コンサルティング会社を作ってみよう

小賀 いちご (いちご)

文字の大きさ
21 / 53

21

しおりを挟む
「そうですね。何事もやってみなければわかりません。これからの方向性を決めましょう」



「方向性?」



「そうです。今日はもうすぐお客様も来るでしょうから長く時間は取れないはずです。ですから方向性だけ決めて明日改善点を決めませんか?考える時間も必要でしょうし、頭の中も整理する時間も必要じゃありませんか?」



「確かにそうね」



話の主導権は本格的におばさんに移っている。これは前向きに捉えていいことだと思う。おばさんに受け入れてもらえれば家族の中で反対できる人はいないと思う。お兄さんは反対意見が言える人ではないはずだ。信頼関係ができたとは言えないだろうけど受け入れてはもらえたように思う。正直に助かったと思えた。





わたしは顔は真面目な表情を保ちつつ気持ちの上ではホッと安心していた。





「まずはどちらの方向で行きますか?さっきも話したように値段は下げずにサービスに手を入れるのか、それともこのまま値段だけを下げるのか。どちらかになると思います」



「でも、ウチは儲かってないんだよね?」





おばさんからの確認。そこは理解してもらえたようなので、否定する理由はとこにもなかった。



「はい。正直に申し上げて儲かっているとは言いづらいですね。お世辞でもギリギリとは言えません」



「そんなに儲かっていないんだね」



おばさんは肩を落として現実を見つめようとしている。私はそれを肯定して静かに頷くだけにしておいた。



「どうしたらいい?」



おばさんは結論を求めようとする。考えもせずに結果だけを求めようとするのは間違いだ。失敗したときに考え直すことができなくなってしまうから。考えることを放棄するのは間違いなく良い結果は出てこない。



わたしはその事も伝える。



「おばさん。気持ちはわかりますけど、考えもせず結論を出すのは良くないですよ。後からなにかあったとき考え直す事ができなくなりますから」



「そんなこといったって」



「大丈夫です。少しづつ決めましょう」



おばさんは救いを求めるように私を見る。



わたしは安心させるように、穏やかな笑顔を見せる努力をする。わたしが慌てては周りも落ち着かないと思うし。



「まずは、値段を下げるか、サービスを増やすか、そこから決めましょう?そこを決めれば何をしていくかは出てくると思います」



「そうね。確かに最初の話もそうだったしね」



「はい。さっきの話でお客様の希望もわかりましたし、どっちにしますか?」



私の投げかけに、おばさん達3人は顔を見合わせる。



もう一つの選択肢があったがわたしはワザとその選択肢を外していた。



ネガティブな選択肢をわたしから投げかける必要はないと感じたからだ。



三人の話し合いにさっきまで手間を増やすのは嫌だとゴネていた感じはどこにもない。やはり赤字経営と実感したのが大きかったようだ。



私が見つめる中で3人の話し合いが始まる。やはり方向性は違うらしい。



聞いているとお兄さんは手間は増やしたくないみたい。仕事が増えると言っていた!おばさんは、手間は増やしても良いけど、客足が戻るか分からないのが不安みたいだ。おじさんはとにかくやってみよう、といった感じだ。



三者三様、意見が纏まらないようだ。



この調子では決まらないので、私が間に入ったほうが良さそうだ。





「皆さん、落ち着いてください。少し話し合いましょうか?皆さんの意見を纏めた方が良い気がします」



「そうね、みんな意見がバラバラだしね」



「一番の話ですけど宿屋の経営は続けたいと思っているんですよね?」



「もちろんだ、俺が作った宿屋だ。辞めるつもりはない」



誰よりも先におじさんがキッパリと言っていた。わかってはいたがやめるという選択肢は考えていなかったみたい。それなら続ける方向で今後を考えれば良いだけだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...