私のための小説

桜月猫

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62話

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 公達は、会長の招きに応じて隣のテントに移動した。そこには商店街のおばちゃん達がいてワイワイと話していた。

「あら、公ちゃんに萌衣ちゃんに瞳ちゃんじゃない」
『こんにちは』
「ほら、座って座って」

 おばちゃん達に捕まり、椅子に座らされて取り囲まれるた3人の前にはお茶やお菓子が用意された。

「瞳ちゃんは久しぶりね」
「はい、お久しぶりです」
「今日はお母さんの買い物についてきたの?」

 瞳が住んでいる街はこの商店街から少し遠く、瞳が1人でやって来るのは厳しい。なので、いつもこの商店街に来るときは母親と一緒に来るのだ。

「はい」
「そう」

 微笑みながら頷いたおばちゃん達の視線が公に向いた。

「地元じゃない瞳ちゃんでも度々商店街にやって来るのに、地元のはずの公は高校に入ってから萌衣ちゃんに任せっきりでほとんど来なくなったわね」

 おばちゃん達の視線の圧力に公は苦笑した。

「高校になって色々忙しいんですよ」
「それでも商店街に少し寄るくらい出来るんじゃない?」
「そうそう。少し顔を見せてくれるだけで私達は満足なんだから」
「それぐらいなら出来るわよね」

 おばちゃん達の強くなっていく圧力に公はただただ苦笑し続けた。

「返事を聞かせてほしいのだけど?」

 おばちゃん達に囲まれて逃げ道を塞がれた上で返事を迫られた公。

「わかりました。出来るだけ商店街に来るようにします」

 公の返事を聞いたおばちゃん達は笑顔で頷いた。

「私のところにも週1で来るようにしてくださいね」
「その約束はできねーな」

 流れで約束をとりつけようとした瞳だが、しっかりと拒否されてガックリとうなだれた。

「ほら、瞳ちゃんの好きなどら焼きよ」
「元気出しなよ」

 おばちゃん達になぐさめられた瞳はどら焼きを食べた。
 すると、瞳の携帯が鳴り出したので、瞳は電話に出た。

「もしもし。あっ、お母さん。えっ?今?今は商店街の笹飾りのところの休憩所で休んでるところ。うん。わかった」

 電話を切った瞳はどら焼きの続きを食べ始めた。

「おばさんの買い物終わったのか?」
「うん。もうすぐここに迎えに来るって」
「そうか。なら俺達もそろそろ買い物に戻るとしましょうか」

 公の言葉に萌衣は頷いた。

「久しぶりに来たのにもういっちゃうのかい?」

 おばちゃん達からはブーイングが起きた。

「もともと買い物のために来たんですからいつまでもここで休んでるわけにはいきませんよ」

 おばちゃん達のブーイングなど気にしない公は立ち上がった。すると、瞳も立ち上がって公の腕に抱きついた。

「それじゃあ、どら焼きとお茶ご馳走さまでした」
「瞳ちゃんもいっちゃうのかい?」
「はい。失礼します」

 名残惜しそうに見てくるおばちゃん達に手を振りながら公達がテントから出ると、笹飾りにはたくさんの子供達が集まっていて短冊に願い事を書いていた。

「おや、帰るのか?」
「はい。まだ買い物の途中ですし」
「それは引き止めて悪かったな」
「いえいえ」

 公が会長さんと話していると、短冊を書き終えた子供達が公達のもとへやって来た。

「あー!公と瞳と萌衣だ!」「久しぶり」「公!また遊ぼうぜ!」「萌衣は相変わらずメイド服なのね」「瞳は相変わらず公にべったりだし」
「そのまま付き合っちゃえばいいのに」
「ホンマにその通りやな」
「コラ!そこの2人!なにどさくさに紛れて変なこと言ってるんだよ!」

 公が指摘した2人とは瞳母と人だ。

「ってか、おばさんはともかくなんで人がここにいるんだよ」

 公の問いに人は持っていた短冊とマジックを公に見せた。

「見ての通り七夕イベントの手伝いや」

 その答えに人がここにいる理由に対しては納得した公。だが、先ほどの冷やかしには全く納得していなかった。

「ここにいる理由はわかったが、その場のノリと勢いだけで冷やかしに乗っかってくるな」
「なに言うてんねん。関西人なんやからノリと勢いで乗っかるのは普通やんか」
「そんな普通知るかよ」

 呆れた公が額に手を当てていると、人は笑いだした。なので、公は人を放置して瞳母を見た。

「おばさん」
「なにかしら?」
「会うたび冷やかすの止めてくれませんか?」
「どうして?お似合いだと思うのだけど。それとも、瞳のことがキライなの?」
「いつも言ってますけど、冷やかされるのがキライなんですよ」
「相変わらずシャイね~」

 相変わらずまとに会話が出来ない瞳母に公はため息を吐いた。

「瞳。帰るわよ」
「は~い。公お兄ちゃんまたね」

 公の腕から離れて母の腕に抱きついた瞳は手を振った。

「またな」

 公が手を振り返すと2人は笑顔で去っていった。
 2人を見送った公は、一緒に手を振っていた人を見た。

「手伝いをサボってこんなことしてていいのか?」
「手伝いゆうてもあんまりやることないし、おばちゃん達も出てきたから俺1人おらんかったって大丈夫や。それに、懐かしい顔と再会したから少し話がしたいしな」

 そう言いながら人が萌衣に視線を向けた。

「えっ?人と萌衣さんって知り合いなの?」
「えぇ。腐れ縁というものですけど」

 驚いている公へ萌衣がそう言うと、人は笑いだした。

「確かに腐れ縁ではあるな。しかし、野良メイドやったお前がようやく見つけた主が公だとはな」
「まだ正式に認めてはもらってませんけどね」
「そうなんか!?」

 人が驚きながら公へ視線を向けると公は頷いた。

「いきなり押しかけられてご主人様になってくれって言われても困るから、とりあえずうちで働いてもらって様子見ってところだな」
「アハハ!押し掛け女房じゃなくて押し掛けメイドって!」

 笑いだした人を見て不機嫌になった萌衣は公と腕を組んだ。

「公様。こんなヤツはほっておいて買い物の続きをいたしましょう」
「あー。そうだな」

 一瞬人を見た公は、萌衣の言葉に同意して歩き出す。

「萌衣」

 笑うのを止めた人が萌衣を呼び止めると公が立ち止まったので、内心舌打ちをしながら萌衣も立ち止まった。

「公様。少し人と話しをしたいので、魚屋で待っていてもらえませんか?」
「わかったよ」

 公が頷いたので組んでいる腕を離すと公は魚屋へ向かった。それを見送ってから萌衣は振り返って人を見た。

「それで、なにかしらバカ」

 不機嫌さを隠すことなく容赦のない罵声をあびせてきた萌衣に、人は苦笑した。

「公がいなくなった瞬間、いきなりバカ呼ばわりはヒドくねーか?」
「話がないのでしたら、私は公様のもとへ向かわさしてもらいますけど?」

 暗にムダな話をする気はないと言われたので、人は本題に入った。

「お前が公を主と決めて、公がそれを正式に受け入れたら、協会をはじめとしたいろんな所が黙ってないってことは理解してるんやろな?」
「もちろん。そんなことはわかっていますよ」
「そうか。ならいいんやけど。しかし、お前が誰かの後ろについて歩くなんて思ってもいなかったからホンマに驚いたで」

 話は終わったし、そんなことは知ったことではない萌衣は人を無視して歩きだした。

「おい!無視はヒドくねーか!」

 公のもとへ早く行くことしか考えていない萌衣は人のことなどガン無視で歩きさってしまった。
 その姿を見送るしか出来なかった人は大きくため息を吐いてから手伝いに戻るのだった。
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