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いくつかの疑問を検索にかけてみたところ、答えが見つかった。答えが見つかったのは嬉しいが、何故僕はそれを知らなかったのだろう、という疑問が湧き上がってしまう。僕はこれを知っていなければ、覚えていなければならないように思うのだが。アンドロイドも物忘れをするようになったのだろうか?
何度か読み返し、見直しておくとしよう。
地球から未開の惑星に移住をしようとした人類は、技術の粋を詰め込んだ船に乗って旅立った。そして、そのうちの一つが僕が今いる惑星に降り立った。
技術の粋と言っても、惑星を丸ごとつくりかえるようなテラフォーミング技術はまだ存在していない。出来ることは巨大な船の外に人間が居住できる環境を作り上げることだ。その為に、船に存在するロボット工場は自動で働くロボットをいくつも作り出した。時間はかかるものの、徐々に人間の居住環境は整備されるものと人々は思っていた。
しかし、そうはならなかった。
始めの内は順調だったのだが、時間と共にロボットたちに不具合が現れてしまった。土地を整備するためのロボットは地面に謎の図形を描いて、人間が望んだ仕事をしなくなってしまった。調査、採掘のためのロボットは、任務の途中にクルクルと回り出し、数体で怪しい儀式のような行動をし続けてしまった。人間の為の住居を建設しようとしても、設計した通りに建造されない。入口が屋根にのみ存在しているような家が出来てしまった。
原因を突き止められない人類は、一つの仮説を立てた。
外で活動するロボットたちには単純作業とは言え、ある程度の自立思考が可能だ。その思考が人間の為の仕事よりも、惑星環境への適応を選んでしまっている。人類が命じた任務を忘れたわけではないが、自分自身を守るという命令も存在する。その葛藤の末の謎の結果ということではないか?
その仮説を基に、対策を施してみる。
外に居るロボットたちに、人間の影響を強く感じさせる存在があればいいのではないか?
人間ととても似た存在。とことん似せたアンドロイド。アンドロイドの為に身近な環境を整備して貰えばいいのではないか? もしもかしたら、アンドロイドたちに人間の仕事を肩代わりしてもらえるかもしれない。アンドロイドにも仕事を与えよう。そうすればスムーズに移住できる。
そんな期待を基に、僕たちは作られた。
なるほど、そういうことだったのか。今更ながらに自分の居住地域周辺の状況に理解度が増し、知識の幾つかが繋がった。この一帯は大きなシールドで覆われ、環境は地球と近いものに調整されている。人間の居住区とされている区画を中心にして、アンドロイドの居住区が円を描くように存在している。人間の居住区は拡大している。つまり、僕らの居住地域がある程度の環境を整え、ロボットたちとの折り合いがつき、更なる開拓を始めた辺りで、人間の領域が広がる。そういうことだろう。
ここで僕が妙な感覚に悩まされることも、後から来る人間の為の礎ということか。それが適応の手段か。その為に創られたとはいえ、ずいぶんと酷い扱いじゃないか? 模倣するなら治療法まで模倣してくれよ。
考えながらこの前と同じように自然の中へと歩いていった。この自然の植物も後に来る人間の為のものか。今のうちに環境に慣れておくのが良いのだろう。前と同じように土や草に触れてみる。『何となく嫌だ』の感じは薄れていた。こいつらの存在しているのは、一時的とはいえ僕の為でもあるのだ。僕が木や草の傍に存在すれば、みんなにも僕の存在が影響を及ぼす。それが後に来る誰かの為になる。そう思えば気もまぎれる。
<それはよかった>
いつの間にかチャンネル・ストームとの会話になっていた。
「でも、こんなの変だよ。僕がこんな感覚を持つはず無いんだ」
<その自然も地球ベースの存在だからな。この星からすればあり得ない存在だ。お前と似たり寄ったりだと思うぞ>
「そういうもの?」
<そういうものだよ>
「ふーん……」
<今はどんな不満があるんだ?>
「人間たちは僕の不調のことも知っているんだろう? 何で治療法を配布してくれない? 僕の今の状態が後の人間を苦しめるかもしれないのに」
<そうだな>
「リセットも廃棄もせずに彷徨わせるのは一体何故……?」
<案外、向こうもそう思っているかもしれないぞ>
「向こう?」
<記録、というのは紙やデータに残すだけじゃない。幾つかの方法を試してみないか? 誰かの参考になるかもしれないぞ>
「どういうこと? 一体何を言ってるんだ?」
<歌、という方法がある。残るかどうかは不明だが、それが治療法になるかもしれない>
「治療法?」
<自分の為にもなるかもな。暇ならやってみるといい。じゃあ、またな。フォンス。
Freedom Is Watching You>
歌? 歌うと元気になると? 眠れると?
そもそも歌って何だ?
もしかしてチャンネル・ストームの存在も歌ということか?
それっておかしい。おかしいのは何故だ?
何度か読み返し、見直しておくとしよう。
地球から未開の惑星に移住をしようとした人類は、技術の粋を詰め込んだ船に乗って旅立った。そして、そのうちの一つが僕が今いる惑星に降り立った。
技術の粋と言っても、惑星を丸ごとつくりかえるようなテラフォーミング技術はまだ存在していない。出来ることは巨大な船の外に人間が居住できる環境を作り上げることだ。その為に、船に存在するロボット工場は自動で働くロボットをいくつも作り出した。時間はかかるものの、徐々に人間の居住環境は整備されるものと人々は思っていた。
しかし、そうはならなかった。
始めの内は順調だったのだが、時間と共にロボットたちに不具合が現れてしまった。土地を整備するためのロボットは地面に謎の図形を描いて、人間が望んだ仕事をしなくなってしまった。調査、採掘のためのロボットは、任務の途中にクルクルと回り出し、数体で怪しい儀式のような行動をし続けてしまった。人間の為の住居を建設しようとしても、設計した通りに建造されない。入口が屋根にのみ存在しているような家が出来てしまった。
原因を突き止められない人類は、一つの仮説を立てた。
外で活動するロボットたちには単純作業とは言え、ある程度の自立思考が可能だ。その思考が人間の為の仕事よりも、惑星環境への適応を選んでしまっている。人類が命じた任務を忘れたわけではないが、自分自身を守るという命令も存在する。その葛藤の末の謎の結果ということではないか?
その仮説を基に、対策を施してみる。
外に居るロボットたちに、人間の影響を強く感じさせる存在があればいいのではないか?
人間ととても似た存在。とことん似せたアンドロイド。アンドロイドの為に身近な環境を整備して貰えばいいのではないか? もしもかしたら、アンドロイドたちに人間の仕事を肩代わりしてもらえるかもしれない。アンドロイドにも仕事を与えよう。そうすればスムーズに移住できる。
そんな期待を基に、僕たちは作られた。
なるほど、そういうことだったのか。今更ながらに自分の居住地域周辺の状況に理解度が増し、知識の幾つかが繋がった。この一帯は大きなシールドで覆われ、環境は地球と近いものに調整されている。人間の居住区とされている区画を中心にして、アンドロイドの居住区が円を描くように存在している。人間の居住区は拡大している。つまり、僕らの居住地域がある程度の環境を整え、ロボットたちとの折り合いがつき、更なる開拓を始めた辺りで、人間の領域が広がる。そういうことだろう。
ここで僕が妙な感覚に悩まされることも、後から来る人間の為の礎ということか。それが適応の手段か。その為に創られたとはいえ、ずいぶんと酷い扱いじゃないか? 模倣するなら治療法まで模倣してくれよ。
考えながらこの前と同じように自然の中へと歩いていった。この自然の植物も後に来る人間の為のものか。今のうちに環境に慣れておくのが良いのだろう。前と同じように土や草に触れてみる。『何となく嫌だ』の感じは薄れていた。こいつらの存在しているのは、一時的とはいえ僕の為でもあるのだ。僕が木や草の傍に存在すれば、みんなにも僕の存在が影響を及ぼす。それが後に来る誰かの為になる。そう思えば気もまぎれる。
<それはよかった>
いつの間にかチャンネル・ストームとの会話になっていた。
「でも、こんなの変だよ。僕がこんな感覚を持つはず無いんだ」
<その自然も地球ベースの存在だからな。この星からすればあり得ない存在だ。お前と似たり寄ったりだと思うぞ>
「そういうもの?」
<そういうものだよ>
「ふーん……」
<今はどんな不満があるんだ?>
「人間たちは僕の不調のことも知っているんだろう? 何で治療法を配布してくれない? 僕の今の状態が後の人間を苦しめるかもしれないのに」
<そうだな>
「リセットも廃棄もせずに彷徨わせるのは一体何故……?」
<案外、向こうもそう思っているかもしれないぞ>
「向こう?」
<記録、というのは紙やデータに残すだけじゃない。幾つかの方法を試してみないか? 誰かの参考になるかもしれないぞ>
「どういうこと? 一体何を言ってるんだ?」
<歌、という方法がある。残るかどうかは不明だが、それが治療法になるかもしれない>
「治療法?」
<自分の為にもなるかもな。暇ならやってみるといい。じゃあ、またな。フォンス。
Freedom Is Watching You>
歌? 歌うと元気になると? 眠れると?
そもそも歌って何だ?
もしかしてチャンネル・ストームの存在も歌ということか?
それっておかしい。おかしいのは何故だ?
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