31 / 53
31
しおりを挟む
わたしはおじさんの案内で宿屋の中を確認させてもらっている。家族経営なだけあって、宿屋はそう大きくない。全体としては三階建て、一階が受付、水回り、リネン類を保管する場所、キッチン、中庭に出る通路。二階が客室、三階が家族の部屋だ。
作りとしては一般的だ。しかし小さいだけあって余分なスペースがない。これは難しい問題だ。一番簡単な方法とそてスペースを作ることを考えていたがそれだけの場所がなかった。全部を見て回り。その事を確認する。おじさんとしてはリネン室を使えば良いと思っていたようだ。だが、そこは完全にバックヤードだ。そこにお客様に使ってもらうのはどうだろうか?あまり見栄えがいいようには思えない。わたしは一階を歩きながら考える。衝立を使うのもいいと思うが女性では覗きの心配もあって使いにくいだろう。できれば個室を使いたい。だがお湯を運ぶ手間も省きたい。そこを両立するのは難しいのだろうか?
わたしはウンウンうなりながら考える。動線をなるべく短くしたいのだ。熱湯を運ぶ危険性を思えば二階という選択肢はなるべく外したい。それに宿屋を使うのは圧倒的に男性だ。リサもそうだがおばさんにだって危険性はあるのだ。なるべく部屋に持って行くという危険は減らしたい。そう思うとやはり一階が望ましい。わたしは堂々巡りの考えを何回も巡らせていた。そのわたしを見ていたおじさんは無理を言っていると思ったのか意見を取り下げてきた。
「パルちゃん。難しいのかい?ダメなら他の事を考えて方が良いかな?」
「いいえ。そうではありません。方法はあるはずです。おじさんたちが考えた方法をどうにかしたいと思っています」
「部屋にお湯を持っていけば簡単じゃないかな?」
確かにその考えは正しい。一番簡単だ。お湯と洗面器だけでよい。手間はかかるが問題は簡単に済む。しかし、私のわがままかもしれないが、リスクは下げたかった。おじさんの危機感のなさを心配しつつおばさんも危険性の対象であるはずだと追加しておく。
「おじさん。あまり心配していないみたいですけど、危ないのはリサだけではありませんよ。おばさんだって同様なはずです。あんなに綺麗なんですよ?サッパリしてください。ってお湯とタオルを持ってきてくれたら、男の人はクラクラしませんか?そんなつもりで持ってきてない、とわかっていても、変な気持ちになりません?長旅で疲れて宿屋に泊またらホッとして気が緩みません?みんなが皆そうなるとは言いませんけど、そんな人もいると思いますけど?男の人の目線としてどうですか?」
おじさんは言葉に詰まる。娘と同じ年の子供から男性側の危険性の認識について確認をされるのだ、さぞ気まずいものがあるだろう。気持ちとしては分からなくもいない。しかし、安全性には代えられないのだ。恥ずかしいぐらいは気持ちに蓋をしよう。わたしはポーカーフェイスを保ちつつ当然ように話しかけていく。ここでわたしまで恥ずかしがってしまっては話は進まない。仕事の話として続けていく。
「女性の方が力が弱いんです。避けられる危険は避けた方が良いと思います。それにそんな事があればおじさん達も宿屋も続けられませんし、仮に続けたとしても変な噂が立って、おかしな事を考える人がいっぱい来ると思いますよ。どちらにせよ良い事はありません。おじさんもそんな事嫌じゃありませんか?」
「当たり前だ。許さんぞ」
おじさんはわたしに向かって力を入れて断言していた。さっきは反応が薄かったのでどう思っているか分からなかったが、やはり危険性の認識が出来ていなかっただけで、理解が出来れば当然の反応が返ってきたので安心できる。
おじさんの理解ももらえたのでスペース確保にまい進しよう。
作りとしては一般的だ。しかし小さいだけあって余分なスペースがない。これは難しい問題だ。一番簡単な方法とそてスペースを作ることを考えていたがそれだけの場所がなかった。全部を見て回り。その事を確認する。おじさんとしてはリネン室を使えば良いと思っていたようだ。だが、そこは完全にバックヤードだ。そこにお客様に使ってもらうのはどうだろうか?あまり見栄えがいいようには思えない。わたしは一階を歩きながら考える。衝立を使うのもいいと思うが女性では覗きの心配もあって使いにくいだろう。できれば個室を使いたい。だがお湯を運ぶ手間も省きたい。そこを両立するのは難しいのだろうか?
わたしはウンウンうなりながら考える。動線をなるべく短くしたいのだ。熱湯を運ぶ危険性を思えば二階という選択肢はなるべく外したい。それに宿屋を使うのは圧倒的に男性だ。リサもそうだがおばさんにだって危険性はあるのだ。なるべく部屋に持って行くという危険は減らしたい。そう思うとやはり一階が望ましい。わたしは堂々巡りの考えを何回も巡らせていた。そのわたしを見ていたおじさんは無理を言っていると思ったのか意見を取り下げてきた。
「パルちゃん。難しいのかい?ダメなら他の事を考えて方が良いかな?」
「いいえ。そうではありません。方法はあるはずです。おじさんたちが考えた方法をどうにかしたいと思っています」
「部屋にお湯を持っていけば簡単じゃないかな?」
確かにその考えは正しい。一番簡単だ。お湯と洗面器だけでよい。手間はかかるが問題は簡単に済む。しかし、私のわがままかもしれないが、リスクは下げたかった。おじさんの危機感のなさを心配しつつおばさんも危険性の対象であるはずだと追加しておく。
「おじさん。あまり心配していないみたいですけど、危ないのはリサだけではありませんよ。おばさんだって同様なはずです。あんなに綺麗なんですよ?サッパリしてください。ってお湯とタオルを持ってきてくれたら、男の人はクラクラしませんか?そんなつもりで持ってきてない、とわかっていても、変な気持ちになりません?長旅で疲れて宿屋に泊またらホッとして気が緩みません?みんなが皆そうなるとは言いませんけど、そんな人もいると思いますけど?男の人の目線としてどうですか?」
おじさんは言葉に詰まる。娘と同じ年の子供から男性側の危険性の認識について確認をされるのだ、さぞ気まずいものがあるだろう。気持ちとしては分からなくもいない。しかし、安全性には代えられないのだ。恥ずかしいぐらいは気持ちに蓋をしよう。わたしはポーカーフェイスを保ちつつ当然ように話しかけていく。ここでわたしまで恥ずかしがってしまっては話は進まない。仕事の話として続けていく。
「女性の方が力が弱いんです。避けられる危険は避けた方が良いと思います。それにそんな事があればおじさん達も宿屋も続けられませんし、仮に続けたとしても変な噂が立って、おかしな事を考える人がいっぱい来ると思いますよ。どちらにせよ良い事はありません。おじさんもそんな事嫌じゃありませんか?」
「当たり前だ。許さんぞ」
おじさんはわたしに向かって力を入れて断言していた。さっきは反応が薄かったのでどう思っているか分からなかったが、やはり危険性の認識が出来ていなかっただけで、理解が出来れば当然の反応が返ってきたので安心できる。
おじさんの理解ももらえたのでスペース確保にまい進しよう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる