私のための小説

桜月猫

文字の大きさ
75 / 125

74話

しおりを挟む
「……………う。お……て………う。起きて、公」

 声に反応して目が覚めた公だが、体が動かないので顔だけを動かして状況を確認すると、両腕にハルと秋がくっついてきて、体の上には夏が乗っていた。

"なるほど。体が動かないわけだ"

 納得しつつ、ふと思う。

"3人はまだ寝てる。なら、誰が俺を起こした?"

【公さん。おはようございます】
【おはよう、幽】
【すいません。私も必死に起こしてみたのですけど、起こしきれませんでした】

 幽がなにに対して謝っているのかわからない公が不思議に思っていると、

「ようやく起きたか、公」

 その声がした方向に顔を向けると、腕を組んだ冬を先頭に、楓や絆や雪や万結といった生徒会の女性陣がいた。

「えっと………」

 公は状況を理解し、幽の謝罪の意味も理解した。

「今何時ですか?」
「もうすぐお昼よ」

 楓の返事でかなり寝すぎたのだと理解し、そのせいでこういう状況になったのかと思った公。

「朝になって豪雨と雷が止んでいたのになかなか4人が山から下りてこないから見に来たらこういう状況だったのだけど、ちゃんと説明してくれるのよね?」

 威圧感たっぷりの冬の言葉にもちろんとばかりに頷く公。

「ところで、壱先輩達はどうしたんですか?」
「秋達が水着姿だったからリビングで待ってもらっているわ」

 絆の言葉に公が納得していると、冬達が3人を起こし始めた。3人の中で1番に起きたのは夏だ。

「ふぁ~。おはよう」
「おはようございます、夏先輩」

 下から聞こえてきた公の声に夏が視線を下げると公と目が合った。
 それから数秒。
 ようやく思考が動き始めた夏は状況を理解すると、顔を赤くして慌ててズザザ!と後ずさるのだが、当然後ずさればベッドから落ちるわけで、

「キャッ!」

 落ちた夏を冬が受け止めた。

「大丈夫?」

 冬の問いに夏は振り返り、そしてみんながいることを確認すると、さらに顔を赤くしてうずくまってしまった。
 次に起きたのは秋だ。

「ん~」

 伸びをした秋は周りを見回し、冬達がいることを理解したうえで公にに抱きついた。

「公くんおはよう」

 この行動に公は苦笑し、ため息を吐いた絆は秋の頭を叩いた。

「いたっ。絆。なにするのよ」
「いいからこっち来なさい」

 そのまま秋は絆に引っ張られて部屋を出ていった。
 最後に起きたのはハル。
 しかし、まだ寝ぼけているため、公の体に抱きつき始めた。

「ハル先輩。起きてください」

 公が揺するとようやく完璧に目覚めたハル。

「グッドモーニング」
「おはようございます」

 挨拶してきたのでとりあえず挨拶を返した公。

「とりあえず、離れてくれませんか?」
「おっ、ソーリ」

 公から離れたハルは、ようやく冬達がいることに気づいて驚いていた。

「Ohー!冬達がどうしてここにいるのですか!?」

 驚いているハルを見ながら公が苦笑していると、冬が公の肩を叩いた。

「向こうの部屋で話をしましょう」

 その言葉に頷いた公は冬のあとについて部屋を出て、隣の部屋に入った。楓と雪もついてきた。

「それで、どういう理由であんな状況になったのかしら?」

 当然の疑問に対して公は状況の説明を始めた。
 豪雨や雷が作者の仕業だったこと。濡れたので水着に着替えたこと。そして、寝るためのベッドが作者のせいで1つしかなく、秋先輩達の頼まれて一緒に寝ることになったこと。
 公の説明を聞き終えた冬達は作者に対して呆れていた。

「よく考えれば、この空間も作者が作り出したものだから、天候を自由に操ることができるのよね」

 別にこの空間だけじゃなくて、小説の中なら俺はなんでもできるぞ。なんたって作者で神なんだからな!

「こんな迷惑な神ならお断りよ」
「ロマと交代してください」

 しないよ。したら俺が楽しめないだろ。

「私達にはあんたを楽しませる気はないのよ」

 冬の言葉に3人も頷いていた。

 まぁ、君達に楽しませる気がなくても、俺が勝手に楽しくなるようにするがな。

「やっぱり最悪ね」
「駄作者ですね」
「迷惑以外のなにものでもないな」
「そもそも、昨日のメモの時点でおかしいとは思っていたのよ。でも、寝ていて直接執筆していないから大丈夫と思ってノコノコとこのロッジに来てしまったのが間違いだったのよ」

 冬が後悔しているがすでに後の祭りである。

 なんせ、俺の術中にはまりきったあとなんだからな。くっくっく。

「ムカつくわね」

 拳を握りしめる冬だが、あいにくその拳を向ける相手がいないのでため息を吐いて拳を下げた。

「それで、服は乾かしたの?」
「それが、このロッジには洗濯機や乾燥機だけじゃなく、ドライヤーや干すためのハンガーすらなかったので乾いてないと思います」

 冬は額に手を当てた。

「もしかして、これも」

 そう!俺のせい!

「やっぱり」

 みんなして呆れたりため息を吐いたりしていた。

「とことんバカなことしかしねーな」

 バカとはなんだ。ちゃんと意味があるんだからな。

「絶対ねーだろ」

 あるさ。服が乾かないことで夏達が水着姿のままいないといけなくなるから読者へのサービスカットにもなるし、夜寝る時も水着のままで寝たほうが間違いが起きる確率も高くなるし。

「やっぱり意味がねーじゃねーか」

 そうだね。よくよく考えれば、家で薫から散々エロ攻撃されてもピクリとも反応しない公に間違いが起きることを期待するのが間違ってたんだよな~。でも、予想外のプチ修羅場に発展したのは面白かったよ。

「意図していないところで作者を喜ばせてしまうなんて、最悪ね」

 いやはや。相変わらずヒドい言われようだ。あっ、そうそう。もう面白い場面も見れたし、サービスカットもたくさんもらえたから服は乾かしといたよ。

 公は大きくため息を吐いた。

 なに?乾かさなかったほうがよかった?もっと夏達の水着姿を見てたかった?

「いや、服を乾かしてくれたことにはしたくないけど感謝するよ。でも、乾かした理由に対しては呆れてため息しか出ねーんだよ」

 再度公がため息を吐いていると、服を持ったハルが入ってきた。

「公!服が乾いていたので持ってきマシタヨ!」
「ありがとうござ………」
「どうかしマシタ?」

 公はすぐにハルのもとに行くと、服を受け取った。

「持ってきてくれたのは嬉しいのですけど、なぜ下着を1番上に見せつけるように持ってきたのですか?」
「それはもちろん、下着を1番最初に履くからデス!」

 納得できなくはないが、公はため息を吐いた。

「俺が恥ずかしいので止めてください」
「Oh~、Sorry。そうデスヨネ。恥ずかしいデスヨネ。それなのに私っタラ。お詫びに私の下着を見せマス」

 直後、ハルはシャツを捲りあげてピンクのブラジャーを公に見せた。

「ぶっ!」
「こらっ!」

 予想外のことに吹き出す公と、慌ててシャツを下ろさせる冬。

「お詫びにならなかったデスカ?」

 公の反応に首を傾げるハル。

「いえ。お詫びにはなったので大丈夫です」

 そう言わないと、次になにをしでかすかわからないので慌てて公は言った。

「そうですか!よかったです!」

 ハルの笑顔に公はホッとした。

「着替えるので出ていってもらえますか?」
「わかったわ。終わったらリビングに来てもらえる?」
「はい」

 冬達が出ていったのですぐに着替えを終えてリビングに行くと、夏や秋も服に着替えて集まっていた。
 そして、冬から朝の状況の説明があり、みんなが納得し、公の誤解は解けた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...