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1話
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「て!」
朝6時。公は手を突き出しながら起き上がった。
「くそっ。まともに設定すら決めてないくせにホントに本編始めやがった」
悪態をつきながら公は額に手を当てた。
「公!朝よ!起きなさい!」
公の部屋に入ってきたのは母親のマザーだ。
「ちょっと待て!」
「何を待つの」
「母さんに待てと言ってるんじゃなくて作者に待てと言ってるんだよ」
「作者?誰それ?」
公の言葉に首を傾げるマザー。
声に出すと不思議がられるので、どうすればいいか考えた挙げ句に公が出した答えが心の中で叫ぶこと。
"だからちょっと待てって言ってるだろ!"
何?
"何?じゃねーよ!なんだよ!母さんの名前がマザーって!"
直感だね。
"ただ母親を英語にしただけのくせに何が直感だよ!"
「公ちゃん?どうしたの?熱があるの?」
「大丈夫だよ、母さん。とりあえず着替えるから出ていってくれるかな?」
「ホントに1人で出来るの?」
「もう『ピー』歳なんだから、ってなんで年齢にピーが入るんだよ!」
「公ちゃんやっぱり熱があるんじゃないの?」
"作者ー!"
はいはい。なんですか?
"なんで年齢にピーが入るんだよ!"
まだ年齢決めてないからだよ。
"さっさと決めやがれ!"
わかったわ。じゃあ16歳の高校1年生で。だから身長と体重の設定もちょっといじくって、180センチの78キロにしましょう。
設定を変更したことで公の身長は30センチも伸びた。
「まぁ。公ちゃん急に成長期ね」
「いや。たった1秒で30センチも伸びるのはたとえ成長期でもあり得ないから。そして服が破けた」
30センチも伸びたんだからそれは仕方ないことだね。あはは。
"笑い事じゃねーよ"
「大丈夫。高校の制服はちゃんと180センチの身長にあったものを買ってるから」
そう。今日は高校の入学式なのだ。
"確実に今設定付けたよな?"
「はい、公。高校の制服」
マザーは嬉しそうにセーラー服を公に渡した。
「ちょっと待てくれ、母さん」
「何かしら?」
「なんでセーラー服なんだ?」
「あら、制服としてこれが届いたのだけど?」
「明らかにおかしいだろ。それに絶対小さいから着れないし」
「あらあら」
困ったマザーはアタフタし始めた。
"困ったってより困らせたんだろが、お前が"
今回は私のせいじゃないわよ。
"作者のお前が書いたからこんな状況になってるくせに自分のせいじゃないなんて言い訳が通用すると思うなよ!"
ホントに違うんだって。だってほら。
慌ただしく階段を駆け上がる音がしたかと思うと公の部屋の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは公の幼なじみの桜。
"初めてまともな名前が出てきたな"
「あら、桜ちゃん。おはよう」
「おばさんおはよう。ってやっぱりあった!」
桜が指差したのはマザーが持っているセーラー服。
「これがどうしたの?」
「私と公のが間違って送られてきたんですよ」
そう言って桜が突き出したのは学生服。
「わざわざ持ってきてくれたの?ありがとね、桜ちゃん」
「いえ。公が着る前に来れてよかったです」
「アホか!お前が持ってこなくても誰がセーラー服なんで着るかよ!」
「公ならもしかしたら………」
「なわけあるか!」
公が桜に食って掛かると、桜は持っていた学生服を公に押しつけた。
「おばさん。脱衣所借りますね」
マザーからセーラー服を貰った桜は公の部屋を出ていった。
◇
"やっぱり公の家にあった"
手に持つセーラー服を見てホッとしている桜。
"これで無事に高校の入学式に行ける"
桜は上着を脱ぎ、スカートに手をかけて脱ぎかけた状態で止まった。
「ねぇ、作者」
なに?桜。
「普通は公の着替えのシーンじゃないの?」
そうだね。今公はちゃんと着替えをしてるから心配しなくていいよ。
「そう。そんな心配してないからどうでもいいわ」
なら、どうしたの?
「なんで私の着替えについてきたの?」
男性読者へのサービスショットのためだよ。
「絵が無いのにサービスショットになるの?」
無いほうが妄想力をかきたてられて余計に興奮出来るらしいよ。
私の言葉に桜は額に手をあてて呆れた様子だった。
「作者。直接会って話がしたいんだけど」
いいよ。
☆
私は桜を特別な空間に呼び出した。
「これで直接話せるよ」
「ありが………」
桜の言葉が止まり、唖然とした表情を浮かべる。その視線の先には学生服に着替えている途中の公。驚きのあまりに桜の手の力が緩み、スカートが落ちきる。
「キャーーーーー!!」
悲鳴とともに公へ接近した桜はグーパンチ1発で公を殴り倒した。
「なんで公までいるのよ!」
公をノックアウトした桜は私に迫ってきた。
「だって、この場所は作者と登場人物が直接話すために作った空間だから公がいるのはあたりまえじゃん」
「さっきの話からして2人で話したいって意味だってなんでわからないのよ!」
殴りかかってきたので桜の拳を避けながら距離をとる。
「それで話って何かな?」
近づいてきた桜がまた殴りかかってきたので避ける。
「危ないじゃないか」
「話はなくて1発殴りたかっただけだから殴らせなさい」
「そんなのイヤに決まってるじゃないか」
「あんたの気持ちなんか知るか!」
さらに連続で殴りかかってきたので、
☆
桜は公の家の脱衣所で下着姿のままシャドーボクシングをしていた。
「逃げるな!」
逃げるよ。それに、公が気絶しているから早く起こしにいったほうがいいよ。
「チッ!」
舌打ちをした桜はセーラー服を手早く着ると、脱衣所を飛び出して公の部屋へ。
床で仰向けに気絶している公の肩を掴んで持ち上げ、座らせるとおもいっきり前後に揺らした。
「起きなさい!公!」
ガックンガックン揺らされるが公は無反応。
「ホントに起きなさいよ!入学式に遅刻するわよ!」
しかし、いっこうに起きない公。
「もう!仕方ないわね!」
そう言うと桜はバチコーン!と公の頬にビンタを叩きこんだ。
「イッテー!」
さすがにこれには起きた公は、ビンタを食らった右頬に手をあてた。それを見て桜は「よし!」と頷いていた。
「やっと起きたわね!」
「起きたわね、じゃねーよ!イテーじゃねーか!」
公にとっては当然の抗議だが、桜にとってはどうでもいいことなので取り合う気はない。
「公が起きないのが悪い!」
自分のせいなのに見事な責任転嫁。
"うるさい!もともとはあんたが悪いんだから!"
これも責任転嫁である。
"どこがよ!"
「そういや、なんで俺は寝てたんだ?」
公は記憶を辿る。
「確か部屋で制服に着替えていたはずなのにいきなり変な場所に連れてかれて、そこになぜか赤い下着姿の桜も居たような………」
「なに変なこと言ってるのよ!そんなことより早く着替えて朝食食べなさいよね!入学式に遅れちゃうじゃないのよ!」
今度は必死に話のすり替えを行う桜。
しかし、高校の入学式に赤い下着っていうのはちょっと気合い入れすぎじゃない?どれだけ殺る気満々なの?
"やる気の漢字がおかしいでしょ!それに今日の私の下着は赤じゃないわよ!なに嘘書いてるのよ!"
嘘だなんて失敬な!私が書いたことが真実なの!それが小説というものよ!
"事実をねじ曲げるな!"
じゃあ今日の下着の色は何!?
"ピンクの花柄よ!ってハッ!"
ピンクの花柄とは可愛い下着を穿いているんだね。ニヤニヤ。
"っ~~~~~!"
顔を赤くする桜。着替えを終えた公はその様子を不思議に思いながら首を傾げた。
「桜、熱でもあるのか?」
「なんでもないわ!」
なんでもないことないでしょ。
「作者!うるさい!」
「また作者が何かしたのかよ」
あれ?私が悪役なの?
「今さらだな」
「当たり前なこと聞かないでよ」
あれ~。私、作者だよ?君達の産みの親なんだよ?
「だからなによ」
「作者なら執筆だけに集中しろよ」
「ホントに。出てこないでほしいわね」
う、うちの子達が反抗期よー!
『こんな親なら誰だって反抗期になるわ!』
うわーん!
私を泣かせてニヤニヤする2人。
人でなし!
『人でなしで結構』
「2人共~!朝ごはん食べないの~?」
マザーの言葉でハッとする2人。
「作者の相手してる暇なかったんだ!」
「早く朝ごはん食べて入学式に行かないと!」
2人は慌てて部屋を出ると階段を降りてダイニングへ入り、椅子に座る。
「2人共降りてくるのが遅かったけど、何してたの?」
「虫の退治に手間取ってね」
「ようやくさっき退治できたんです」
「そうなの」
2人の嘘をのほほんと信じてしまうマザー。
作者を虫扱いとはヒドくない?
"ヒドくないな"
"ヒドくないわね"
うわ~。2人の心の声が同じだ~。
2人は手の代わりに机の下で足でハイタッチした。
扱いの改善を要求する!
""ムリ!""
2人は私が何か言うより先に足でハイタッチ。
グスン。
「桜ちゃんは朝ごはん食べてきたの?」
「いえ。急いできたのでまだです」
「なら、桜ちゃんの分も作って正解だったわね」
「ありがとうございます」
「いいのよ」
マザーが用意した朝ごはんを2人は食べ始めた。
「今日の入学式、見に行くから頑張ってね」
「入学式なんて座ってるだけなんだから何を頑張るんだか」
公は呆れた様子でパンをくわえた。
見に来ないでとは言わないんだね。
"言ったところで見に来るし、そんなやり取りしてたらお前がからかってきそうだからな"
からかいはしないけどひやかしはするかな。
"ほとんど同じじゃねーか!"
で、来るなと言われたらマザーはどう思うの?
「泣くかもしれないわね」
「いい大人が息子から拒否されたくらいで泣くな!ってか、母さん作者の声聞こえてるんじゃんか!」
「あっ!てへっ」
嘘がバレたマザーは頭に拳をあてながら軽く首を傾け、ウインクをして舌を出した。
「キモいぞ、母さん」
「ヒドいわ、公」
泣き崩れたマザーに駆けよって支える桜。
「公。母親は大事にしなさいよ」
「桜。母さんの遊びに付き合うのはいいけど時間も考えろよ」
どこまでも冷静に言う公。桜は時計を確認するとあっさりマザーを捨てて朝ごはんの続きを食べ始めた。
「うっうっうっ。桜ちゃんもヒドい」
泣いてるマザーをガン無視で朝ごはんを食べ終えた2人。
『ごちそうさま』
2人は食器を持ってキッチンに行くと流しに置き、ダイニングに戻ってきて鞄を持った。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってきます、おばさん」
「いってらっしゃい」
ウソ泣きなのであっさり立ち直ったマザーは笑顔で2人を見送った。
マザーに見送られて家を出た2人は、あまり時間に余裕が無いので軽く走りながら駅を目指す。
高校生になるんだから、もっと余裕を持った行動をした方がいいと私は思うけどな~。
「誰のせいでこんなことになってると思ってるんだ?」
まさか私のせいだとでも?
「それ以外に原因が思いつかないわよ」
ふーん。ならこれまでの出来事のハイライトでもしてみようか?
「あぁやれるものなら「やらなくていいわよ」
「おい!言葉被せてくるな!それにやらなくていいのかよ!」
「いいのよ。その時間がもったいないんだから」
ホントにそれだけかな~。ニマニマ。
「それだけよ」
「おい桜」
それ以上は何も言わずにスピードを上げる桜。その後ろ姿を見ながら首を傾げた公だが、すぐにスピードを上げて桜を追った。
2人がやって来たのは駅。そこでは見ず知らずの2人が待っていた。
「何嘘言ってんだよ、作者。俺と桜の幼なじみの『友人A』と『友人B』じゃねーか。ってなんで名前が言えねんだよ!」
ちょっと待って。名前考え中だから。
必死に名前を考えている私を4人が冷ややかな目で見てきた。
よし、決めた!2人の名前は暁と楓ね。
「小説書くときって、まず名前とかの設定をちゃんと決めてから書き始めるものじゃないかしら?」
そういうのめんどくさいから私は行き当たりばったりでやる!
楓の私を見る目がさらに冷ややかなものになった。
「1番ダメになるパターンじゃないかな~」
暁の言葉に3人が頷く。
ダメになったら1から書き直すから大丈夫!
『はぁ~』
「あはは………」
公・桜・楓のため息が重なり、暁は苦笑していた。
「こんなバカはほっといてさっさと行くか」
「そうね」
私を放置して4人は改札を抜けた。
「そういえば、2人が来るのが遅かったから心配したわよ」
「ホントだよ~」
「作者がうざくてね」
「あぁ~」
「納得したわ」
あっさり納得されてしまった!
私が悲しんでいることなど気にしない4人はホームにやって来たのだが、ホームには誰もいなかった。
「ねぇ~。確かに時間としては早く出たけど~ここまで人がいないっておかしくない~?」
暁の言葉に同意しつつも、3人は1つの答えにたどりついていた。
『どうせ作者の仕業だろ(でしょうね)(に決まってるわよ)』
はい正解!ということで、
~♪♪♪~
『次に参ります電車は、作者の恨みつらみ満載の特急、入学式遅刻行き。入学式遅刻行き。危険ですので白線の内側までお下がりのうえ、絶対に乗り込んでください。電車が発車して10秒後にこのホームは爆破されますのでご注意ください』
~♪♪♪~
『作者!』
4人の叫び声を聞いて私は爆笑した。
朝6時。公は手を突き出しながら起き上がった。
「くそっ。まともに設定すら決めてないくせにホントに本編始めやがった」
悪態をつきながら公は額に手を当てた。
「公!朝よ!起きなさい!」
公の部屋に入ってきたのは母親のマザーだ。
「ちょっと待て!」
「何を待つの」
「母さんに待てと言ってるんじゃなくて作者に待てと言ってるんだよ」
「作者?誰それ?」
公の言葉に首を傾げるマザー。
声に出すと不思議がられるので、どうすればいいか考えた挙げ句に公が出した答えが心の中で叫ぶこと。
"だからちょっと待てって言ってるだろ!"
何?
"何?じゃねーよ!なんだよ!母さんの名前がマザーって!"
直感だね。
"ただ母親を英語にしただけのくせに何が直感だよ!"
「公ちゃん?どうしたの?熱があるの?」
「大丈夫だよ、母さん。とりあえず着替えるから出ていってくれるかな?」
「ホントに1人で出来るの?」
「もう『ピー』歳なんだから、ってなんで年齢にピーが入るんだよ!」
「公ちゃんやっぱり熱があるんじゃないの?」
"作者ー!"
はいはい。なんですか?
"なんで年齢にピーが入るんだよ!"
まだ年齢決めてないからだよ。
"さっさと決めやがれ!"
わかったわ。じゃあ16歳の高校1年生で。だから身長と体重の設定もちょっといじくって、180センチの78キロにしましょう。
設定を変更したことで公の身長は30センチも伸びた。
「まぁ。公ちゃん急に成長期ね」
「いや。たった1秒で30センチも伸びるのはたとえ成長期でもあり得ないから。そして服が破けた」
30センチも伸びたんだからそれは仕方ないことだね。あはは。
"笑い事じゃねーよ"
「大丈夫。高校の制服はちゃんと180センチの身長にあったものを買ってるから」
そう。今日は高校の入学式なのだ。
"確実に今設定付けたよな?"
「はい、公。高校の制服」
マザーは嬉しそうにセーラー服を公に渡した。
「ちょっと待てくれ、母さん」
「何かしら?」
「なんでセーラー服なんだ?」
「あら、制服としてこれが届いたのだけど?」
「明らかにおかしいだろ。それに絶対小さいから着れないし」
「あらあら」
困ったマザーはアタフタし始めた。
"困ったってより困らせたんだろが、お前が"
今回は私のせいじゃないわよ。
"作者のお前が書いたからこんな状況になってるくせに自分のせいじゃないなんて言い訳が通用すると思うなよ!"
ホントに違うんだって。だってほら。
慌ただしく階段を駆け上がる音がしたかと思うと公の部屋の扉が勢いよく開かれた。
入ってきたのは公の幼なじみの桜。
"初めてまともな名前が出てきたな"
「あら、桜ちゃん。おはよう」
「おばさんおはよう。ってやっぱりあった!」
桜が指差したのはマザーが持っているセーラー服。
「これがどうしたの?」
「私と公のが間違って送られてきたんですよ」
そう言って桜が突き出したのは学生服。
「わざわざ持ってきてくれたの?ありがとね、桜ちゃん」
「いえ。公が着る前に来れてよかったです」
「アホか!お前が持ってこなくても誰がセーラー服なんで着るかよ!」
「公ならもしかしたら………」
「なわけあるか!」
公が桜に食って掛かると、桜は持っていた学生服を公に押しつけた。
「おばさん。脱衣所借りますね」
マザーからセーラー服を貰った桜は公の部屋を出ていった。
◇
"やっぱり公の家にあった"
手に持つセーラー服を見てホッとしている桜。
"これで無事に高校の入学式に行ける"
桜は上着を脱ぎ、スカートに手をかけて脱ぎかけた状態で止まった。
「ねぇ、作者」
なに?桜。
「普通は公の着替えのシーンじゃないの?」
そうだね。今公はちゃんと着替えをしてるから心配しなくていいよ。
「そう。そんな心配してないからどうでもいいわ」
なら、どうしたの?
「なんで私の着替えについてきたの?」
男性読者へのサービスショットのためだよ。
「絵が無いのにサービスショットになるの?」
無いほうが妄想力をかきたてられて余計に興奮出来るらしいよ。
私の言葉に桜は額に手をあてて呆れた様子だった。
「作者。直接会って話がしたいんだけど」
いいよ。
☆
私は桜を特別な空間に呼び出した。
「これで直接話せるよ」
「ありが………」
桜の言葉が止まり、唖然とした表情を浮かべる。その視線の先には学生服に着替えている途中の公。驚きのあまりに桜の手の力が緩み、スカートが落ちきる。
「キャーーーーー!!」
悲鳴とともに公へ接近した桜はグーパンチ1発で公を殴り倒した。
「なんで公までいるのよ!」
公をノックアウトした桜は私に迫ってきた。
「だって、この場所は作者と登場人物が直接話すために作った空間だから公がいるのはあたりまえじゃん」
「さっきの話からして2人で話したいって意味だってなんでわからないのよ!」
殴りかかってきたので桜の拳を避けながら距離をとる。
「それで話って何かな?」
近づいてきた桜がまた殴りかかってきたので避ける。
「危ないじゃないか」
「話はなくて1発殴りたかっただけだから殴らせなさい」
「そんなのイヤに決まってるじゃないか」
「あんたの気持ちなんか知るか!」
さらに連続で殴りかかってきたので、
☆
桜は公の家の脱衣所で下着姿のままシャドーボクシングをしていた。
「逃げるな!」
逃げるよ。それに、公が気絶しているから早く起こしにいったほうがいいよ。
「チッ!」
舌打ちをした桜はセーラー服を手早く着ると、脱衣所を飛び出して公の部屋へ。
床で仰向けに気絶している公の肩を掴んで持ち上げ、座らせるとおもいっきり前後に揺らした。
「起きなさい!公!」
ガックンガックン揺らされるが公は無反応。
「ホントに起きなさいよ!入学式に遅刻するわよ!」
しかし、いっこうに起きない公。
「もう!仕方ないわね!」
そう言うと桜はバチコーン!と公の頬にビンタを叩きこんだ。
「イッテー!」
さすがにこれには起きた公は、ビンタを食らった右頬に手をあてた。それを見て桜は「よし!」と頷いていた。
「やっと起きたわね!」
「起きたわね、じゃねーよ!イテーじゃねーか!」
公にとっては当然の抗議だが、桜にとってはどうでもいいことなので取り合う気はない。
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"どこがよ!"
「そういや、なんで俺は寝てたんだ?」
公は記憶を辿る。
「確か部屋で制服に着替えていたはずなのにいきなり変な場所に連れてかれて、そこになぜか赤い下着姿の桜も居たような………」
「なに変なこと言ってるのよ!そんなことより早く着替えて朝食食べなさいよね!入学式に遅れちゃうじゃないのよ!」
今度は必死に話のすり替えを行う桜。
しかし、高校の入学式に赤い下着っていうのはちょっと気合い入れすぎじゃない?どれだけ殺る気満々なの?
"やる気の漢字がおかしいでしょ!それに今日の私の下着は赤じゃないわよ!なに嘘書いてるのよ!"
嘘だなんて失敬な!私が書いたことが真実なの!それが小説というものよ!
"事実をねじ曲げるな!"
じゃあ今日の下着の色は何!?
"ピンクの花柄よ!ってハッ!"
ピンクの花柄とは可愛い下着を穿いているんだね。ニヤニヤ。
"っ~~~~~!"
顔を赤くする桜。着替えを終えた公はその様子を不思議に思いながら首を傾げた。
「桜、熱でもあるのか?」
「なんでもないわ!」
なんでもないことないでしょ。
「作者!うるさい!」
「また作者が何かしたのかよ」
あれ?私が悪役なの?
「今さらだな」
「当たり前なこと聞かないでよ」
あれ~。私、作者だよ?君達の産みの親なんだよ?
「だからなによ」
「作者なら執筆だけに集中しろよ」
「ホントに。出てこないでほしいわね」
う、うちの子達が反抗期よー!
『こんな親なら誰だって反抗期になるわ!』
うわーん!
私を泣かせてニヤニヤする2人。
人でなし!
『人でなしで結構』
「2人共~!朝ごはん食べないの~?」
マザーの言葉でハッとする2人。
「作者の相手してる暇なかったんだ!」
「早く朝ごはん食べて入学式に行かないと!」
2人は慌てて部屋を出ると階段を降りてダイニングへ入り、椅子に座る。
「2人共降りてくるのが遅かったけど、何してたの?」
「虫の退治に手間取ってね」
「ようやくさっき退治できたんです」
「そうなの」
2人の嘘をのほほんと信じてしまうマザー。
作者を虫扱いとはヒドくない?
"ヒドくないな"
"ヒドくないわね"
うわ~。2人の心の声が同じだ~。
2人は手の代わりに机の下で足でハイタッチした。
扱いの改善を要求する!
""ムリ!""
2人は私が何か言うより先に足でハイタッチ。
グスン。
「桜ちゃんは朝ごはん食べてきたの?」
「いえ。急いできたのでまだです」
「なら、桜ちゃんの分も作って正解だったわね」
「ありがとうございます」
「いいのよ」
マザーが用意した朝ごはんを2人は食べ始めた。
「今日の入学式、見に行くから頑張ってね」
「入学式なんて座ってるだけなんだから何を頑張るんだか」
公は呆れた様子でパンをくわえた。
見に来ないでとは言わないんだね。
"言ったところで見に来るし、そんなやり取りしてたらお前がからかってきそうだからな"
からかいはしないけどひやかしはするかな。
"ほとんど同じじゃねーか!"
で、来るなと言われたらマザーはどう思うの?
「泣くかもしれないわね」
「いい大人が息子から拒否されたくらいで泣くな!ってか、母さん作者の声聞こえてるんじゃんか!」
「あっ!てへっ」
嘘がバレたマザーは頭に拳をあてながら軽く首を傾け、ウインクをして舌を出した。
「キモいぞ、母さん」
「ヒドいわ、公」
泣き崩れたマザーに駆けよって支える桜。
「公。母親は大事にしなさいよ」
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「うっうっうっ。桜ちゃんもヒドい」
泣いてるマザーをガン無視で朝ごはんを食べ終えた2人。
『ごちそうさま』
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「それじゃあ行ってきます」
「行ってきます、おばさん」
「いってらっしゃい」
ウソ泣きなのであっさり立ち直ったマザーは笑顔で2人を見送った。
マザーに見送られて家を出た2人は、あまり時間に余裕が無いので軽く走りながら駅を目指す。
高校生になるんだから、もっと余裕を持った行動をした方がいいと私は思うけどな~。
「誰のせいでこんなことになってると思ってるんだ?」
まさか私のせいだとでも?
「それ以外に原因が思いつかないわよ」
ふーん。ならこれまでの出来事のハイライトでもしてみようか?
「あぁやれるものなら「やらなくていいわよ」
「おい!言葉被せてくるな!それにやらなくていいのかよ!」
「いいのよ。その時間がもったいないんだから」
ホントにそれだけかな~。ニマニマ。
「それだけよ」
「おい桜」
それ以上は何も言わずにスピードを上げる桜。その後ろ姿を見ながら首を傾げた公だが、すぐにスピードを上げて桜を追った。
2人がやって来たのは駅。そこでは見ず知らずの2人が待っていた。
「何嘘言ってんだよ、作者。俺と桜の幼なじみの『友人A』と『友人B』じゃねーか。ってなんで名前が言えねんだよ!」
ちょっと待って。名前考え中だから。
必死に名前を考えている私を4人が冷ややかな目で見てきた。
よし、決めた!2人の名前は暁と楓ね。
「小説書くときって、まず名前とかの設定をちゃんと決めてから書き始めるものじゃないかしら?」
そういうのめんどくさいから私は行き当たりばったりでやる!
楓の私を見る目がさらに冷ややかなものになった。
「1番ダメになるパターンじゃないかな~」
暁の言葉に3人が頷く。
ダメになったら1から書き直すから大丈夫!
『はぁ~』
「あはは………」
公・桜・楓のため息が重なり、暁は苦笑していた。
「こんなバカはほっといてさっさと行くか」
「そうね」
私を放置して4人は改札を抜けた。
「そういえば、2人が来るのが遅かったから心配したわよ」
「ホントだよ~」
「作者がうざくてね」
「あぁ~」
「納得したわ」
あっさり納得されてしまった!
私が悲しんでいることなど気にしない4人はホームにやって来たのだが、ホームには誰もいなかった。
「ねぇ~。確かに時間としては早く出たけど~ここまで人がいないっておかしくない~?」
暁の言葉に同意しつつも、3人は1つの答えにたどりついていた。
『どうせ作者の仕業だろ(でしょうね)(に決まってるわよ)』
はい正解!ということで、
~♪♪♪~
『次に参ります電車は、作者の恨みつらみ満載の特急、入学式遅刻行き。入学式遅刻行き。危険ですので白線の内側までお下がりのうえ、絶対に乗り込んでください。電車が発車して10秒後にこのホームは爆破されますのでご注意ください』
~♪♪♪~
『作者!』
4人の叫び声を聞いて私は爆笑した。
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そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
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