私のための小説

桜月猫

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91話

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<ロマ。決着はついたかい?>

 マロがやって来ました。

≪えぇ。この通り≫

 私の足元にはマスターがうつ伏せで倒れています。

<死んでいるのかい?>

 マロの問いに私はため息を吐きました。

≪まさか。死んでいたら私達がこうして話すことは出来ないのですから≫
<それもそうだね>

 マロは苦笑しました。

≪本当にしぶといマスターです≫

 イライラしたのでマスターの背中を2回刺すと、マスターがビクッ!ビクッ!と震えました。

<ロマ。その辺にしときな>
≪まだ殺りたりないです≫
<その気持ちはわからなくもないけど、物語の続きを考えてもらわないと話が進まないからね>

 マロの言う通り、マスターには物語の続きを考えてもらわないといけないので、私は最後にもう1度だけマスターに真剣を突き立てた。

<少しは気がすんだかい?>
≪えぇ≫

 私が頷くと、マロはホッとしながら微笑んだ。

<じゃあ、マスターを起こすのを任せていいかな?>
≪いいですけど、マスターが起きて続きを考えている間、物語のほうはどうします?≫
<その間は俺が公達と雑談なんかをして時間をかせぐさ>
<わかったわ>

 時間をかせぐためにマロが本編のほうへ行ったのを見送ってから、私は足元に倒れているマスターを見下ろしてため息を吐きました。


          ☆


 公は桜達の卓球の試合の応援に来たのだけど、なぜか観客席ではなくコーチングボックスに座って瑠璃の試合を見ていた。

「なんでこんなことになっているんだ?」
「別にいいんじゃないか。ある意味特等席といっていい場所なんだしな」
<おや?マスター。いつの間に>
「ん?」

 マロの疑問に俺は首を傾げた。

<だって、さっきまでロマに殺られていたはずじゃ>
「あれはダミーだよ」
<ダミーですか?>
「あぁ。殺られる直前に入れ替わったんだよ」

 俺がしてやったりとニヤニヤしていると、マロはため息を吐いた。

<あとでロマが怒りますよ>
「いいんだよ。あいつマジで俺を斬り殺しにきやがったからな。それに、怒ってきたら逃げるし」
<はぁ>

 マロがため息を吐いていると、1セット目をとった瑠璃がこちらにやって来た。

「お疲れ様です」

 やって来た瑠璃へ公はタオルを差し出した。

「ありがとう」

 笑顔でタオルを受け取った瑠璃は顔を拭いた。

「瑠璃先輩」
「なに?」
「やっぱり俺がここに居るのっておかしくないですか?」

 みんな真剣に試合をしている中、部外者の自分がここにいることの場違い感に居心地の悪さを感じている公。

<そういえばマスター>
「なに?」
<桜の応援に来た公がどうしてコーチングボックスに入ることになったのか。そこまでの経緯を俺や読者に教えてもらえるかい?>

 マロの問いかけでそこまでの経緯を書いていないことに気づいた俺は頭を掻いた。

「そうだな。なら、分かりやすいように時間を朝まで巻き戻すか」
<いや。そこまです>


          ◇


 朝9時。試合会場の市民体育館にやって来た公。
 いつもなら楓や暁も一緒に応援にくるのだけど、今回は予定が合わなかったので公1人だけだ。

「桜達はどこにいるのかな?」

 公は左右を見た。
 各校の選手や応援の人達が多く、桜達の姿は見当たらない。

「とりあえず、観客席のほうにいってみたらどうかしら?荷物を置くために席どりしてるでしょうし」
「おわっ!作者!」

 私の急な登場に公はかなり驚いていた。

「ふふっ。そんなに驚かなくてもいいんじゃない?」
「いや!急に横に出てこられて驚くなっていうほうが無理だろ!」
「ふふっ。それもそうね」

 私が微笑んでいると、公は深呼吸をして息を整えた。

「ってか、お前ってロマと決着をつけにいってたはずだよな?そっちはどうなったんだ?」
「それならダミーを置いて逃げてきたわ」
「は?」

 私の答えを聞いた公はポカンとしていた。

「だってロマったら本気で斬り殺しに来てるんだもの。あのままロマとやりあっていたら私は本当に殺されるわ!だから、ダミーを置いて逃げてきたのよ」
「俺としては、そのまま殺されてくれたほうが嬉しいんだけどな」
「なに言ってるのよ。それじゃあこの小説も終わっちゃうじゃない」
「それでもいいから死んでくれ」
「イヤよ」

 私が両手でXを作ると、公はため息を吐きながら観客席に向かった。
 観客席も当然選手や応援の人達でいっぱいだったので、公はとりあえず1番高い場所にあがって桜達を探した。

「そっちにはいた?」
「いや。見当たらねーな」

 困った公は頭を掻き出した。

「どうするの?」
「どっかでウォーミングアップかストレッチしてるかもしれないし、探すしかねーだろうな」

 公は観客席を出て入り口に向かった。

「ってか、お前だったらすぐに桜達の居場所分かるだろ」
「あれ?普段はあんなに文句言ってきたり死んでほしいと思っているくせに、こういう時だけなんとかしろと頼ってくるんだ~」

 目を細めてジーっと公を見つめると、公は顔を反らした。

「まぁ、このまま出会えないでいると話も進まないから仕方なく、だよ」

 ため息を吐いた私は手を叩いた。

「公」

 声をかけられたほうへ振り返ると、桜がいた。

「って、なんで作者までいるのよ」
「別にいいでしょ?」
「よくないわね」
「なんで「それより、会場内を探したのに見当たらなかったけど、どこにいたんだ?」

 桜に文句を言っている私の言葉をさえぎって、公が割り込んできたので公を睨み付けるが、公は全く気にしていない。

「あぁ。隣の公園でウォーミングアップやストレッチをしてたのよ。だから」

 桜が振り返った先には瑠璃達がいた。

「あ~、公くん。おはよう」

 公に気づいた瑠璃は手を振りながらやって来た。

「おはようございます、瑠璃先輩」
「桜ちゃんの応援?」

 ニヤニヤしながら問いかける瑠璃。

「皆さんの応援ですよ」

 公は苦笑しながら答えた。

「ふ~ん」

 それでも瑠璃はニヤニヤしながら公を見ていた。

「そういえば、瑠璃先輩」

 話を変えるために桜が瑠璃に話しかけた。

「なに?」
「公がコーチングボックスに入っても問題ないですよね?」
「うん。大丈夫だと思うよ」
「えっ?どういうこと?」

 唐突に出てきた話についていけていない公は首を傾げた。

「そのまんまの意味よ」
「いやいやいや。普通コーチングボックスって言ったらコーチとか試合の間にアドバイス出来る人とかが入る場所だろ?」
「本来はそうだけど、私の場合は試合の合間に話し相手になってもらえればそれだけでいいから頼めない?」

 話し相手になるだけなら確かに公でもできるので、少し悩みはしたものの公は頷いた。

「だったら私の時もお願い出来るかな~?」
『私も』

 話を聞いていた瑠璃や球や彩までお願いしてきたので、公は苦笑した。
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