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マサミは管の中に入った。その床に何かの模様が描かれていた。それだけで、他には何もない。しかし、マサミにはそこで何をすべきかがわかった。その床に描かれた模様は、これまでの人生において、マサミが何度か目にしてきたものだった。主に、氣功を学ぶ際に目にしてきたものだ。マサミは氣功の学びも不得手であった。今ここで自分の力で対応できるか不安であった。しかし、すぐにその不安を打ち消し、模様の上に立ち、自身が振るえる氣功の力を精一杯に込める。そして、地面の模様に放った。
すると、床が動いた。始めはゆるく揺れ、次いで強く上方に動いた。マサミは自分が塔を登っているのが解った。時折、動く床の動作が不安定になることもあった。その時に、マサミは学んだ。マサミの心の安定が、この床の安定と動きの安定に繋がるのだ、と。マサミは時々目を閉じ、心を落ち着けて床にある模様と共に氣功を続けていく。
ついに、塔の最上階に到達した。マサミの任務の目的地にやってきたのだ。
やって来たものの、その空間には誰も居なかった。この旅の始まりの時、この荷物をマサミに託した老人の話では、ここに誰かが待っているという話だった。しかし、考えてみればその誰かの名前をマサミは聞いていなかった。そうすると、あの老人の依頼は何だったのだろうか? 今、背負っている荷物は何なのだろうか?
<こちらへ>
声が響いた。マサミの心に語りかけるものでは無い。マサミにはそう感じられた。部屋に音が響いている。誰かがマサミを呼んでいた。
<こちらへ>
再び声が響く。マサミはその声のする方へと歩いて行く。その空間の壁まで歩いてしまった。すると、その壁の一部が動いた。風がぶわっとマサミに吹き付けて来た。とても高い塔の上、外へと通じる道がある。その先に何かが見える。何かの祭壇だろうか?
<こちらへ、どうぞ>
どうやら、声はその祭壇から響いてくるようだ。マサミは風を感じながら、その道を歩いて行く。そして、その祭壇までたどり着いた。
<マサミ。よくここまでたどり着きました。長く辛い旅路だったでしょう?>
「はい。でも、短かったような気もします。あの、お届け物です。これ、一体何なんでしょう?」
<それは、幻影の種とでも言える何かです。形を持たず、言葉にも出来ず、存在も感じられないものです。あなたの旅路や、それが始まる以前の日々のこと。この役割に選ばれた理由。どれも語り尽くせるものでは無いでしょう。しかし、私はそれを世界に残す役目を果たします。その荷物を、この祭壇の中央においてください。どうか、そのまま>
「開けなくていいんですか?」
<どうか、そのままで>
マサミは言われた通り、背負った荷物をそのまま祭壇の中央に置いた。
<ありがとう。マサミ>
「これで、終わりですか? 初めての忠」
<いえ、もう一つあるのです>
「どんなこと?」
<あなたにも覚えがあるかもしれません。困った時の知恵のこと。そのままでは、毒にも薬にもならない。使い方を誤れば猛毒となってしまう。更なる災いとなってしまうこともある。その扱い方は受け取った人間にしかわからない何かのことです>
「ああ、わかります。何となくですけど」
<あなたがこの旅で得た知恵と知識と力を、風に揺蕩う戦士とします。そして、私と共に世界を巡ってもらいます。あなたにはその戦士に名前を付けて頂きます>
「名前?」
<そう、名前です。あなたの好きなように名付けてください>
マサミは少し考えた。この旅の始まりと、鋼鉄の夢広場、千の葉の森、塔。そして、マサミは口を開き、その名を告げた。
<ありがとう、マサミ。どうか、あなたの行きたいところを想ってください。私があなたをその場へ運んでいきます。せめてものお礼です>
マサミは、その場を強く想い、風に運ばれて行った。
マサミは世界を見ながら、自分の戦士のことを思った。告げたのは声で。しかし、マサミが思ったものには声だけでは伝えられない何かがあった。戦士としての名前は平凡かもしれないが、魔法の呪文と思えば面白いかもしれない。どこかで密かに囁かれているのを、見つけられるかもしれない。今のところ、マサミしか知らない何か。最も、この祭壇には秘密にすることなんて通用しないかもしれない。それでも、まあいいか、とマサミは思っていた。
その戦士の名前は何か、あなたには解るだろうか?
(終わり)
すると、床が動いた。始めはゆるく揺れ、次いで強く上方に動いた。マサミは自分が塔を登っているのが解った。時折、動く床の動作が不安定になることもあった。その時に、マサミは学んだ。マサミの心の安定が、この床の安定と動きの安定に繋がるのだ、と。マサミは時々目を閉じ、心を落ち着けて床にある模様と共に氣功を続けていく。
ついに、塔の最上階に到達した。マサミの任務の目的地にやってきたのだ。
やって来たものの、その空間には誰も居なかった。この旅の始まりの時、この荷物をマサミに託した老人の話では、ここに誰かが待っているという話だった。しかし、考えてみればその誰かの名前をマサミは聞いていなかった。そうすると、あの老人の依頼は何だったのだろうか? 今、背負っている荷物は何なのだろうか?
<こちらへ>
声が響いた。マサミの心に語りかけるものでは無い。マサミにはそう感じられた。部屋に音が響いている。誰かがマサミを呼んでいた。
<こちらへ>
再び声が響く。マサミはその声のする方へと歩いて行く。その空間の壁まで歩いてしまった。すると、その壁の一部が動いた。風がぶわっとマサミに吹き付けて来た。とても高い塔の上、外へと通じる道がある。その先に何かが見える。何かの祭壇だろうか?
<こちらへ、どうぞ>
どうやら、声はその祭壇から響いてくるようだ。マサミは風を感じながら、その道を歩いて行く。そして、その祭壇までたどり着いた。
<マサミ。よくここまでたどり着きました。長く辛い旅路だったでしょう?>
「はい。でも、短かったような気もします。あの、お届け物です。これ、一体何なんでしょう?」
<それは、幻影の種とでも言える何かです。形を持たず、言葉にも出来ず、存在も感じられないものです。あなたの旅路や、それが始まる以前の日々のこと。この役割に選ばれた理由。どれも語り尽くせるものでは無いでしょう。しかし、私はそれを世界に残す役目を果たします。その荷物を、この祭壇の中央においてください。どうか、そのまま>
「開けなくていいんですか?」
<どうか、そのままで>
マサミは言われた通り、背負った荷物をそのまま祭壇の中央に置いた。
<ありがとう。マサミ>
「これで、終わりですか? 初めての忠」
<いえ、もう一つあるのです>
「どんなこと?」
<あなたにも覚えがあるかもしれません。困った時の知恵のこと。そのままでは、毒にも薬にもならない。使い方を誤れば猛毒となってしまう。更なる災いとなってしまうこともある。その扱い方は受け取った人間にしかわからない何かのことです>
「ああ、わかります。何となくですけど」
<あなたがこの旅で得た知恵と知識と力を、風に揺蕩う戦士とします。そして、私と共に世界を巡ってもらいます。あなたにはその戦士に名前を付けて頂きます>
「名前?」
<そう、名前です。あなたの好きなように名付けてください>
マサミは少し考えた。この旅の始まりと、鋼鉄の夢広場、千の葉の森、塔。そして、マサミは口を開き、その名を告げた。
<ありがとう、マサミ。どうか、あなたの行きたいところを想ってください。私があなたをその場へ運んでいきます。せめてものお礼です>
マサミは、その場を強く想い、風に運ばれて行った。
マサミは世界を見ながら、自分の戦士のことを思った。告げたのは声で。しかし、マサミが思ったものには声だけでは伝えられない何かがあった。戦士としての名前は平凡かもしれないが、魔法の呪文と思えば面白いかもしれない。どこかで密かに囁かれているのを、見つけられるかもしれない。今のところ、マサミしか知らない何か。最も、この祭壇には秘密にすることなんて通用しないかもしれない。それでも、まあいいか、とマサミは思っていた。
その戦士の名前は何か、あなたには解るだろうか?
(終わり)
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