26 / 53
26
しおりを挟む
リサはわたしの可愛い発言に面白くなさそうだ。身長はわたしの方が低いので殊更、面白くないのだろう。
「私より小さいのに可愛いって何よ?誕生日だって私の方が早いんだからね」
リサはわたしに憤慨していた。頬を膨らませ怒っているので、その姿はさらに可愛さをアップさせているが、その事実に気が付いていないようだ。わたしは笑いたかったが笑いだすと、本気で怒ることは容易に想像がつくので何とか堪えていた。帰り着くまでにお兄さんの事も聞き出すというミッションがあるので、怒らせるわけにはいかないのだ。
わたしはポーカーフェイスを装いつつ、ミッションを達成するための行動に移す。まずはさわりから。基本的な情報を確認しよう。
「ねえ、リサ。お兄さんは宿屋の仕事を継ぐの?」
「そうよ。そのためにお父さんたちの仕事を手伝ってるし、今も仕事してるでしょう?」
リサの話し方からすると、お兄さんが後を継ぐことは決定事項の様だ。お兄さんはそれを納得しているのかな?なんか仕事にもやる気を感じないし、宿屋の改革にも興味はなさそうだったし、表情も覇気がない感じがしたのは、わたしだけなのかな?リサは気にしてないのかな?
「リサ。お兄さんはいつもあんな感じなの?元気がない感じがするけど?」
「元気がない?そうかな?いつもあんな感じだよ」
「そうなの?昨日も話をしてても全然話に入ってこないし。意見を言うこともないし」
「兄さんはいつもそうだよ。大人しいの。お母さんたちの言うこともちゃんと聞くし。わたしとは違うかな。お母さんたちには自慢の息子だよ。いつも怒られてる私とは大違いなの」
リサはそう言うと俯いた。
この反応から見るとリサはお兄さんにコンプレックスを持っているようだ。多くは語らないが複雑な気持ちがあるようだ。予想外の反応にわたしはそれ以上の話を聞き出すことに躊躇してしまった。
リサは今度は顔を上げるとわたしに笑いかけてくる。
「兄さんの事は何も心配ないんじゃないかな。お母さんたちも兄さんの事は頼りにしているし」
「そうなんだ」
それ以上は何も言うことができず、どうするべきか考えているとリサの家に着いてしまった。話を広げることもできず、頷くことで話を終了させるしかなかった。
「ただいま」
「お邪魔します」
「待ってたよ」
「いらっしゃい」
リサとわたしが宿屋の玄関をくぐると、おじさんとおばさんの返事が聞こえてきた。わたしに対しては歓迎の言葉があるが、リサに対しては『おかえり』の一言もなかった。その対応はちょっとあんまりではないだろうか?横目でリサを盗み見る。リサは無表情だ。
これはいつもの事なのだろうか?
わたしがリサの反応に不安を覚えているが、おじさんたちは何も感じていないようだ。
「いいかい?リサちゃん」
「あ。はい。大丈夫です。よろしくお願いします」
わたしは挨拶をしながら、おばさんたちの方へ足を向けるが、視線はリサの方を向いていた。リサの無表情は変わらず能面のような感じだ。他所様の家な事だが、親子関係が心配になってきた。だが私の心配をよそに、おじさんたちはわたしに話しかけてくる。
「パルちゃん、あの後また話し合ってね」
「おじさん、取り敢えず座って話しませんか?おばさんやお兄さんの希望も聞いたほうがいいと思いますし。それに、リサにも手伝うように話をしたと聞きました。それならリサも一緒に話を聞いた方がよくありませんか?」
わたしの提案におじさんは複雑そうだ。すんなりと同意をもらえると思っていたわたしは、その反応に戸惑ってしまった。
「私より小さいのに可愛いって何よ?誕生日だって私の方が早いんだからね」
リサはわたしに憤慨していた。頬を膨らませ怒っているので、その姿はさらに可愛さをアップさせているが、その事実に気が付いていないようだ。わたしは笑いたかったが笑いだすと、本気で怒ることは容易に想像がつくので何とか堪えていた。帰り着くまでにお兄さんの事も聞き出すというミッションがあるので、怒らせるわけにはいかないのだ。
わたしはポーカーフェイスを装いつつ、ミッションを達成するための行動に移す。まずはさわりから。基本的な情報を確認しよう。
「ねえ、リサ。お兄さんは宿屋の仕事を継ぐの?」
「そうよ。そのためにお父さんたちの仕事を手伝ってるし、今も仕事してるでしょう?」
リサの話し方からすると、お兄さんが後を継ぐことは決定事項の様だ。お兄さんはそれを納得しているのかな?なんか仕事にもやる気を感じないし、宿屋の改革にも興味はなさそうだったし、表情も覇気がない感じがしたのは、わたしだけなのかな?リサは気にしてないのかな?
「リサ。お兄さんはいつもあんな感じなの?元気がない感じがするけど?」
「元気がない?そうかな?いつもあんな感じだよ」
「そうなの?昨日も話をしてても全然話に入ってこないし。意見を言うこともないし」
「兄さんはいつもそうだよ。大人しいの。お母さんたちの言うこともちゃんと聞くし。わたしとは違うかな。お母さんたちには自慢の息子だよ。いつも怒られてる私とは大違いなの」
リサはそう言うと俯いた。
この反応から見るとリサはお兄さんにコンプレックスを持っているようだ。多くは語らないが複雑な気持ちがあるようだ。予想外の反応にわたしはそれ以上の話を聞き出すことに躊躇してしまった。
リサは今度は顔を上げるとわたしに笑いかけてくる。
「兄さんの事は何も心配ないんじゃないかな。お母さんたちも兄さんの事は頼りにしているし」
「そうなんだ」
それ以上は何も言うことができず、どうするべきか考えているとリサの家に着いてしまった。話を広げることもできず、頷くことで話を終了させるしかなかった。
「ただいま」
「お邪魔します」
「待ってたよ」
「いらっしゃい」
リサとわたしが宿屋の玄関をくぐると、おじさんとおばさんの返事が聞こえてきた。わたしに対しては歓迎の言葉があるが、リサに対しては『おかえり』の一言もなかった。その対応はちょっとあんまりではないだろうか?横目でリサを盗み見る。リサは無表情だ。
これはいつもの事なのだろうか?
わたしがリサの反応に不安を覚えているが、おじさんたちは何も感じていないようだ。
「いいかい?リサちゃん」
「あ。はい。大丈夫です。よろしくお願いします」
わたしは挨拶をしながら、おばさんたちの方へ足を向けるが、視線はリサの方を向いていた。リサの無表情は変わらず能面のような感じだ。他所様の家な事だが、親子関係が心配になってきた。だが私の心配をよそに、おじさんたちはわたしに話しかけてくる。
「パルちゃん、あの後また話し合ってね」
「おじさん、取り敢えず座って話しませんか?おばさんやお兄さんの希望も聞いたほうがいいと思いますし。それに、リサにも手伝うように話をしたと聞きました。それならリサも一緒に話を聞いた方がよくありませんか?」
わたしの提案におじさんは複雑そうだ。すんなりと同意をもらえると思っていたわたしは、その反応に戸惑ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる