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4話 痕
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「はぁ……」
私が警察に通報後、父さんの弟に当たる、督(すすむ)叔父さんが部下数人を引き連れて先輩の家へ上がりこむ。
「どうしたの叔父さん、ため息なんてついて」
鑑識や部下の刑事さんが捜査をする中、先ほどから叔父さんは重いため息ばかりついている。
私が訊ねると、今度は内ポケットからハンカチを取り出して、目から出た涙を拭う動作をし始めた。
「あ。もしかして、捜査に貢献する姪の姿がうれしいとか!」
「んな訳あるか。ううっ、有加のこんな姿を兄さんに見せられない。怒られる」
叔父さんは、父さんに頭が上がらない性格である。しかも、私が暴走しないように見守って欲しいという余計な約束をしている為か、私が警察のお世話になりそうなことを仕出かすと、怒られると戦々恐々としているのだ。
「私は、先輩と約束があって梨緒とここに来たんです。いくらインターホンを鳴らしても出てこなかったら、こうして訪問したら、このザマで」
私は担架で運ばれていく先輩の遺体を指差した。
「んで、梨緒の奴は伸びていると」
叔父さんは呆れ顔で壁にもたれかかっている梨緒に視線を移動させる。
「伸びているというか、いつものアレよ。それで、気絶しているわけ」
「アレねぇ……」
事情を知っている叔父さんは“やれやれ”とでも言いたげな表情をした。
梨緒についての事情を知っているのは、私と父さん、あと叔父さんの3人のみである。だから、大体“アレ”というと通じるのである。
「本当に梨緒は私が常に見ておかないと何をしでかすか分からないからね」
「おい、有加。それは……」
おじさんが話している最中で、叔父さんの部下の刑事が叔父さんに話しかけてくる。
「司馬さん、現場のノートパソコンに遺書らしきものがありますし、自殺の線が濃厚なんじゃないですかねぇ……」
「検死結果を見ないことには分からないからな、そう易々と結論を出そうとするな児島」
「し、失礼しました」
児島と呼ばれた部下の刑事さんは叔父さんに謝罪をする。
たしかに、自殺と断定するのは早すぎる。私が見る限りこれは……
自殺なんかではないのだから。
「有加、何か言いたげだな」
叔父さんは何やら勘付いて、私に訊いてくる。
私は話を振られ、胸を張ってドヤ顔で答える。
「フッフッフ、叔父さん。この業界長いと、死体が煩いほどに語りかけてくるのが分かるのよね」
「この……業界ですか?」
横にいた、先ほど謝罪していたのは違う刑事さんが私の発言を聞き返す。
「あぁ、有加はサスペンスドラマで死体役専門の役者なんだよ。一度は見たことあるだろ? ホラ、あの、刑事ざっくバランシリーズとか」
叔父さんは、私の出演作を例にだして説明をする。刑事さんは何かを思い出したようで、ハッとした表情が飛び出す。
「あー! 僕、見たことありますし、そのシリーズ好きです。確かに、何処かで出ていたような気がしますねぇ……」
刑事さんは私の顔をまじまじと見つめる。
「まぁ、死体役の時は結構な化粧をして個々のキャラを作っていますから。さて、話を戻すけど、この事件は自殺じゃなくて他殺のような気がするのよねぇー」
「その根拠はなんだ?」
「まぁ、検死に持ってっちゃったから現物が無いから何とでも言えると思うけど、第一にベッドの柱に布を巻きつけたことによる首吊り自殺と仮定したとしても、恐らくあの死体、首吊りの特徴である首の骨が折れてないはずよ。それに、失禁もしていなかった。それと、一番重要な点は……」
叔父さんは私の話の続きが気になって、ゴクリと息を呑む。
「本来首に布の痕が付くはずなのよねぇ、首をつったとしたら。一応、叔父さん達が来る前にパッと見たけど、ソレがなかった」
「なるほど……、って遺体を触ったのか」
「触るわけないじゃない。ちゃんと、警察様の捜査がしやすいように何も動かず触らずでおりましたよっと」
私の答えに叔父さんは『それなら良し』と頷く。
「どうせ、これから私達にも事情聴取するんでしょ? その前に、梨緒を起こさなきゃ」
私は熟睡している梨緒に駆け寄り、体をゆさゆさと揺らすが、寝息を立てたままビクともしない。
これは、久々にやりすぎたかな?
「しゃーない……、梨緒、許せ」
私は梨緒の右頬に向かって思いっきり、
バチーン!
とビンタを食らわせた。
大音量の破裂音が部屋に木霊し、捜査をしている全員が一斉にコチラのほうを振り向く。お願いだからこっちを振り向かないで、恥ずかしい。
一方の梨緒はというと、
「いったーーーーーーい!」
ビンタの破裂音の後から来る激痛に頬を触りつつ飛び起きた。
「おはよ、梨緒」
私はニッコリと梨緒に笑いかけるが、
「おはようじゃないよ! ゆぅかー、ひどいよー。ほっぺを思いっきり叩くだなんて。僕のほっぺ、取れてない? 大丈夫?」
梨緒は大粒の涙をポロポロと流しつつ、私に訴えかける。
「取れたら一大事じゃない、取れてないから大丈夫よ。それより、ここからが一大事です」
私は一段と真剣な顔つきで梨緒に報告をすると、梨緒は『へ?』と間抜けな声を発する。
「私と梨緒はこれから警察へ行って、取調べを受けます」
「えっ!?」
梨緒は驚きで目を丸くした。
私が警察に通報後、父さんの弟に当たる、督(すすむ)叔父さんが部下数人を引き連れて先輩の家へ上がりこむ。
「どうしたの叔父さん、ため息なんてついて」
鑑識や部下の刑事さんが捜査をする中、先ほどから叔父さんは重いため息ばかりついている。
私が訊ねると、今度は内ポケットからハンカチを取り出して、目から出た涙を拭う動作をし始めた。
「あ。もしかして、捜査に貢献する姪の姿がうれしいとか!」
「んな訳あるか。ううっ、有加のこんな姿を兄さんに見せられない。怒られる」
叔父さんは、父さんに頭が上がらない性格である。しかも、私が暴走しないように見守って欲しいという余計な約束をしている為か、私が警察のお世話になりそうなことを仕出かすと、怒られると戦々恐々としているのだ。
「私は、先輩と約束があって梨緒とここに来たんです。いくらインターホンを鳴らしても出てこなかったら、こうして訪問したら、このザマで」
私は担架で運ばれていく先輩の遺体を指差した。
「んで、梨緒の奴は伸びていると」
叔父さんは呆れ顔で壁にもたれかかっている梨緒に視線を移動させる。
「伸びているというか、いつものアレよ。それで、気絶しているわけ」
「アレねぇ……」
事情を知っている叔父さんは“やれやれ”とでも言いたげな表情をした。
梨緒についての事情を知っているのは、私と父さん、あと叔父さんの3人のみである。だから、大体“アレ”というと通じるのである。
「本当に梨緒は私が常に見ておかないと何をしでかすか分からないからね」
「おい、有加。それは……」
おじさんが話している最中で、叔父さんの部下の刑事が叔父さんに話しかけてくる。
「司馬さん、現場のノートパソコンに遺書らしきものがありますし、自殺の線が濃厚なんじゃないですかねぇ……」
「検死結果を見ないことには分からないからな、そう易々と結論を出そうとするな児島」
「し、失礼しました」
児島と呼ばれた部下の刑事さんは叔父さんに謝罪をする。
たしかに、自殺と断定するのは早すぎる。私が見る限りこれは……
自殺なんかではないのだから。
「有加、何か言いたげだな」
叔父さんは何やら勘付いて、私に訊いてくる。
私は話を振られ、胸を張ってドヤ顔で答える。
「フッフッフ、叔父さん。この業界長いと、死体が煩いほどに語りかけてくるのが分かるのよね」
「この……業界ですか?」
横にいた、先ほど謝罪していたのは違う刑事さんが私の発言を聞き返す。
「あぁ、有加はサスペンスドラマで死体役専門の役者なんだよ。一度は見たことあるだろ? ホラ、あの、刑事ざっくバランシリーズとか」
叔父さんは、私の出演作を例にだして説明をする。刑事さんは何かを思い出したようで、ハッとした表情が飛び出す。
「あー! 僕、見たことありますし、そのシリーズ好きです。確かに、何処かで出ていたような気がしますねぇ……」
刑事さんは私の顔をまじまじと見つめる。
「まぁ、死体役の時は結構な化粧をして個々のキャラを作っていますから。さて、話を戻すけど、この事件は自殺じゃなくて他殺のような気がするのよねぇー」
「その根拠はなんだ?」
「まぁ、検死に持ってっちゃったから現物が無いから何とでも言えると思うけど、第一にベッドの柱に布を巻きつけたことによる首吊り自殺と仮定したとしても、恐らくあの死体、首吊りの特徴である首の骨が折れてないはずよ。それに、失禁もしていなかった。それと、一番重要な点は……」
叔父さんは私の話の続きが気になって、ゴクリと息を呑む。
「本来首に布の痕が付くはずなのよねぇ、首をつったとしたら。一応、叔父さん達が来る前にパッと見たけど、ソレがなかった」
「なるほど……、って遺体を触ったのか」
「触るわけないじゃない。ちゃんと、警察様の捜査がしやすいように何も動かず触らずでおりましたよっと」
私の答えに叔父さんは『それなら良し』と頷く。
「どうせ、これから私達にも事情聴取するんでしょ? その前に、梨緒を起こさなきゃ」
私は熟睡している梨緒に駆け寄り、体をゆさゆさと揺らすが、寝息を立てたままビクともしない。
これは、久々にやりすぎたかな?
「しゃーない……、梨緒、許せ」
私は梨緒の右頬に向かって思いっきり、
バチーン!
とビンタを食らわせた。
大音量の破裂音が部屋に木霊し、捜査をしている全員が一斉にコチラのほうを振り向く。お願いだからこっちを振り向かないで、恥ずかしい。
一方の梨緒はというと、
「いったーーーーーーい!」
ビンタの破裂音の後から来る激痛に頬を触りつつ飛び起きた。
「おはよ、梨緒」
私はニッコリと梨緒に笑いかけるが、
「おはようじゃないよ! ゆぅかー、ひどいよー。ほっぺを思いっきり叩くだなんて。僕のほっぺ、取れてない? 大丈夫?」
梨緒は大粒の涙をポロポロと流しつつ、私に訴えかける。
「取れたら一大事じゃない、取れてないから大丈夫よ。それより、ここからが一大事です」
私は一段と真剣な顔つきで梨緒に報告をすると、梨緒は『へ?』と間抜けな声を発する。
「私と梨緒はこれから警察へ行って、取調べを受けます」
「えっ!?」
梨緒は驚きで目を丸くした。
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