私のための小説

桜月猫

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64話

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「せっかく夏休みに入ったのに、なんで俺は勉強してるんだ」

 そんな疑問を口にした庵は一緒に勉強している蛙を見た。

「勉強じゃなくて夏休みの宿題な」

 蛙は庵の間違いを訂正した。
 そこへさらに朧月が追い討ちをかけるように言った。

「お前はほっておくと最後の3日ぐらいで泣きついてくるだろ?だから、みんなで集まって一気に終わらせとくんだよ」

 朧月の言葉通り、ここにいるのは庵・蛙・朧月の3人だけではなく、公達もいた。
 そして、夏休みの宿題を早く終わらせるための勉強会を行っていた。
 ちなみに、集まった場所は公の家なので、舞や夢もこの勉強会に参加して、みんなから勉強を教わっていた。
 さらに言えば、3日間で終わらせる予定でいるのでみんな泊まり込む準備をして集まっている。

「口を動かしてないで手を動かしてください」

 長からの注意で庵は宿題に目を向けた。
 しかし、休憩を挟んでいるとはいえ、それでもすでに朝の9時の集合から2時間は勉強しているので庵の集中力はほぼ無くなっていた。
 それを察してか、萌衣が提案した。

「そろそろお昼にしませんか?」

 萌衣の言葉にみんなが時計を見ると11時半になっていた。

「そうだね。そろそろ準備を始めようか」

 泊まり込みでの勉強会が決まった時、萌衣が「食事の準備は全て私が私が行いますから」と言ったのだが、さすがに22人の食事を萌衣1人に作らせるのは申し訳がないという意見が満場一致で出てきたので、食事の準備はみんなですると決めたのだ。
 う~んと背伸びをした桜は立ち上がった。それにあわせて暁や彩などの料理を手伝う人達も立ち上がった。

「それじゃあテーブルの準備よろしく」

 公達にそう言った桜は、萌衣達とキッチンへ向かった。

「ふぅ~」

 お昼ということで勉強から解放されるとあって、庵は大きく息を吐いていた。

「しかし、夏休みの宿題多すぎ」

 愚痴を言いながら床に倒れこむ庵。ため息を吐いた朧月は庵のお腹を踏みつけた。

「グエッ」

 踏みつけられた庵は起き上がると朧月を睨み付けた。
 睨まれた朧月は庵にアイアンクローを食らわせた。

「イタタタタタ!」
「自由研究や読書感想文とかないだけマシだろ」

 朧月が手を離すと庵は床に再度倒れた。そして、額に手を当てた。

「そうなんだけどな。でもその分プリントや問題集が多すぎないか?」

 起き上がった庵は分厚い問題集を持ってパタパタと振った。

「でも、みんなでやってるから進みはいつもより早いだろ」

 そう言っている朧月もいつもより宿題がはかどっていた。

「それもそうなんだけど」

 宿題の進みがいいことは納得しているのだが、やっぱり宿題をしたくないという気持ちがある庵はなんともいえない表情をしていた。

「そこまで宿題がやりたくないのか?」

 宿題をすることを苦痛に思わない龍は不思議そうに庵を見た。その視線を受けた庵は苦笑した。
 今回勉強会に参加している中で宿題を苦痛に思わないのは龍・長・雪・光・蛙・蛍・楓・彩といったテスト成績上位陣と、さっさと終わらせればどうってことないと楽観的考えをもつ朧月と暁くらいで、他のメンバーは多少なりとも苦痛だったりめんどくさいと思っていた。

「好き好んでやりたいとは思わないな」

 庵は問題集を置いた。

「そんなものなのか?」

 龍は意見を求めるように公を見ると、宿題を多少めんどくさいと感じている公は苦笑を返した。

「そうだな。庵の考え方が一般的と言えるんじゃないか」
「そうか」

 納得した龍はテーブルの準備を始めた。

「そういえば、22人が囲んでも十分な広さがあるテーブルなんてよくあったね」

 リビングにデンと置かれた巨大なテーブル。

「こんなデカいテーブルが普通の家にあると思うか?」

 皮肉っぽい笑みを浮かべながら公は蛍を見た。

「あ~。やっぱり普通はないよね」

 蛍が苦笑してると庵が問いかけた。

「だったらどうしてあるんだ?」

 疑問に思っていた蛙達も公を見た。

「作者が夏休みの泊まり込みでの勉強会をやりたいがために用意したんだよ。しかも、このテーブルを置くためにリビングを広くしやがったし。だから、今のリビングは普段のリビングの3倍あるんだよ」

 広くなったんだからいいじゃないか。それに、今回の勉強会が終わったらちゃんと元通りにするしさ。

「いいわけあるか。お前の都合で色々振り回されているこっちの身にもなってみろ」

 登場人物達が作者に振り回されるのは仕方ないことだろ。なんせ、物語を書いているのが作者なんだからな。

「公。テーブルを拭くためのフキンってどこだ?」
「ダイニングのほうにあるからちょっと待っててくれ」

 さっさと俺を無視してテーブルの準備を始めた公達。
 公はフキンを取りにダイニングに向かった。

「あれ~?どうしたの~?公~」

 公に気づいた暁が問いかけた。

「フキンを取りに来たんだよ」

 公はフキンを持つとダイニングを出ていこうとしたが、

「公」

 桜に呼び止められた公は振り返った。

「どうした?」
「もう少ししたら出来るから取りにきてもらえる?」
「わかったよ」

 頷いた公はフキンを持ってダイニングを出るとリビングに戻ってきた。

「龍。フキンだ」
「ありがとう」

 フキンを受け取った龍はテーブルを吹き始めた。

「そういえば、もう少ししたら出来るらしい」
「だったらすぐにテーブルの準備を終らせて取りにいかないとな」

 公の言葉を聞いた庵はお腹が空いていたということもあって動きがよくなった。
 そんな庵の姿に苦笑しながらも蛙達も宿題を早く片付け、机を拭いてダイニングに移動した。

「ちょうどいいタイミングですね」

 長は出来上がったスパゲッティの入った皿を公に差し出した。

「ハイハイ」

 受け取った公はそれを後ろへ回していき、受け取った蛙達はダイニングに移動していった。そして、全員がダイニングに移動し終わってテーブルにつくと、全員の視線が公に集まった。

「公。号令してくれ」
「俺?」

 そんなことを言われるとは思っていなかった公は戸惑った。

「そりゃあ、家の主人だからな」

 蛙の言葉に一瞬ポカンとした公だが、すぐに首を振った。

「いやいや、主人じゃねーし」

 公の言うように、本来の家の主人はダディだ。

「でも、今いる中だとな」

 龍は舞と夢を見てから公を見た。
 そう言われるとなにも言えない公は頭を掻いた。

「それじゃあ手を合わせて」

 みんなが手を合わせたのを確認した公。

「いただきます」
『いただきます』

 公の号令でワイワイと食事が始まった。
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