまして、アレーレ嬢が難色を示されているとお聞きしたものですから居ても立ってもいられなかったのです」
ああ、あの話の事か。
私は持っていたセンスのようなものを広げ口元にやるとニヤリと笑いながら話をした。
「例の催し…?」
「はい。エルフ族による舞の催しでございます」
エルフの舞……?
一体何をしていたのかしら、前の私って。
そう思いながら侍女たちに隅々まで綺麗にして貰い湯船に肩まで浸かっているとマロンが慌てた様子で風呂場に入って来た。
なんだか表情が堅苦しいように見える。
「アレーレ様、ご入浴中に大変申し訳あり在りません。実は突然ヨーク公爵の御嫡男様がお見えになりましてアレーレ様とお会いしたいと、今大広間にてお待ちしております」
ヨーク公爵の嫡男……?
誰だったかしら、私遭ったことあるわよね、前の私って。
なんだかマロンの表情が強張っているのが可哀そうになりマロンに落ち着くよう声を掛けた。
すると傍にいた侍女たちが驚いた表情をして私を見つめた。
何かまずい事でも口走ったのかしら。
「サロン、そろそろ出ることにするわ。客人を待たせるのは気が引けます」
「か、畏まりました。直ぐに準備をっ」
「それからマロンは私と一緒に来るのですよ、いいですわね?」
「はいっ! アレーレ様っ」
何だか変な態度だわね。
私ってもっと凄い剣幕で怒鳴り散らしてたりしたのかしら。
まぁいいわ、早く公爵の嫡男とやらの所に出向かなくっちゃ。
そう思い湯船から出るとシルク生地の肌触りの良いタオルを持ったモロとソロが丁寧に体についた水滴をふき取ってくれた。
サロンは客人用にと新しいドレスを用意して脱衣所で待機している。
長い髪に付着した水滴をふき取って貰うとサロンが手際よく私にドレスを着させてくれた。
この世界に来たばかりだというのに何故か勝手に体がすんなり動く、これは前のアレーレの記憶なのだろうか。
「さぁ、参りましょう」
優雅に美しくを頭に浮かべながら堂々と歩き付き人としてマロンを連れ大広間に行くと大きなソファに座るイケメン男子が立ち上がりお辞儀をしていた。
私はそのままイケメン男子の目の前で立ち止まると一礼し彼の真正面のソファに腰かけた。
彼も同じようにソファに腰掛ける。
「突然お邪魔し大変な無礼をお許しください。アレーレ嬢」
開口一番彼がそう言って私に頭を下げた。
別に寝る前だったし東京じゃこの時間テレビを観ててあははと笑う時間帯なのだけれど、ここはそういう世界じゃないのよね。
ここはバシッと言ってやろうかしら。
「突然こんな夜更けにどうなされたのです。アンドレ―様」
頭にフッと彼の名が浮かんだ。
これも又以前のアレーレの記憶なのだろうか。
それしてもこの貴族って言うのはいちいち面倒くさいったらあらしないと思ってしまう。
「はい。実はアレーレ嬢の御父上から私の父へ今回の婚儀についてお話がありまして、アレーレ嬢が難色を示されているとお聞きしたものですから居ても立ってもいられなかったのです」
ああ、あの話の事か。
私は持っていたセンスのようなものを広げ口元にやるとニヤリと笑いながら話をした。
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