コンサルティング会社を作ってみよう

小賀 いちご (いちご)

文字の大きさ
24 / 53

24

しおりを挟む
わたしの問いかけにリサは険しい表情を緩めることは無かった。不愉快さをそのままにわたしに食ってかかてくる。

「どういうことなのよ?お母さんたちから言われたのよ。宿屋の経営が良くないって。だから今度からやり方を変えるからわたしにももっと手伝うようにって」

「そうね、昨日の話ならそうなるかもしれない」

わたしは昨日の話を思い返す。宿泊料金は変えないで、手間、というかサービスを増やす選択をしたので当然人手が必要になってくる。経営そのものが良くないのに人を雇う選択はない。とすれば、家族に手伝うように言うのは自然の流れだ。何も不思議なことは無かった。

わたしが否定もせず頷いたことにリサは憤然とする。

「なんでそんな話になるのよ?おかしいじゃない?」

「おかしいことは無いよ?おじさん達から説明があったんでしょう?経営があまり良くないって、聞いたんでしょう?」

「そうだけど。お客さんはまだ来てくれてるのよ?それで経営が悪いっておかしいでしょう?」

おじさんたちはリサに数字の中身までは話していないようだ。悪いから、ではリサも納得できないのだろう。お客は少なくても来てくれているのだ。悪くなったといっても印象は違うはずだ。

どうしようか?お兄さんのことを聞くつもりだったが、リサ自身もどうにかしないよいけないようだ。

しかし、リサは感情的になっている。こんな時に理論的に説明しても火に油を注ぐだけだろう。だからと言って、何も話さないわけにはいかないし、時間もない。今は授業の前だ。早めに来たけど、始業が遅れるわけではないから、時間がないことに変わりはない。

目の前のリサはわたしを睨んでいる。この怒りは思いがけない事を言われて、他に怒る先がなくて私に怒っているみたいだ。簡単に言えば八つ当たりだ。

ここは一回頭を冷やしてもらおう。

時間を置けば少しは冷静になるし、わたしに感情をぶつけたので落ち着けると思う。7秒ルールは優秀だ。わたし社会人時代に習ったアンガーマネジメントを思い出しながら、授業の後にゆっくり説明することを提案する。

「何それ?説明できないってこと?」

「そんなわけないでしょう?授業が始まるから、終わってから説明するよ。中途半端に聞いても気になるでしょ?だから、時間を作ってゆっくり話すって事、どのみち、今日もリサの家に行く予定だし、その時に話しながら行こうよ」

「何よ?今日も来るの?」

「約束してるから。聞いてない?」

「聞いてないわ」

「そうなんだ。話す暇がなかったのかな?」

わたしが確認するように聞き返すとリサが少し顔を赤らめた。本当の事は言わないがもしかしたら話をすることなくそのまま学校に来たのかもしれない。その可能性に気が付いたが突っ込んで聞くことはやめておこう。不安定なリサに事実を確認するのはリスクがあるし、知らないという事実があるのだから、これ以上の事を知っても得することは何もない。

わたしはそれ以上この話に話をする事もなく教室に誘う。わたしにからかわれると思っていたのかリサは意外そうな顔をする。自分でも恥ずかしいと思っているみたいだ。なら、そこに横やりを入れる必要はどこにもないだろう。

「ほら、教室に戻ろう。気になることはちゃんと納得できるように話すよ。家の事を心配して話をしてきたのリサなんだから。知る権利はあると思うよ。」

わたしがすんなりと話すことに同意してきたからか、リサは少し落ち着いたようだ。

頷きながら一緒に教室に戻る。

「怒ってごめんね。パルは何も悪くないのに」

「いいよ。ビックリしたのと、嫌なことを同時に言われてどういう事?ってなったんでしょ?無理ないよ。気にしないで」

時間が空いてリサは落ち着いたみたいだ。自分を振り返って謝られればこれ以上は何も言うことは無い。私はリサの謝罪を受け入れる。後は帰りに納得できるように話しをするだけだ。

だけど、理解ができるだろうか。それにどこまで話をしていいものだろうか。そこが心配な部分だ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~

紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。 「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。 だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。 誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。 愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

処理中です...