私のための小説

桜月猫

文字の大きさ
74 / 125

73話

しおりを挟む
 公は改めてホットミルクを作って飲みはじめた。

「そういえば、幽ってほかの人には見えるのか?」

 霊感がある人なら見えるだろうね。あ~。そうそう。今回のことで公にも霊感がついたからね。

「なっ?」

 霊感がないと幽は見えないんだから普通だろ?

「あ~。そういえばそうか」

 納得した公はホットミルクを一口飲みました。

【あの、公さん】
「なに?」

 公が幽を見ると、幽は首を傾げていました。

【先ほどの女性の声もそうなんですが、今聞こえる男性の声もどこから聞こえているんですか?】
「あ~」

 どう説明すればいいかわからずに公は頭を掻いた。

 そうか。俺が干渉できない世界だから、俺のことを知らないのか。

「そういうことみたいなんだよ」

 ふむ。それなら、これでどうだ。

 幽がビクッとした。 

【なるほど。わかりました。あなたが作者なのですね】

 そういうことだ。理解した?

【はい。そして公さん。中二なんて言ってすいませんでした】
「大丈夫だから気にするな」

 公は頭を下げている幽の頭を撫でた。

「まぁ、知らなかったらそう思ってもしかたないからな」
【公さん】

 あっ、そうそう。もちろん幽は普通の人には見えないし、声も聞こえないから話す時は気をつけなよ。

【でしたら、普段は私は黙っているほうがいいですね】

 幽の言葉に公は顎に手を当てた。

「作者。どうにかならないか?」

 公ならそう言うと思ってたから、幽に話しがしたいと思ってから心の中で声をかければ幽と話せるようにしといたから。

 俺の説明を聞いた公は早速試しに幽と話したいと思ってから心の中で声をかけた。

【幽。聞こえるか?】
【はい。聞こえます。公さん】
【これなら人が居ても普通に話せるな】
【はい!】

 幽は公に笑顔を向けて頷いた。

「作者もたまにはいいことするよな」

 まぁね。

【そういえば、私って守護霊にクラスアップしたと言っていましたが、どんなことが出来るのですか?】

 そうだね。公に悪さをしようとする悪霊退治だね。

【それだけですか?】

 それ以外だと、軽いポルターガイストを起こせるくらいかな?

「それってどれくらいの威力なんだ?」

 小物を動かせるくらいだね。

【それしかできないのですか?】

 そうだね。守護霊とは言っても実体を持たない幽霊だからね。でも、守護霊がついている人間は運が少しよくなるから、幽が憑いてることで公の運はよくなってるよ。

【そうですか】
「なにを落ち込んでるんだよ」
【結局、私は幽霊でしかないんですね】

 幽の答えに公はため息を吐きながら幽の頭を撫でた。

「俺は別に幽が何も出来ないただの幽霊だったとしても気にしねーぞ。だって、こうして一緒にいて話が出来るだけで楽しいからな」

 公が笑顔を向けると幽は頬を赤く染めました。

「それに、幽だって自分の部屋で1人でいるより、こうして話相手がいるほうがいいだろ?」
【もちろんです!】

 幽は力強く頷いた。

「だったら落ち込む必要なんてどこにもないだろ?」
【そうですね】

 納得して微笑んだ幽の頬はさらに赤くなっていた。

 さすが天然ジゴロ。幽霊すらもこんな短時間で攻略してしまうとは!

「おい、そこの駄作者。なに言ってやがる」

 事実を言ったまでだよ?今の幽の乙女顔を見て違うと言えるのかな?

 俺の言葉に公が幽のほうを向くと、赤くなった顔を見られたくない幽はさっと顔を背けた。

 ほらね。幽をあんな状態にしといて天然ジゴロじゃないと言われても、説得力の欠片もないぞ。

 なにも言い返せないでいる公の姿に俺はニマニマしていた。

≪公。マスターの言葉なんて気にしてはいけませんよ≫

 唐突に話に入ってきたロマ。

 ってか、なんで公側に行ってるんだよ。

≪私はいつでも登場人物達の味方ですから≫
「ありがとう、ロマ。そうだよな。作者の言うことなんて気にしたら負けだよな」

 ほら、公が立ち直りやがったじゃねーか。面白くねー。

「あいにく、お前を楽しませる気はないんでね」

 残念だけど、俺が楽しむためにやってるから、無理矢理でも楽しくなってもらうからな。

「勝手にしてろ」
【あの、あなたがロマさんですか?】
≪はい。私がロマです。よろしくお願いします≫
【こちらこそ、よろしくお願いします】

 目の前にロマがいるわけでもないのに頭を下げる幽の姿に公は微笑んでいた。


          ☆


【ここは?】
「ヤッホー。初顔合わせだし、呼んでみた」

 唐突なことに幽は驚いていた。

【それじゃああなたが】
「そう作者(男性バージョン)だ!そして!」
≪どうも、ロマです≫

 ロマがお辞儀をすると、幽もお辞儀を返した。

「そして、こっちが作者(女性バージョン)よ」
【ホントに男性にも女性にもなれるのですね】

 幽は素直に驚いてくれるので、私は嬉しくなって微笑んだ。

「公達もこれぐらい素直に私の言うことを聞いてくれればいいのに」
≪そんなことをしたらこの小説が崩壊します≫
「すでに十分崩壊していると思っているくせに」
≪なんとかギリギリのラインで耐えているのですから、これ以上崩壊させないでくださいよね≫

 ロマの小言に私はため息を吐いた。

【そういえば、公さんがいないようですけど】
「あぁ。公を呼ぶとうるさそうだから置いてきたわ」
【私、公さんの守護霊なのに離れても大丈夫なのですか?】
「大丈夫大丈夫。作者の私が保証するわ」
≪マスターの保証は1番信用できない保証ですね≫

 ロマの辛辣な一言に私は泣きたくなってきました。

【大丈夫ですか?】

 心配してくれる幽の優しさが身に染みてきて軽く泣けてきた。

「みんなの生みの親であるはずの私にみんなきつくあたってくるから辛いのよ」
【そうなんですか?】

 幽は首を傾げながらロマを見た。

≪全部マスターの自業自得ですから同情する必要はないですよ、幽。それに、これからマスターの無茶苦茶に巻き込まれていけば、私達の考えも理解出来るでしょう≫
【そんなに無茶苦茶なんですか?】
≪えぇ。無茶苦茶です≫

 2人の視線が私に向いたので、私は「テヘッ☆」と可愛く返した。すると、幽は苦笑し、ロマはため息を吐いた。

「その反応はヒドくないかな?」
≪可愛くないのでこれ以上の反応はありませんけど?≫
【あはは………】

 2人の反応に頬を膨らませる私。

【そういえば、公さんやロマさんの生みの親は作者なんですよね】

 あからさまな話題変更だけど、「まぁいいや」と思って頷いた。

「そうよ」
【じゃあ、私の生みの親って誰なんですか?】
「それね~。案外、あの3人娘の恐怖心の塊があなたかもしれないわね」
【3人娘ですか?】
「えぇ。さっきまでいたロッジには公以外にも3人の少女が泊まっているのよ。そして、3人とも雷に恐怖していた。そんな中、森の中のロッジに泊まるとなると、オバケや幽霊を意識しないわけがない。そして、居もしないオバケや幽霊に恐怖心を抱いたまま眠った結果、幽が生まれた。
 と、言っても、これは全部私の想像だから実際のところはどうなのかわからないけどね」
【そうですか】

 幽は私の仮定を聞いて微笑んだ。

「それじゃあ、そろそろ向こうに戻すわね」
【はい。さようなら】
≪さようなら、幽≫
「まったね~」


          ☆


 公の隣に帰ってきた幽は公へ微笑みかけました。

【ただいまです】
「おかえり」

 公が微笑み返すと、幽は突然廊下のほうを向いた。

【誰か来ます】

 その言葉に公が廊下のほうを向くと、3人が入ってきた。

「なんだ。ここにいたのね」

 公の姿を見つけて秋はホッとしていた。

「どうかしましたか?」
「いえ。夏が目覚めたら公が居なかったから心配になってみんなで探したのよ」
「そうだったのですか。それはすいません。なぜか目が覚めてしまってホットミルクを飲んで、落ち着いてからまた寝ようと思っていたんですよ」

 公は持っていたホットミルクを3人に見せた。すると、近づいてきたハルが腕に抱きついてきた。

「急に居なくならないでクダサイ。余計に怖くなってしまったじゃないデスカ」
「すいません。少し飲みます?」

 公がホットミルクを勧めると、ハルは公が持っているコップを取ると、一口飲んで秋のもとへ。
 ハルからコップを受け取った秋も一口ホットミルクを飲んで夏へ。夏もホットミルクを飲むと、ハルは夏からコップを受け取って公のもとへ帰ってきてコップを差し出した。
 公としては新しいホットミルクを作る気だったのだが、飲まれたものはしょうがないと思い、残っているホットミルクを飲みきると、キッチンに行ってコップを洗い、3人のもとにやって来た。

「それじゃあ、もう一眠りしますか」
「えぇ」

 というわけで、寝室に戻ってきた4人はベッドに寝ころんだ。すると、ハルが公の腕に抱きついた。

「ハル先輩」
「勝手に居なくなられたらイヤデスカラ」

 そう言われると、離れてと言いづらい公は苦笑しながら目を閉じた。

【おやすみ、幽】
【おやすみなさい】

 幽と挨拶をかわした公はすぐに眠りについた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...