復讐のレヴェヨン

猫屋敷 鏡風

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défendu

アメリー・ミシュレ/ルイ・シャノワーヌ

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孤児院の自室でルイと禁断の同居生活を初めてから数ヶ月。この生活もとうに慣れて当たり前になっていたある日、ルイがアメリーにとある報告をした。

「アメリー、俺遂に家を借りられる金が出来たんだ。」

仕事の休憩中2人で裏路地にあるガーデンベンチに座って寛いでいた時、いきなり大きな知らせを発表されたアメリーは当然ながら驚いた。

「えぇ!?もう!?凄いわ!流石ルイね!」

アメリーはルイの優秀さに感激し喜んだ。しかし、

「ありがとう!これでもう君の部屋に居候するのは終わりだよ。長い間迷惑掛けてごめん。今まで本当にありがとね。」

ルイのその言葉を聞いてアメリーははっとした。
そうだ。これでもうルイとは別々に暮らすことになるのだ。複雑な気持ちになったアメリーはルイに返事をせず俯いた。

「アメリー?大丈夫?」

心配そうにアメリーの顔を覗き込むルイ。そんな彼と目を合わせないようにアメリーは顔を背ける。今彼の目を見てしまったら心の奥に必死に押し込んでいる感情が溢れ出してしまいそうだから。

「ごめんなさい。大丈夫…少し眩暈がしただけよ…」

そう言いながら隣に座るルイから少し距離を取った。

「アメリー…?本当に大丈夫?」

心配そうなルイの声。
言えない。言える訳がない。本当はルイとの同居生活をやめたくないなんて。そんな自分勝手な事が許されるわけが無い。
アメリーは現実と自分の理想との大差に心を痛めた。

「大丈夫そうには見えないんだけど…」

ルイはそう呟くと、アメリーの額に手を当てた。

「熱は無いみたいだな…。だとすると貧血とか…?どちらにしても横になって休んだ方がいい。花屋まで運ぶよ。」

そう言いながらアメリーの肩に腕を回すルイ。刹那、アメリーはルイに思いっきり抱きついた。

「アメリー!?」

突然の事に驚くルイ。しかしアメリーはルイを強く抱きしめながら彼の耳元で言った。

「あなたとの秘密の二人暮し…とても楽しかったわ。ねぇルイ…別々に暮らす事になってもずっと仲良くしてくれる?」

震えた声で問いかけるアメリー。ルイもまたそんな彼女の体を強く抱きしめた。

「当たり前だろ。…あのさぁ、こんな場所で言うのは気が引けるんだけど……」

そう言いながらルイはアメリーから少し体を離し、彼女の目を真っ直ぐ見つめた。
初めて見るルイの表情にアメリーは釘付けになる。真剣な表情…しかし頬が少し赤い…。

「アメリー。俺は君の事が好きだ。」

遂にルイはアメリーに告白した。
出会ったあの日に人生で初めての一目惚れをした女性に、今まで心の奥底に隠していた想いをやっと伝えることが出来た。

「ルイ…!」

顔を赤らめ瞳を潤ませたアメリーは再びルイを抱きしめた。

「私も…私もあなたが好きよ。ルイ。」

震えた声でそう言ったアメリーの髪をルイは優しく撫でた。

「アメリー、俺は遠くには行かないから大丈夫だよ。…と言うより君から離れるなんて俺が耐えられないよ。」

「ふふふ。ありがとう、ルイ。これからも…ずっと仲良くしてね。」

2人は暫くの間抱き合ったままお互いを放さなかった。
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