私のための小説

桜月猫

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63話

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 7月も半ばにさしかかり、期末テストも終わってあとは夏休みを待つだけとあってみんなウキウキし始めているのだけど、そんな中、ウキウキできない人間が3人いた。
 庵・中二・ゆっこの3人だ。
 理由はもちろん3人とも赤点をとってしまったから。そして、赤点を取った3人には当然追試がある。
 そんな追試組のために公達は放課後に勉強会をやることにしたのだが、中二は「我にそんなのは必要ない!」と帰ってしまった。
 なので、勉強会の参加者は庵とゆっこだけなのだが、庵は朧月に頭をポンポンと叩かれていた。

「ちゃんと勉強しろって言っただろ」

 頭を叩かれている庵は反論も出来ずにうつ向いていた。

「中間テストの時に赤点回避できたからって油断しただろ?」
「うぐっ」

 分かりやすい反応に公や蛙も呆れていた。
 庵の隣ではゆっこが夕に泣きついていた。

「ゆっこも油断したわね」
「どうしよ~夕~。このままじゃ夏休みに補習にこなくちゃ行けないよ~」

 泣き言を言うゆっこの肩を掴んで引き剥がした夕は、その目を見つめた。

「そうならないためにもこれから追試のための勉強するんでしょ」
「うん!」

 ゆっこは力強く頷いた。それを見て夕も頷いた。

「ほら、向こうは気合い入れてやる気になってるけど、お前はどうなんだ?」

 頭を叩く手を止めて朧月が問いかけると、顔を上げた庵は朧月を見つめた。

「もちろん頑張って勉強するさ!」

 気合いが入った庵を見ながら公はふと思った。

「そいうや作者」

 なに?

「今回の期末テストでは勝負とか言い出さなかったけど、どうしてだ?」

 あ~。だって、誰が最下位になるかわかりきった勝負をしたところでおもしろくないでしょ?

「それはそうだな」

 でしょ?今回の期末テストの結果でも、間はちょこちょこと順位の入れ替わりはあったのだけど、トップ3と3バカはお馴染みのメンバーだったし、3バカは見事に赤点とるし、勝負する意味すらなかったからしなかったのよ。

「なるほど。納得したよ」

 桜達も納得したように頷く中、3バカの庵とゆっこはうなだれていた。

「ほら、下を向いている暇なんてないんだからね」

 夕の一言でもう1度やる気を入れ直した2人は顔を上げた。

「それに、追試を合格すれば補習は免れるんだから頑張れよ」

 そう。赤点を取っても追試を1発合格すれば補習は免れるのだ。

「そうだね~。赤点取ったら即補習じゃないぶんマシだよね~」

 暁の言葉には庵もゆっこも頷いていた。
 もし赤点即補習となっていたら、2人とも今ごろ真っ白に燃え尽きている可能性があっただろう。

「それで、赤点の教科は何なのですか?」

 クラスの違う彩は2人がなにで赤点を取ったのか知らないので問いかけた。

「私は社会」
「俺は数学と英語」
「あんた2人も赤点取ったの!?バカねー!」
「なに言ってやがる!俺は社会では赤点取ってねーぞ!つまり、社会ではお前のほうがバカなんだよ!」
「なによ!」
「なんだよ!」
『やめろ(なさい)!』

 朧月が庵の、夕がゆっこの頭を殴って2人の言い争いを止めた。

「そもそも、赤点を何教科取ったとか、何で赤点を取ったとか言い合う前に、赤点を取った時点でどちらもバカだと思うけど」

 雪の言葉に公達が同意して頷いていると、庵とゆっこは恥ずかしくなって顔を赤くしてうつ向いた。

「わかったら追試を1発合格出来るように勉強を始めるよ!」
『はい!』

 2人は背筋を伸ばして頷いた。

「それじゃあ庵の場合はまず数学からするぞ」

 教えるのは当然数学の得意な朧月と今回も2位の龍。

「こっちも勉強を始めましょうか」

 ゆっこのほうにつくのは1位の長と3位の雪。
 残った公達もそれぞれで集まって得意不得意を教えあったりして勉強し始めた。


          ◇


 勉強会の誘いを断った中二は家に帰って必死に勉強をしていた。

「追試になんとしても合格して補習を回避しなければ」

 ちなみに、中二が赤点をとった教科は数学と理科の2つ。

 でも、そこまで補習がイヤなら勉強会に参加すればいいのに。

「ふっ。我は群れなければなにも出来ないヤツらとは違うのだよ。それをこの追試で見せつけてやる」

 そのムダに高いプライドはめんどくせーな。

「ふっ。プライドもなにも持たぬ貴様にはわからぬことだろうな」

 俺はそれでいいよ。プライドなんて持ってたところで邪魔なだけだしな。

「そんなんだからこの小説の読者も少ないんだよ」

 それでいいさ。

「なに?」

 もともと最初から言ってるだろ。俺が満足するためだけの小説だってな。だから読者が少なくてもいいんだよ。

「どこまでもプライドがないヤツめ」

 俺への興味を無くした中二は勉強に戻った。


          ◇


 勉強会が始まってから1時間。途中1度休憩を挟んで庵は今は英語を勉強していた。教えているのは長と龍だ。

「そこの読解はこっちのほうを見るのが正解ですよ、朧月くん」

 科目が英語に変わったことによって、当然英語の苦手な朧月も庵と一緒になって教わっていた。

「横文字は苦手だな」
「どこのおじいさんですか?」

 朧月の言葉に長は苦笑していた。

「最近の若い者はよくこんなものを理解出来るな」

 おじいさんのようなしがれた声で朧月がボケると長はさらに苦笑した。

「朧月もその最近の若い者のはずですよ?」
「俺の場合、小学の時に勉強が楽しいと思えたのが算数と理科だったことで、完璧な理数系に入っちまったから文系は苦手なんだよな」
「小学の時には英語はまだ本格的にはなかったとして、国語は楽しくなかったのですか?」
「夏休みの宿題で漢字をひたすら書くだけのがめんどくさくて好きになれなかったな」

 朧月の答えに一瞬ポカンとした長だが、やっぱり苦笑した。

「じゃあ、ここで少しは克服して欲しいください」
「頑張ってはみるさ」

 別に追試があるわけでもない朧月は庵の隣で一緒になって英語を勉強した。


          ◇


 そうしてみっちりと勉強した翌日の放課後。庵・中二・ゆっこの3人は追試が行われる教室にやって来た。
 追試は2部屋使って行われ、50人ほどが集まっていた。

「それでは今から追試を始める。わかっていると思うが、この追試に落ちたら夏休みに入っても1週間補習で学校に来ないといけなくなるから気合いをいれろよ」
『オォーーーーー!』

 補習はなんとしても回避したい赤点組は雄叫びを上げた。

「それじゃあ追試のテストを配るぞ」

 そうして追試が始まった。


          ◇


 追試が1教科だけのゆっこは先に公達が待っている教室にやって来て、1番に出迎えてくれた夕に抱きついた。

「やったよ!追試1発合格だよ!」
「やったね!ゆっこ」

 夕がゆっこを抱きしめ返すと、2人は飛び跳ねながら回り始めた。

「あとは庵だけか」

 蛙の呟きで落ち着いた夕とゆっこは席に座ると庵の追試が終わるのを待った。
 ゆっこから遅れること1時間。廊下をドタドタと走る音が聞こえてきたかと思うと扉が開かれ、庵がバンザイしながら入ってきた。

「補習回避!」

 その言葉にみんなが庵に拍手を送った。

「補習回避はよくやった。だが」

 蛙は庵の頭を叩いた。

「今度からは赤点を取ることがないように気を付けろ」

 蛙の言葉に公達は頷き、庵とゆっこはしゅんとした。


          ◇


 ちなみに、話題にはあがらなかったが、中二もギリギリだが無事に追試を合格して補習は免れていた。

 というわけで次からは夏休み!
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